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婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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疑惑

ハロルド・エドモン・セルヴァ公爵は上機嫌だった。

王太子レオン・アシュレイ・ラグリファルの婚約者、エリザベート・ド・セルヴァの父であるハロルドは、あまり優秀だとは言えない。

それでも平時なら家柄だけで重用されていただろうが、現国王のガラハルト・エルネスト・ラグリファルは国土を広げ、国威を上げた。

その過程において、ハロルドは蚊帳の外だった。


ハロルドは、決して人柄は悪くない。

家族への愛情は、人並み以上と言って良いだろう。

だが、その愛情の表し方が間違っていた。


手柄を立てられないハロルドは、家族を富ませたいと願って投機に手を出し失敗をする。

そこで、ヴァルハルゼンの重臣と繋がりを持ち、情報を流すことで小銭を得ていた。

その頃のヴァルハルゼンはラグリファルと友好関係にあったので、黙認されている部分もあった。

友好国の重臣と誼を結んでおくのは、悪いことではない。


そのヴァルハルゼンからの依頼で、ハロルドは公爵家の印を捺した。

それだけのことで、五千万ディナールがもらえるという。

「家族を喜ばせることができる」その一心で、ハロルドは要求を受け入れた。

「王都に不穏な動きあり、5日間その場で指示を待つように」という文書に印を捺したのだ。


手付金として、その場で五十万ディナールを渡された。

そこで嬉しくなって、ハロルドは家族のために大盤振る舞いをしたのである。


「お父様」


エリザベートが父を自室に呼んで尋ねる。

その手には、大きなぬいぐるみが抱かれている。

これも父ハロルドが贈ってくれたものだ。


(いつまで子供だと思っているのかしら)と思いながらも決して嬉しくないわけではない。

宝石なども贈られたが、エリザベートはついぬいぐるみに手が伸びてしまう。

若くして政務を取り仕切る苦労が、癒しを求めるのだろうか。


「このお金はどうしたのです?」


ぬいぐるみを抱きつつも、エリザベートは少し厳しい口調で父を問い詰める。

ハロルドは曖昧に答える。


「いや、以前からの投資がうまくいったんだよ」


エリザベートは、父がヴァルハルゼンに情報を流して小銭を得ていたことを知っている。

ヴァルハルゼンは友好国だったし、さらにその情報も大したものではない(ハロルドは国家の中枢に関与していない)ので、今まで問題にしていなかった。


だが、ヴァルハルゼンは国境を侵してきた。

友好国だと思って油断していたが、今では完全に敵対国となったのだ。

もしそのヴァルハルゼンといまだに繋がっていたら……。


「まさか父上、ヴァルハルゼン絡みのお金ではないでしょうね」


エリザベートは、真剣な目で父を問い詰める。

ハロルドは、少したじろぎながらもそれを否定する。


「そ、そんなはずはないだろう。我が国に攻め込んできたヴァルハルゼンは敵対国だ。もう関係は切っているよ」


(あの一回だけだ。もう何があってもヴァルハルゼンなどと繋がるまい)

ハロルドはそう思っていた。


「本当に?」


「ああ、本当だ。頼りない父ですまんな」


「……そんなことないよ、パパ」


王太子の婚約者として、公爵家の令嬢として政治に影響力を持っているエリザベート。

その優秀さは、経験豊富な大臣さえ舌を巻くこともあった。

それでも、中身はお父さんが大好きな23歳の女性だった。

優秀だからこそ、父親にしか甘えられないエリザベートだった。


***


国境から退却したグラウベルトは、失敗を認めざるを得なかった。

準備は万端だったはずだ、などとぼやいても何の意味もない。

それよりも、今は敵の侵入を防がなくてはいけない。


当然ヴァルハルゼン側にも、ラグリファルの侵攻に備えた城が存在している。

そこは、簡単に落とされることはないだろう。

しかし、本来なら圧倒的な兵力でエルバーン伯爵の砦も落とせたはずだったし、国境の城も守れるはずだった。

この城も「落とされるはずはない」と思っているうちに落とされかねないのだ。


そこで運を天に任せるグラウベルトではない。

敵が攻め込んでこないよう、できれば敵が弱体化するよう考える。

目の前の敵に出来ることは少ない。

それなら、本国を乱せば良いのだ。


ラグリファルに内乱を起こせば、ヴァルハルゼンに侵攻する余裕などなくなる。


「敵の愚か者というのはつくづくこちらにとってありがたい存在じゃな」


***


エリザベート・ド・セルヴァ名義の命令書によって援軍が足止めされた、という報が王都の貴族の間に広まった。

命令書に曰く「王都に不穏な動きあり、5日間その場で指示を待つように」

王都の不穏な動きとは何なのか、一刻を争う援軍をなぜ足止めしたのか。

王都ではエリザベートに、そしてセルヴァ家に対する疑惑が膨れ上がっていった。


お読みいただきありがとうございます!

エリザベートの父が公爵家の印を独断で捺したのは69話でのことでした。

当初は80話くらいで完結予定だったんですが、今回で79話…次で終わったらびっくりですね。

100話くらいで完結…するかもしれません。

プロットが大まか過ぎて、つい付け足したくなるのです。

そもそも当初のプロットなんて破棄してますし。

行き当たりばったりの話ですが、続けてお読みいただけると嬉しいです。

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