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六話:網膜


「おばあちゃんおはよう!」

「おはようございますです!」


「あらキキちゃん、ココちゃん早いのね!おはようございます!」


「きゃー!卵焼きよ!!・・・イッセイとおじいちゃんはまだ寝てるのかしら?」

「いいえ、実は朝早くにリリちゃんのお父さんに呼び出されて”外”に行ってるのよ」

「外?」











「こんなちっこい分析機じゃ日が暮れるわい!!誰じゃこんなちっさいの作った不届きモノは?!」

「じいちゃん、ウチだよ、それ作ったの」

「我が家がこれが限界だと言っとるんだ!他のやつじゃったら手も足も出んわ!感謝せい!」

「だから頼んでいるんだろう」



 太陽が昇り始めて数時間。謎の機械の分析を最上から頼まれたイッセイとおじいちゃんだが、規模が大きく分析に時間が掛かる。

 その塊の大きさを例えるなら、大型トラックや重機を比較として出すほどである。



「・・・まだ掛かるか?」

「どこに目ん玉つけとるんじゃ?!掛かるに決まっとるだろうが!!舐めんなよ!あれだかんな!ワシらがポンコツなんじゃなくてこの塊がデカすぎるだけだからな」

 イッセイは最上とおじいちゃんの話しを聞きながらも考える。”外”に出て数時間。塵などを濾過し続けているフィルターも一回交換か洗浄しなければならない時間だ。それに、分析するにしても、分析する機械に対してあまりにも対象物が大きい。

 一日経ってもこれが何かわからない可能性もある。それに、危険物であった場合一日中置いておくわけにもいかない。多少居住区から離れた所であるが、イッセイの家もそれなりに近い。


「(こんなデカブツがもし爆発したとして、最悪、俺の家も吹き飛ぶかもしれない・・・)」


 この謎の物体をシートで囲って一般人からは見えないようにしていてくれてるのは助かるが、なんの安心材料にもならない。イッセイは意を決めた。



「最上さん。取引しましょう」













「え?魔法で分析が出来るかって?」

「そう。キキの魔法は、物体の性質とかを見抜けるかって事」

「素材とかは多分わからないわ流石に!だって知らない素材だったらわからないじゃない?伝えるにしたってあくまでも私の”知識”がある事が前提でしょ?でも、例えば、そうね・・・その機械に何が取り付けられてるかはわからないけど、記憶媒体があるならそれを読み取ったり、”機械が何を見てきたか”を見ることは出来るかもしれないわ!」


「よし、じゃぁ一緒に来てくれ」


「ちょいちょい!おじいちゃん!説明が足りないわ!!」


 朝食を食べ終わったキキは、おばあちゃんと食後のお茶をしていた。そんな時にイッセイとおじいちゃんが家に帰ってきたかと思ったらイッセイに突然『魔法で物質の分析が出来るか?』と言われたのである。



「慌てて焦って急いでも、良いことはないですよ。イッセイもおじいちゃんも、朝ごはんまだでしたでしょう?とりあえず召し上がってくださいな」









「気持ち悪い巨大機械(メカ)?」


「そう。俺たちも朝方に最上さん・・・リリさんのお父さんに呼ばれて行ったんだ。そうしたら」

「めっちゃどデカい昆虫みたいにも見える機械じゃったわい!朝から武者震いしたわ!!」

「ただの機械調べだったら良かったんだけど・・・多分、異世界からきた機械だと思って」

「なんでそう思ったの?」

キキとココが首を傾げた。



「もうわかってるだろうけど、この世界は大気汚染がすごい。その辺の酸素にもそれはそれは塵が混じってるからね。だから、地下通路を走る乗り物じゃなくて、外で乗る事を想定して作られた機械には『粉塵濾過フィルター』が絶対に必要なんだよ」

「空飛ぶ機械・・・まぁ飛行機とか、海を渡る船にも絶対ついとる!無きゃ無理じゃからな!」

「それがついてない機械がこの世界にあるはずがないんだよ。だから、異世界から来たものだって思って」



「なるほどね・・・。私が異世界異動したのが他の世界にもバレて、どっかの世界が刺客を送ってきた可能性があるってわけね」



「「・・・・・」」



「っえ?それ本当?」

「お前さんが原因なんかーい!!」


「かっ!可能性よっ!まだ可能性っ!断言はできないわ!!」

「でも、多いにあり得るですっ!キキ様たまに狙われる事あったですっ!」

「ちょっ!ココそれは言っちゃダメなヤツ・・・っ!」

「ぺぇえええええーーっ!!狐そりゃ本当かっ!」

「名前はココですっ!」




「キキが原因の可能性かぁ・・・まぁ、黙っておけば良いか・・・」





 イッセイは謎の巨大機械(メカ)の分析をキキに頼もうとしていた。自作の分析器では全くもって時間が足りないからだ。もしキキが魔法でそれがわかるならば、まずは危険性があるかどうかと先に見てもらい、それから対処を考えようとしていた。


「(と言っても、実際に対処・・・はさせてくれないだろうな。基本は機関が保管することになるだろうし・・・)」


 しかし、その巨大機械(メカ)がこの世界に来ることになった原因がもし本当に『キキ』の存在だとしたら、そもそもキキが機関にさらに目をつけられる可能性がある。昨日はリリの件があったため最上も一旦はこの家を離れた。しかし、今でも頭の片隅にはあるだろう。もし今回の巨大機械(メカ)とキキを見たタイミングが一日も空いてない。勘付かれる可能性がある。そもそも、本当にキキを追ってあの巨大機械(メカ)がこの世界に来たのなら安易に近づけるべきではないと考えた。



「でもなぁ・・・最上さんに取引として持ちかけちゃったし、なんなら許可も貰っちゃったからなぁ・・・」

「なんの話?」

 イッセイの独り言にキキが反応した。


巨大機械(メカ)の分析を外で行う代わりに、キキを網膜プログラムに登録する事を約束して貰ったんだ」

「あぁ、なんか出かけるなら『持って出て』って言われたヤツ?」

「そう。網膜登録すれば磁場妨害装置・・・アレがなくてもキキが自由に行動できるから。その方が良いでしょ?”核”を探すのにも楽だから。アレ、充電そんなに長い時間持たないから」

「私からしたら小型だからそんなに気にならないけどね?」

「道に迷って帰ってこれなくなって充電切れたらもう捕まっちゃうよ」

「登録してください」


「それ、ココもした方が良いデスか?」



 イッセイとキキの話しを聞いていたココが疑問に思って口を挟んだ。



「・・・そうじゃなぁー・・近所で飼っとる犬も登録しとるからな。・・・・・・・って!!そもそもこの世界にお前さんみたいな”狐”?!と呼ばれる生物はおらんから登録したとて自由に歩けんわー!!お前さんはずっとお留守番じゃーー!!」

「ココはキキ様と一緒にいるですーー!!一緒にいないと意味がないんですーーー!!」


「・・・どうするの?ココ」

「そうね、この家の中と緊急時以外は取り込んでおくわ」

「それが良いかもね」











「ホイッと?!」


ピピーーー・・・


「そんでもって?!」


パシュッーー!!


「からのぉー?!」


ゴウンーー・・ゴウンーー・・


「しまいのぉー?!」

「ねぇ、それ言わないと網膜パターンの登録できないの?」

「いや、出来る」


 おじいちゃんとキキがご飯を食べ終わった後のテーブルで機械を広げて網膜パターンの登録を行なっている。ちなみに機械は自作である。最上からの許可は得たので、機関のサーバーに無断アクセスしてデータの改竄を行なっている。キキが、生まれた時からこの世界の住人であるかのようにデータを加えているのだ。




「自由に歩かせないで、イッセイの機械を持たせてれば十分だったんじゃないの?突然逃げたらどうするのよ?」



 作業中に今日もイッセイの家にリリが来た。


「リリさん。おはようございます。・・・その時は、キキが俺たちの敵に回るようならば、網膜データを消すだけです。そしたらすぐに街灯のスキャンに引っかかって警報が鳴りますから」

「案外容赦ないのね」

「敵に回るなら・・・ですよ」

「やっぱり甘いわね」




「っしゃ!イッセイ!登録終わったぞい!娘連れて巨大機械(メカ)へ出発じゃーい!!」

「キキちゃん、これも孫のマスクだけど使ってちょうだい!」

「おばあちゃんありがとう!」

「じゃぁリリさん行ってきますので、ばあちゃんとお留守番お願いします」

「何よ?!私だけ置いてけぼりにするつも・・・」



「ココも行くですーーーーー!!!取り込んでくださいデスーーーーー!!」

「なんでよ?!おばあちゃんと一緒に料理してこの世界の”味”を覚えて頂戴ってお願いしているでしょう?!」

 キキとココがお留守番するしないの言い合いが始まった。リリは先ほどまで連れて行ってもらえない事に文句を言うき満々だったが、ココがお留守番を命じられると静かになった。



「・・・リリさんも・・・行きます?」

「・・・あの子がこの家でお留守番するなら私も残ってあげても良いわ!!」



 ココと一緒に居たいようで目がキラキラしている。

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