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五話:無狐



「ほら!!これじゃ!!いいか?!絶対にこの充電器のこのつまみを動かすんじゃないぞ?!マジックで印も付けてるが、この銃に対しての一番適切であろう電圧がここじゃからな?!このつまみを動かそうもんなら、電圧が不適切で充電中に爆発する危険だってあるんじゃからな?!いいか?!」

「わかった」

「子供じゃないんだから大丈夫よ」

「12歳は充分子供じゃわい!!!」





「じゃぁ!イッセイ!おばあちゃん!ありがとう!また明日くるわ!」

「はい!明日はお菓子作りましょうね」

「じゃぁリリさん、お気をつけて」






 リリが帰ると嵐が去ったように静かになった。


「ワシはあのぽやぽやカーチャンか妹が充電器のつまみをいじってしまうに次元移動装置の所有権をかけても良いぞ」

「まぁ、あれだけ言ったんだ。最上さんが自室で充電するでしょう。仮にも機関の指揮官だよ?危機管理能力は国一番だと思うけどなぁ」

「いや、あの男、ちょっと抜けとるぞ。堅物天然キャラを狙っとる・・・!」

「お茶が入りましたよ〜、キキちゃん、ココちゃんどうぞ」

「ワシも頂く!!」



 おばあちゃんの声掛けに呼ばれていないおじいちゃんが一番に反応して玄関から居間へと戻った。

「じゃぁ、お茶でもしながら詳しい話しをしてもらおうかな」

「もちろんよ!まぁ、私が知ってる範囲内だけの話にはなるけどね」

「ココもいるデス!」











「色々言われているわ。もちろん中にはガセネタもあるだろうけど、星や世界は常に監視されてるだとか、数人の物凄い力を持っている人たちに守られてるだとか。とりあえず、この星にある核の存在を知っている世界は少なくなくて、結構狙ってる世界があるわけよ。それはそうよね、なんたって、【核】があれば星が生まれた時の一番良い状態でずっと環境を維持できるんだもの」


「で、触った人の世界に核が異動するって事か」

「しかも瞬間移動よ」

「書いて字の如く”早いもん勝ち”じゃな。でも、お前さんの世界に核が異動したとして、今度はお前さんの世界が狙われたりするんじゃないんけ?」

「・・・その辺は不明な事が多いわ。この無狐の世界に最初に核が置かれてからまだどの世界にも異動したことないから。無狐の世界にある内は、核は”無所属”状態。そこから私の世界なり別の世界に異動した時点で核がどうなるのかわからないわ。神者(しんじゃ)や学者ごとに意見が違うから。本当、言い伝えの夢物語よ」


「ある学者さんはこう言ったです!核が異動しても、その異動先でまた争奪戦が起きるとか!また他の学者さんは言ったです!最初に異動した世界・惑星に”根付く”と!しばらくしたらまた”無狐”の世界に核が戻るという人も居たデス!」


「その先は未知なのよ。ただ、異世界移動って並大抵の力とか技じゃまず無理だからね。この世界に大人数で攻め込むとか無理でしょ。異動してる間に体が耐えられなくて消滅しちゃうケースだってあるくらいだし。私は異世界移動の適性があるから問題ないけど」

「ワシの次元移動装置は肉体へは影響しない計算じゃ!!」

「それが本当ならかなりの発明よ、その存在が知れたら核の次に狙われるわ」

「なら隠す!!」


「じゃぁ、キキの魔力も相当なものだな」

「そうです!キキ様は凄いんです!」

「そのはずなんだけど、どうしてさっきイッセイと会った時は使えなかったのかしら?」

「異動してきてすぐだと波長だとか順応だとか必要なんじゃ?」

「そんな事なかったと思うんだけど・・・」


「とにかく!!その核とやらがこのワシらの世界にある以上、この環境汚染が続く訳じゃな?!」

「まぁそんなとこ!ほら、元々いい環境だけど、そこにいくら良いと言われる要素だって、沢山入れたってぶつかり合うだけなのよ」

「ステーキとトンカツとカレーとエビフライと餃子とチャーハンは一緒に食わん方が言って事じゃな!」

「じいちゃん、それ多分違うと思う」









「あら!ピッタリねぇ〜!可愛いわ!」

「ありがとう!本当に私が着ちゃっても良いの?」

「良いのよ!もう何年も帰ってきてない孫の洋服なんだけど、どうせ着ないから着てもらったほうが服も喜んでくれるわぁ」



 おばあちゃんがキキで着せ替え人形を楽しんでいる頃、イッセイとおじいちゃんは引き続き街頭の網膜スキャンへの妨害磁場装置の更なる仕上げに取りかかった。


「・・・じいちゃん。やっぱりスキャンから常時何か出てるよね?」

「あぁ?粗末な電波の事か?」

「うん。スキャンする時間は決められているのに、それ以外で何かがずっと出てるんだ」

「設計者がとんでもねぇボンクラだったっちゅーことだろうよっ!おじいちゃんがやったらそんな粗末な電波みたいなもんなんか絶対出させないっちゅーの!!どこのポンコツが作ったんじゃ全く!!」


「とりあえず、キキにはこれをつけて貰えばなんとか大丈夫だろう。あとはなんとか言い訳を考えて最上さんにキキの網膜パターンを登録を許可してもらうように説得するしかないな」

最上(アイツ)結局、小娘の入学手続きの件を優先して異世界人放って行きおったな。通常ならクビじゃクビ」

「まぁ、今回はいつもの異世界人と訳が違うから良かったんじゃない?俺たちも知らない事沢山聞けたし」



 二人でぶつぶつと話合いをする。いつもの光景だ。そんなに時間が経っている気はしてないが、気付くといつもおばあちゃんの声で時間を知ることになる。



「ご飯が出来ましたよー!」

「さっき着せ替え人形ごっこしとらんかったか?!」








「へぇ!イッセイってそういう子だったの!」

「そうなんですよ、この子の父親は学者で家にいませんし、母親もイッセイの姉の仕事にくっついて他のところで生活してます。小さい頃から私たちと一緒だからか、私たちと同じ生活リズムになっちゃってね。二十歳なんて言ったら、夜通し遊んで帰ってこないことの方が多いのよ?」

「それは、おじいちゃんとおばあちゃんが心配でちゃんと毎日帰ってきてるのよ!偉いわ!」

「違うわい、人間より機械が好きなんじゃこいつは!」


 夕飯を食べながらイッセイの昔話を祖父母がする。


「辞めてよ、子供の頃の話なんて恥ずかしい」

「まぁ本当に小さい時はそれなりにはしゃぐ子供だったが、十歳くらいだったかやー?今みたいに段々大人しくなってな!」

「でも、それくらいから意識が変わる子もいますよ。イッセイは他の人よりも落ち着くのが早かっただけですよ」

「まぁ、落ち着きもするわな、なんたって」


「あ!イッセイ!イッセイだけのその小さいお皿のは何?!赤いの!」

「え?」


 おじいちゃんが話している途中でキキが遮った。イッセイの右手の更に右側奥にある小皿の上にある食材を指して言った。梅干しを知らないらしい。


「あら!ごめんなさい!とりあえず置いちゃったからイッセイには見えなかったのね!」

「あぁ、ばあちゃん気にしないでよ」

「・・・そんなに端にある訳じゃないじゃない?」

「娘!ワシの話を遮るからじゃ!」

「何よ突然!びっくりするじゃない?!」



「これは、『梅干し』って言って、保存食だよ」

 イッセイが梅干しの説明を始める。


「酸っぱくて塩気が強いのよ!でもお米にとっても合うのよ!」

「私の世界で似たような味のものあるかしら・・・頂きます!・・・ふはっ!!美味しいっっ!!!」

「キキ様!ココも頂きたいですっ!」


「お前さん?!食いもん食うんかい?!」

「ココはなんでも食べれるです!」

「なんでも・・・・なんでも・・・!」

「じいちゃん、実験しようとしないで」







 シンーーーと静まった深夜。


 キキとココは夕食を頂いたあと、お風呂も貰い、さらにはイッセイの姉の部屋である現在は使われていない部屋を借して貰えた。異世界に来たら、野宿や何かに追われる覚悟であったキキからしたら至れり尽くせりである。



 夕飯時やそのあとでテレビを見ていたが、事件があるにはあるが基本的に平和な世界だとキキは感じた。


「(なんたって、この世界環境が影響しているのだろうが、戦争が無い。環境が劣悪ならば、どちらかというと戦争が起きるものだと思った。やっぱりこの世界は”違う”)」


 思っていたよりも安全そうな世界であることに安心して、キキとココはふかふかなベッドで眠りについた。














 午前5時過ぎ



「分析を頼む」


「バッキャローーー!!お日様より早く起こしやがって”分析を頼む”じゃないわい!なんじゃいこりゃー!!」

「だから分析を頼むと言っている」

「まずは説明せい!!」

「わからないから分析を」

「ぺぇえええええええーーー!!!」



 こんなやりとりを、マスクの内側で行っている。



 現在、太陽が顔を出し始めた頃、生活区域である地下やガラスに囲われた場所ではない”外”に、イッセイ、おじいちゃん、最上がいる。

 そう、”外”にいるため、マスクとゴーグルを着用しなければならない。空気が汚染されているからだ。



「分析って・・・これ、動かして工場まで運んで良いんですか?」

「いや、危険だからここで行って貰いたい。一般市民の目もある。これを人の目に触れさせずに工場に移動させるのはまず無理だろう」


「まぁ、おっしゃる気持ちはわかりますが・・・」



 そう言った三人の目の前にあったのは、今までこの世界で全く見たこともないデザイン・・・まるで昆虫を模したのようにも見える、この世界の技術で作ったものではなさそうな、黒い奇妙な兵器にも見える鉄の塊だった。



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