終焉
リディアもゼノもガロも、戦線は膠着していた。
王都では、王太子レオンとその婚約者エリザベートが冷や汗を流していた。
ヴァルハルゼンを討つ、それは必要なことだろう。
だが、現実として国庫がかなり寂しくなっている。
これ以上遠征が続くようなら、他国から武具や兵糧やお金を借りなくてはいけない。
大陸一の大国ラグリファルの要請を断れる国はそうないだろうが、それでもこちらが弱みを握られることになる。
ただ、エリザベートはリディアのためにも支援を続けたかった。
***
ヴァルハルゼンの将は、なかなか戦上手だった。
グラウベルトの見る目があるのか、簡単に突破できる城や砦はあまりない。
だが、少しずつ降伏を申し出る者が増えてきた。
王都に近づくほど忠誠心が厚い者や王の親族などが多くなるはずだが、軍を進めるだけで降伏したいと言う者が多くなる。
それでも捕虜に蜂起された過去が、ゼノとリディアを蝕んでいる。
グラウベルトの好みそうな謀略でもあるのだ、降伏したふりをして背後から攻めてくるというのは。
その結果、降伏は許さず拠点を明け渡して後は好きにせよという対応が多くなった。
後ろの拠点に逃げ込んでもいいし、農民や流民になるのも自由だ。
ただ、自軍に組み込みたくはなかった。
そんなゼノとリディアを尻目に、ガロはそんなことはまったく気にしなかったので、兵力がどんどん増えていく。
だから、東を進むガロの軍が一番進撃速度が速かった。
それでもまだヴァルハルゼンの王都に到達するには時間がかかる、と思っていた時、敵が白旗を上げ始めた。
「グラウベルト王の首を差し出すから降伏したい」という言葉と共に。
ルナが力を失った今、連絡には少し時間がかかる。
数日かけて現状報告をし合った結果、どこも同じ状況のようだ。
王の従弟グラウディスの名前で、降伏を申し出ている。
向き合っている敵は、一切抵抗をしてこない。
それでも背後から襲われることを危惧したリディアとゼノは、グラウベルトの首を持ってゼノの陣に来るようにと返答した。
リディアは伯爵令嬢に過ぎず、ゼノは王の子であるからそれは当然の判断だった。
その五日後、グラウディスと名乗る者が王の首を持って降伏を願い出てきた。
保存のために塩漬けにされた首は、悔しそうに眉をひそめていた。
それでもまだ、油断はできなかった。
グラウディスと共に今まで戦っていた相手の陣を抜け、そして王都ヴァルハルゼン城に入る。
リディアとガロも到着し、ヴァルハルゼン国の全文武官が集結し、降伏の儀式が執り行われる。
グラウベルトならこれを利用する謀略くらいはしてのけるだろう。
しかし、あの首は、あの首から醸し出される野心はグラウベルトのものだった。
リディアもゼノも、ここでようやく安堵の息を吐いた。
王の従弟のグラウディスは、心からの降伏文を読み上げた。
そこには、平和を願う真の気持ちが込められていた。
ヴァルハルゼンは味方になった、とリディアは確信した。
***
こうして、戦いは終わった。
国庫が空になる寸前だったレオンとエリザベートは、手を繋いで喜び合った。
ヴァルハルゼンは、ラグリファル王国の版図になった。
誰がどの領地を収めるか、あまりにも急激に領土を増やしたので、まだそれを決めるのに時間がかかる。
そんな中、戦の終焉を告げるためにゼノが王都に戻ってきた。
それを聞いた時、エリザベートの瞳が輝いた。
「ご苦労様でしたゼノ兄さま!リディアは!?」
エリザベートは、自分の危機を救ってくれたリディアと、友人だと信じているリディアと、会えるのを楽しみにしていた。
「リディアは……姿を消しました」
ゼノは、沈痛な表情でそう告げた。
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あと2話です。終わる終わる詐欺ではありません。
最後までよろしくお願いします。




