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【完結】婚約破棄された伯爵令嬢ですが、追放先の辺境で聖獣に愛され過ぎて困っています  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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強く

け捕りにされたグスタフ子爵とレオポルト伯爵は、リディアの前に引き出された。

リディアは冷たい目でグスタフ子爵に語り掛ける。


「降伏に応じたふりをして裏切るとは、心根が卑怯な方なのですね」


「黙れ!おぬしが女でなければこんなことはしておらぬ!女などの前にひざまずけるか!」


「その女に負けて生け捕られるような方に、そんなことを言う資格がおありで?」


グスタフ子爵は、悔しそうに目を伏せた。


「それでは今回のことは子爵の方からの申し出で?」


リディアがレオポルト伯爵に問いかける。


「ああ、そうだ。半信半疑ではあったが、それしか勝てる方策がなかったのだ」


そしてさらに続ける。


「お主らのような侵略者が真っ当に生きられると思うな!」


「先に侵略をしてきたのはそちらでしょう。ただ、そちらはわざわざ侵略してきておきながら負けたというだけです」


レオポルト伯爵も言い返すことができず、歯を食いしばった。


「両名の首をはねなさい」


リディアは眉一つ動かさずにそう命じた。


「女のくせに生意気な!」

「こ、降伏させてくだされ」


一度降伏して裏切ったグスタフ子爵は捨て台詞を、レオポルト伯爵は命乞いの言葉を口にしながら引き立てられていった。


ダリオ男爵がリディアに問う。


「最初からグスタフ子爵の裏切りが読めていたのですか?」


「あの顔を見ればわかります。ただ騙された振りをしなくてはいけなかったので、男爵には黙っていました。申し訳ございません」


リディアは、軽く頭を下げた。


***


その次の日、リディアはダリオ男爵と50人ほどの兵を連れて周辺の村の鎮撫に向かった。

今回の侵攻は一時的なものではなく、ヴァルハルゼン併吞まで視野に入れている。

つまり、攻め取った土地はこれからラグリファルの領地となるのだ。

だから、民を落ち着かせることも将の役目だ。


村長の家を訪れ、安全の保障と税のことなどを話し合った。

ヴァルハルゼンよりも税率が安いため、みなも喜びましょうと村長は言った。


リディアが村長の家を出ると、6歳くらいの子供が叫んだ。


「父ちゃんを返せ!」


そう言って石を投げてくる。付き添いの兵が、その子供を取り押さえる。

領主であるレオポルト伯爵の城を守るため、この村からも兵士が徴発されたのだろう。


「先に攻めてきたのはそちらの方だ!恨むならグラウベルトを恨め!」


そう言い放ってリディアは引き上げる。


城に戻る途中、ダリオ男爵はリディアへの印象を翻した。

繊細な人だと思っていた。

だが子爵の企みを利用して敵をほぼ全滅させる手腕、ためらいもなく言いつけたグスタフ子爵とレオポルト伯爵の斬首、子供の言葉への返答、それらに強さと少しの恐怖を感じた。


***


4mの巨体を誇るルナは、城に入ることができない。

だから、城内の一角に大きな小屋のようなものが用意されている。

ルナは野ざらしでも構わないのだが、自分たちを守護してくれる聖獣だと信じている兵たちが率先してルナの小屋を建てるのだ。

ルナは少し申し訳なさそうにその作業を見守り、完成した後は有難くその小屋に体を入れた。


昼間はルナも資材運びを手伝ったり、兵たちと戯れたりして過ごしている。

だが、夜になるとみな自分の兵舎に戻るため小屋には誰もいない。


そこにリディアが現れた。

リディアの姿を見たルナは、嬉しそうに「フルルゥ」と小さく鳴き声を上げる。


リディアは、そんなルナを撫でながら言う。


「私は征服者なのだから、強くあらねば」


それを聞いたルナは、少し小首をかしげる。


リディアは、グスタフ子爵の態度を考える。

私が男だったら、素直に降伏していたのか。


子供の言葉を考える。

私が強面の男の将軍だったら、あんなことを言われただろうか。

怖くて何も言えなかったのではないか。


マリィの泣き叫ぶ声を思い出す。


女というだけでなぜ下に見られなければいけないのか。

女というだけでなぜ弄ばれなければいけないのか。


「だから、私は強くなければいけない」


リディアは、自分に言い聞かせるようにその言葉を口にする。


「父ちゃんを返せ!」


それでも、リディアの耳には子供の言葉がこびりついて離れない。

あの村から多くの兵が出されていたのだろう。

あの子だけではない、村人たちがみなリディアを憎しみのこもった眼で見ていた。

あの村人たちから家族を、恋人を、友人を、私は奪ったのだ。


本当は、子供を抱き締めて謝りたかった。

村人の前でひざまずきたかった。

こんなことはしたくないと叫びたかった。


子供の声が、殺した兵の顔が、リディアの胸に浮かんでくる。

だが、生かしておいた捕虜に蜂起されたことが忘れられない。


——仕方がなかったの……


そんな言葉が脳裏をよぎった時、リディアの目から涙が一粒こぼれた

捕虜の蜂起で殺された味方の兵が、エルバーン伯爵の森で見た手を繋いで死んでいた兵が、マリィのごめんなさいと泣き叫ぶ顔が、憎しみに満ちた目でこっちを見る村人の顔が……

リディアの感情はぐちゃぐちゃに乱れた。


一粒こぼれた涙が、次の涙を呼んだ。


「私…は……つよ……く……」


涙が止まらない。申し訳なさが止まらない。


「うう……あああ……うわああ……」


理性が崩れ、声にならない声が漏れた。

リディアは、声を殺して泣いた。

ルナにすがって、一晩中泣き続けた。


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