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四話:拳銃



「触るだけ?」



「そう。触るだけ。触った瞬間に、核と一緒に自分の生まれた異世界に戻るんだから。本当、触った瞬間にね・・・・・・・って言われてる!だって誰もまだ触ったことがないからこの世界にまだ核があるんだし!」


「・・・じゃぁ!ばあさんが核に触ったら・・・!!」

「そう、気をつけなくちゃダメよ!おばあちゃんが元の世界に戻りたいのなら別だけど、この世界で生きていきたいのなら、核に触ったら一瞬にして核と共に産まれた世界に戻っちゃうわ!!」

「あらまぁ!そんな事があるのねぇ!」

「おばあちゃん絶対その核に近づいちゃダメだからね!!!」

 リリがおばあちゃんをしっかりと掴んだ。



「なるほど。触れば良いなら確かによほどのご年配や子供じゃない限り、核に辿り着けるのなら誰でも良いって訳か・・・。中年男性や女子学生なんて体力がある年齢なら尚のこと良しって事だったのか・・・で、その核って言うのは何処にあるんだ?」



「知らない」



「「「え?」」」

「知らないわよ、だからこれから探すために拠点が欲しいのよ!ね!この工場を貸して?」


 顔の前で両手をパンっ!と合わせてお願いのポーズをキキが取った。


「なんじゃと?!そんな事」

「許すわけないでしょ、なんでそんな卑猥な服着た女を」

「・・・探すって、またスキャンの妨害・・・そろそろバレる・・・」


「良いですよ、ここは広いけど空調設備がイマイチだから、ウチにいらっしゃいな。お部屋も沢山余ってますよ!」

「おばあちゃんありがとうー!!!」

「キキ様!よかったですね!」











「どうじゃイッセイ。いけそうか?」

「・・・あとちょっと」


 イッセイとおじいちゃんは、網膜スキャンの機械に妨害磁場を与える簡易装置を作っていた。キキの為である。


「そうよ!あら!ココ、あなた随分器用ね?!その手でペンが持てるのね?!」

「持てるです〜!」



「お洋服は取り敢えず孫のを着て頂戴!背丈が似てるからきっとサイズは大丈夫よ!あ、でも好みのデザインかどうかはわからないけど、流石にその服装でお外を歩くのは目立ちすぎちゃうわ」

「助かります!」





「こんなもんかな・・・」

 イッセイが作り終えた。取り敢えず自宅までバレずに帰れれば良い。とにかく早く帰ってもっとキキの話を聞きたいと考えているイッセイ。キキの話を全て信用した訳ではない。もっと突っ込んだ話を聞いて判断しなければならない。

 今の段階では、核と言うものが本当にあるとして、キキの言った通りにこの世界から他の世界に核が移動して環境が良くなれば万々歳だか、本当に影響が全くないかどうかはわからない。そんな中途半端な状況と情報で機関にキキの存在がバレれば、話を聞かずにキキが消される可能性は大いにある。

 リリの父親である機関の人間の【最上(サイジョウ) 利幸(トシユキ)】に頼めばもしかしたら多少は融通を効かせてくれるかもしれないが、絶対の保障はない。ここは安パイで行くのが良いだろう。




「よし、お待たせ。キキ、これを腕に着けて?そうすれば、キキだけがスキャンに認識されないから。応急処置だけど、それなら近くを出かけるくらいはなんとかなるから」

「ありがとうー!助かった!」

「お前さんさっき、狐出す時に魔法で出したんじゃろ?なら魔法でなんとかならんのか?」

「イッセイの学校ではなんでか魔法が使えなかったの!場所が原因なのか、時間なのか、原因がわからないからこの機械に頼らせてもらうわ!いきなり魔法が使えなくなっちゃったらすぐ見つかっちゃうんでしょ?困るもの!」

「魔法が使えない状況になったらこの狐も消えるんか?」

「一回出したから消えない!」

「ココは残るです!キキ様がボクと契約解除をするか、異世界移動のために”予め取り込んで置く”以外は消えないです!」

「また取り込めるのか、お前さん便利じゃな」




 そんな話をしながらイッセイの自宅に帰ろうとした矢先、リリの通信端末が鳴った。

「パパだわ!!もしもし!リリです!・・・え?はい、イッセイとおばあちゃんと一緒にいるわ?・・・ん?あ!!そう!イッセイがおじいちゃんと工場に行くって言うから、だからおばあちゃんと一緒に・・・」



ガガガガガガーーーーー



工場(ここ)に来たと言うわけか・・・」

「パパ?!」



 工場の大きなシャッターを人力で開けて入ってきた男性が一名。リリの父親である最上(サイジョウ) 利幸(としゆき)だ。



「お前さん!電動シャッターを勝手にこじ開けるな?!壊れたらどうするんじゃ?!」

「そうしたらまたこちらで手配する」

「じゃぁ好きにせい。・・・ちゅーか!何しに来たんじゃーーーっ!!!」

「リリを迎えに来た。今日の午後は編入中学校へ最終手続きをしに行く日だ」

「あら?そうだったかしらー?」



 イッセイはハッとした。

(非常にマズイ、明らかにこの世界の日常では見ることもない服を着ている女性がここに一名いる・・・!!)



 後ろを振り向いてキキを見ると、精従のココと戯れている。アウトである。この世界で見たこともない生き物と戯れている見たことの無い服を着ている女性。


「キキッーー!!」

 イッセイはキキに近寄り最上との間に盾になるように入った。



「・・・!!なんだその女性はっ・・・明らかに・・・!!」

 最上がスーツの内側に手を伸ばした。

「・・・!!パパ!!そうよ!この女・・・!!」

「やはりそうか!リリ、怪我はないか?!」

 スーツから拳銃を取り出してイッセイとキキの方へ向ける。

「怪我?怪我はないけど・・・この女はねっ!」

「退くんだ、イッセイ君。異世界からの人間はーーー」

 狙いを定めて引き金に指を掛けた。



「イッセイに”色目を使う”悪い女なのっ!!!」

「どこでそんな破廉恥な言葉を覚えたんだっ・・・!!」



 キキに敵意を剥き出しだった最上は、リリの言葉を聞くや否や、目線をキキからリリに移して尋問を始めた。生まれた時に異世界に飛ばされて帰ってきた時には十一歳。そして、手元に戻ってきてまだ一年・・・波瀾万丈の我が子が心配すぎる故に、日々覚えた言葉に過敏である。



「だってパパ見て!?あの服!!」

「服・・・?・・・っ!!た、確かに・・・目も当てられたもんじゃ・・・ないな・・・」

「そうでしょ?!でしょ!私間違ってないわよね?!」

「あれを破廉恥だと捉えた感性は満点だ・・・しかし表現力が・・・」

「勉強は自宅でやっとくれ」







 リリがイッセイの自宅に鞄を置いて工場へ行った為、全員で自宅へと向かった。


 






「じゃあ、私は中学校の手続きに行ってくるけど、明日また来るわ!!おじいちゃん!イッセイに変な虫がつかないようにして頂戴!!」

 リリは持ってきた鞄を持って玄関で仁王立ちしながら言った。


「ワシに言うな」

「あと!私の銃の充電器頂戴!使わなくても電池減るの!」

「そりゃ放電されるからな。嫌じゃ。お前んちに充電器渡すとか危なすぎて断るわい」

「なんでよ!!」



「・・・銃って、拳銃って事?」

 玄関にリリのお見送りに全員できており、おじいちゃんの話しを聞いていた内容を聞いたキキがイッセイに問うた。

「あぁ、うん。ただ、電磁波だから銃弾が出るタイプじゃなくてね。去年一度派手に壊されたんだけど一応直したんだ。彼女が誘拐された世界から無断で持ち出したものでね。だからこの世界のコンセントとかと規格が違くて、うちが作ったんだけどまぁ正規品とは比べ物にならないから充電自体はできるけど危ないから充電器ごとは貸さないんだ」

「無断でって・・・あの子のいた世界がどこだかわからないけど、世界によっては拳銃に探知機とか魔法式組み込んでたりだとか色々あるわよ?問題ないの?」

「・・・魔法がない世界だから考えもしなかったな。でもここ一年何もなかったからなぁ。多分大丈夫だと思う。ここの世界で一年なら、向こうの世界では二年経過してるって事だし」

「時間の流れが違う事が安心材料になるとは思わないけど・・・」

「ココもキキ様と同意見ですぅ!」

「ね?」

 精従のココとキキが話す。恐らく、この世界とは常識から何もかも違う世界から来たのだとしたら、感覚が全く違う。こちらの安心材料もキキの世界では不安材料に感じることもあるだろうと考えながらも、目の前で収まる所がヒートアップしそうなやりとりを聞いてイッセイは仲裁に入ろうと決めた。



「良いじゃない!!パパだっているんだから大丈夫よ!」

「お前さんのパパは殆ど仕事で家におらんじゃろう!お前のところのぽやぽやしたカーチャンと5歳の子供とお前さんじゃ心配だって言っとるんじゃ!!」

「シュリは今年で6歳よ!!!」

「大して変わらんわい!!!」


「ほら、リリさんが中学校の手続きに遅れちゃうから・・・。最上さんに聞けば良いんじゃないですか?一家の責任者が許可したら良いじゃないか」

「ふんっ!!イッセイが言うなら最上が許可したら渡しても良い。じゃがそしたら絶対に絶対にずぅぇえったいに!!何があっても責任取らんからな!!!」

「ただの充電器だろう?問題ない」

「ワシはお前さんが機関の指揮官であることに疑問を持つ!!!」

「ほらほら、もう説明だけして充電器渡しなって」



 異世界との違いが不明瞭なのに憶測で作った充電器を一般家庭で使うんなんて気狂いじゃわー!とその後にもおじいちゃんはブツブツと文句を言いながら家の中に充電器を取りに行く。

「私もおじいちゃんの意見に賛成ね・・・」

「アナタには聞いてないわよ!!!」


 大人顔負けの度迫力でキキに言うリリ。

「ひゃー・・・怖いわねぇ・・・本当に私より10歳下なの?」

「・・・?!あなた22歳なの?!おばさんね!!じゃぁイッセイの彼女にはなれないわね!!」


 年齢がわかった途端にリリの機嫌が好転した。


「・・・なんかムカついたんだけど」

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