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2,虹色の一番星

「……」

「ニヒ……さ……回………みま…」

「?……」

「ああ……きっ……ん?起き……?」

「ァ……」

「お…い、起きたか。ハッキリしろ。おい。」

女児の目がカッと開く。その肩を揺する男は、蟻と戦っていた黄色い男だった。真っ直ぐな視線が女児の目の奥を捉える。

「極めて珍しい個体だ。滅多に無いぞ、第七種族の生き残りか?」

「第七……え?」

「おいお前。まず自分の名前を言えるか?」

あまりの急展開に、戸惑う女児。名前?そんなもの……あ。思い出したように女児は言われた質問に答えた。

「私はパパゲーn……うう゛!」

「おい、どうした?頭痛か?おいリリス、鎮痛剤あるか?」

「は、はい!」

リリスと呼ばれた小柄な女が一本の注射器をボックスから取り出す。

その直後。容赦なく、鋭利な針が女児の首筋に突き立てられた。

「ギャ!」

「大丈夫、お前は人間じゃないから死なない。」

首筋から血管を伝って謎の液体が全身にドクドクと運ばれる不快感。意味不明な状況も相まって、女児はまたポロポロと涙を流し始めた。

しかし薬の即効性は優れたものらしく、空になった注射器が地面に落ちてからは女児もコリコリと首を回し出しては、自分を納得させるように頷いた。

「自分の名前を言うと、頭が痛むか?」

「……パパg…いっ!……うん。」

「それは過去のトラウマからくるものだ。お前みたいな変わり者のハツラに多い。」

「あの……ママは?」

女児は聞く。

狭い一室に重い沈黙が流れる。コンクリート造りの密室。まるで囚人を監獄する牢屋のようだ。

「君のママは死んだ。というか、元々生きてすらいない」

「え?」

「童話のキャラクターだ。NPCというか……。」

何がなんだかよく分からない。その時、リリスと呼ばれた小柄な助手が私に語り掛けてきた。

「ここはネクロポリスと呼ばれる魔法の世界。住人は魔法を使って童話の世界に旅行をすることができるの。で、あなたはその童話の中のキャラクター。ここまでオーケー?」

かなり無理矢理だが、唯一ちゃんとした説明を多分受けて、首を縦に振るしかなかった。

それと同時に密室のドアが開き、外から黒縁メガネをした短髪の女性が顔だけ覗かせてきた。

「管理番号5575、面談及び引き取り希望者が到着しました。五分以内に面談室への誘導をお願いします。」

「りょ。」

黄色の男が返事をし、また私に向き直った。

「そういえばまだ自己紹介が済んでいなかったね。」

リリスとアイコンタクトを交わし、彼は自己紹介を始めた。

「僕はスターリー・パペッツ。スターリーでいいよ。君みたいな童話のキャラクターを管理する会社に勤めている。リリスは僕の後輩。」

「私は……」

「自分の名前を言ったら頭が痛くなるんだろう?無理に自己紹介しようとしなくていい。どうせ、我々が調べればすぐ分かる。」

「私、もうママに会えないのかな?」




面談五分前になり、私とリリスは社内の面談室に向かっていた。知らない人と二人っきりになるのは初めてだから、どこか緊張してしまうな。

それにしても、さっきのスターリーの言葉……

「それは、君次第さ。」

私、次第。やけに心が重くなった。そんな私の気持ちを察したのか、リリスは私に話しかけてきた。

「ねえ、あなたはしばらくママじゃない人のもとで生活することになるけど、どんな人のもとで生活したい?」

「え……」

ママ以外の人……。

「とにかく優しくて、毎朝マフィン作ってくれる人。」

「じゃあきっと、あなたの新生活は晴れやかなものになるわ。」

面談室の前に着き、彼女がドアを開けてくれた。

面談室と言うくらいだから、個室には机と、向き合う様に椅子が二組ずつ配置されていた。そして反対側には既に人が座っていた。

「あの人が、あなたを引き取りたいって言ってる人よ。」

耳元でリリスが呟く。


机の反対側に座る一人の女性。歳は私と同じくらいだろうか。血色の髪の毛は左右で団子を作り、そっと口元が笑顔に曲がる。

その瞳の奥は、しっかりと()を捉えていた。

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