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婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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城門の攻防

リディアがルナに乗っているのを見ている一団がいた。

ミルファーレ村から兵として狩り出された男たちだ。


「あれは、ルナじゃねえか?」

「それに乗っているのは、リディアちゃんじゃないか!?」

「あの子もこの戦場に来ているのか……」


リディアは、曲がりなりにも伯爵令嬢である。

本来ならこんな言葉遣いは不敬だろう。

だが、そういった身分の差を感じさせないほどにリディアは村に溶け込んでいた。


最初は、村の者も貴族に対して反感を抱いていた。

けれど、リディアの地位にこだわらず汗を流して働く姿が彼らの心を解かしたのだ。


「俺たちはリディアちゃんと戦わないといけないのか……」

「馬鹿な、そんなことできるわけねえ」

「それにあそこには騎士団長のゼノ様もいるはずだ」


その時、ガルドという男が言った。


「へっ、そのゼノ様が俺たちを見捨てて逃げたから略奪され乱暴され、こうして兵士として連れてこられたんだろうが」


その言葉に男たちは一瞬静まり返ったが、すぐに村人のリーダー格であるローデンが言い返す。


「でもこうやって取り返しに来てくれたじゃねえか。お前だってゼノ様にゃ世話になっただろう?」


しかし、ガルドは


「別に俺たちのために帰ってきたわけじゃねえさ。奴らがしっかり国境を守ってればこんな目にゃ遭わなかったんだ」


と引かない。


「それならおめえは勝手にすりゃあいいさ」


そうして気まずい空気が流れる中、戦の幕が開いた。


***


「騎士団は我に続け!」


というゼノの号令で、一斉に騎士たちが城に向かって走り出す。

だが、そこには勢いがなかった。

ミルファーレ村の男たちに犠牲を出さないよう、とりあえずは城の備えを見ておこうと考えているのだ。


盾を構えて敵からの矢を防ぎつつ、城の様子を見て回る。


「急ごしらえとはいえなかなかの防備だな。兵力も多い。城壁には村の者は見えないようだが……」


城の周りを走りながら、ゼノが見て取る。


「村の者の顔はわかりますから、出会った時に寝返るよう声をかければいいのでは?」


「いや、それでは寝返りがすぐにバレて討たれるだろう。村人全員が先頭に立って向かって来てくれたら我々の後ろに逃がすこともできるが……」


どちらにしても村人の顔を知っているのは騎士団の者だけなのだ。

援軍の1万5千に戦わせたら、村の者が犠牲になる確率が高くなる。


「我々1千だけでこの城を落とす……難しいな」


そう言ってゼノは城を見上げた。


***


「攻撃が始まったみたいだな」


城を守るヴァルハルゼン軍には1万の兵がいるが、その全てが城壁の上にいられるわけではない。

その多くは待機していて、城壁を守っている兵に疲労の色が見えたら交代するのだ。


その時の攻撃はゼノが率いる騎士団1千のみなので、守備側も気持ちが緩んでいた。

1千でこの城が落とせるわけがない、そう思って安心していたのだ。


その中で、ミルファーレ村の男たちはゆっくりと門に向かって移動していた。


「門を守っているのはおよそ50人。俺たちと同じ程度だ」


村の男たちの中でも目の良い者がそう告げる。


「よし、不意を突くぞ」


小さい声でローデンがみんなに告げる。

何だかんだでガルドもついてきていた。

見回りをしているように悠然と歩き、門番に近づいていく。

退屈そうに門番があくびをした時、村人たちは襲い掛かった。


「不意を突けば武器を抜く間もない。1人が1人を殺せばすぐだ」


ローデンはそう思っていたが、現実はそんなに簡単なものではない。

素手でも相手は死に物狂いで抵抗してくる。


結局すぐに相手を倒すことができたのは14人。

残りは抵抗されて苦戦している。


14人のうち5人が門に向かい、残りは味方の援護に走る。

門の閂が重い。少しでも早く門を開けないと、ここで全滅してしまう。

素手で必死に抵抗している敵の一人が叫んだ。


「裏切りだ!」


その時、ようやく門が開いた。


城の近くで様子を探っていた騎士団の一人がそれに気づく。


「団長、城門が開きました!」


「何かの罠か?……いや、あれはミルファーレ村の!」


そこには見知った顔があった。ローデンの顔もある。


「急いで保護せよ!全軍に攻撃の合図を出せ!」


言うや否やゼノは城門に向かって駆け出した。

騎士団もそれに続く。


村人は門を出て騎士団に合流しようとした。

そうすればリディアや騎士団と戦わなくて済む。

しかし、一人の男が門のところで刀を構えている。


「ガルド!何をしている!早く来い!」


ローデンが叫ぶが、ガルドは振り向きもしない。


「せっかく門を開けたんだ、ここから攻め込んでもらえば城を取り返せる!」


そう叫んで異変に気付き近づきつつある敵を迎え撃とうとしている。


「この城には騎士団が似合うんだ!」


そう叫ぶガルドに、敵が近づく。

ガルドを一人にさせまいとローデンが、そして村人たちが戻っていく。

敵が村人に襲い掛かる。

騎士団が村人を救うため必死で駆ける。

門の内側で敵と村人が争い合う。

そこに騎士団がなだれ込む。


「間に合った!」


——そう思った瞬間、ガルドの身体に敵の剣が振り下ろされた。


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