表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の嫁入り 三部〜波動ノ音〜  作者: 杉崎 朱


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/29

二十五話:暴走



 神風は掴まり立ちをしながら、柵に引っかかった二輪車の積荷箱を取り外そうとした。しかし、固定部分が固くて外れない。この際二輪車ごと落とすかなど考えはするものの、片足でしか立てない自分が柵に引っかかった二輪車を落とすなど到底出来ない。




「神風さん!無理しないでください!」



 何か考えている神風を見てイッセイは言った。既に片足が折れているんだ。無理をして悪化させてはいけない。しかし神風はおじいちゃんから武器を預かった。イッセイに必ず届ける義務があると責任を全うする術を考えた。




「キキ!!まだ意識はあるか?!」

 次いで魔法の暴走を始めた彼女の方を見る。恐らくギリギリ意識を保っているレベルだと見て取れる。これは時間の問題かもしれない。





 シュルンーーー・・・シュルンーーー・・・


 ウゥィイイイイーーーーーーーー!!!!!!




 モーター音が聞こえてきた。今まで数本のアームで走るように追いかけてきたデカブツがの形状が少し変わり、

ローラー・・・タイヤのような物で迫ってきた。

 そしてキキに一直線に向かってくる。キキは変わらずで、更にまとっている魔力は刻印石の方へ流れ続ける。

 


 このままではすぐにデカブツがキキの元まで到達する。この次工場にはデカブツに勝てるモノは無い。せめて神風の持ってきた武器を受け取れれば少しの間時間稼ぎくらいはできるがそれでも一瞬程度だ。工場を改めて見回して何か使えないかと焦るイッセイ。



 スプリンクラー、防火壁、超音波発生器・・・目に入った緊急時システム。



「コレだ!!!」



 バリンッ!!!!!



 キキの近くを離れて非常用ボタンを保護しているガラスを蹴破ってそのまま靴底で押した。



 ピィィイイイーーーーーーーーー!!!!!


 一度長めの音が流れた後、まるでスズドリという鳥が鳴いているかのようなサイレンが続く。


 ビャーーーーーー!!!!!


 ビャーーーーーー!!!!!


 ビャーーーーーー!!!!!


 そして瞬時に工場内をいくつか区切るかのように防火壁が降りた。


 ガシャンッ!!!!!


 天井のスプリンクラーから水が出始める



 サァアアアーーーーーー・・・・・



 しかし、それでもデカブツの威力は破壊的で、何枚か先の防火壁へとすぐに辿り着き、突進して壁を壊そうとしている音が聞こえる。



 「(これでほんの少しだけでも時間を稼げただろう・・・!)」

 イッセイはすぐにキキに駆け寄って彼女を比較的安全な場所へと向かわせようとした。


 しかしーーー



「キキ?!動かない・・?!」

 いくら腕を引っ張ってもキキはそこに縫い付けられたごとく動かない。



「この・・・魔法が・・・発動したら・・・動けないらしいのっ!

 発動した場所を拠点として、ずっと魔法の・・・道を作って!、・・・・魔力が。核の場所・・・探す、為送り、続けるッ・・・らしいから」


 力を振り絞って、なんとか意識を少し戻してキキが答えてくれた。 

 つまり、工場の奥ど真ん中という場所からキキを動かすことはもう出来ない。となると、デカブツを止めるか魔法を収束させる以外方法がないのだ。


「魔法を収束させる方法はないのかっ?!」

「魔力のっ、使いすぎでどうにも・・・!回復しないことには・・でも、使い続けてる状態でっ、回復なんて・・出来ないからっ!!」




 ドォオオオンーーーーー!!



 防火壁が一枚破られた音がした。















「ハァッ!!・・・ハァッ!!ハァッ!!あぁあああ!!まだ着かないじゃない?!」

「リリさん!まだ走って5分デス!あと10分はあるデス!!」

「まだ2倍もあるのっ?!?!」



 顔に掻いた汗のせいでマスクの付け心地が最悪なリリが不機嫌を露わにした。



「ココが、魔法を使えたらさっきみたいに運べたんですが、ごめんなさいデス!」

「ココのせいじゃないわ!」


 前の世界での服・・・スカートを靡かせて走るリリが言う。上は革のようなジャケットだが、意外にも動きやすい。それは元々の素材なのか、それともたまに着用していた事で柔らかくなったのか。手持ちも異世界に来た時の物を装着している。こちらの世界じゃ電子辞書くらいにしか役に立たなかった端末だって、知られざる機能でもしかしたら何か役に立つかもしれない。そう思い、リリは服に忍ばせた少し重い機械も手放さずに走ってきた。


「リリさん!!」

「あぁっ?!なにっ?!どうしたのよっ?!」


 ハァハァと息を上げて走るリリはココに突然話しかけられて驚いた。驚くことすら疲れる。



「お父様、心配じゃ無いデスか?!」

「心配だけどパパは大丈夫よ!!」

「何をもって大丈夫と思ったデスかっ?!」



 そもそもは、おじいちゃんが言うように自分が父と神風の車に乗っていれば起きなかったかもしれない事態だ。父親が謎のデカブツに取り込まれるなんて、大抵の人は正常でいられないだろう。しかし


「もちろん実のパパよ?!でもっ!・・・ハァッ!!・・・ハァッ!!・・・私、物心ついた時から異世界で・・・育ったからっ、再会?して一年だし!実感がないって言えばないし!・・・ハァッ!!でも一年間ずっと一緒だったし、やっぱりパパだし!!似てるところちょっとはあったし!?・・・ハァッ!!でも!!大丈夫なの!!」

「・・・根拠がわからないデス」

「だって!イッセイがいるもの!イッセイが諦めてないんだから大丈夫なのっ!!!・・・ハァッ!!」

「イッセイさんを信頼してるんデスね!」

「とりあえず喋りながらだと・・!!・・・ハァッ!!大変だからちょっとだけで良いから会話は一旦」

「それと!ココずっと気になってたことあるんデス!!リリさんの持ってるその機械は異世界の」

「私の話聞いてるっ?!?!?」











 ドォオオオンーーーーー!!



 更にもう一枚防火壁が破られた。



 工場内はスプリンクラーのおかげで水浸し。そして今もなお水が天井から降り注いでいる。デカブツは特殊素材であるから水如きで電気系統が故障するんなんて事はないかもしれない。しかし、キキが打撃を与えた。どこかしらに亀裂が入っていれば。そこに水が入って少しでも何かトラブルを起こしてくれたら。イッセイはそう願いながら次の手を考える。しかし浮かばない。

 

 あと数枚でまたデカブツがこの空間へ辿り着くだろう。キキが同じように吹っ飛ばしてくれる保証もない。更に、2回目の打撃で最上にまた負荷が掛かる可能性もある。


 

 ドンッーー!!ドンッーー!!ドンッーー・・・!!



 デカブツが壁に激突する。キキの魔法の威力の他に、防壁にぶつかる衝撃も加わる。最上は大丈夫だろうか、やはりもうどうにか決着をつけなければならない。

 そんな時だった。




 バキュンッーーー!!バキュンッーーー!!



 神風のいる方向から銃声が聞こえた。サイレンサー無しで二発撃ったらしい。何を撃ったかを見ると、二輪車に固定された積荷箱を固定していた金具を縦断で破壊したのだ。



「イッセイ君・・・!!!」



 キャットウォークの柵の後ろの鉄柱に後ろ手で捕まった神風は、下半身を持ち上げて力の入る片足で積荷箱を思いっきり蹴っ飛ばしてイッセイの元まで吹っ飛ばした。その瞬間ーーー




  ドォオオオンーーーーー!!




 最後の防火壁が破られたのである。
















「ハァッ!!工場ッ!!あそこね?!?!」

「中でキキ様の魔法が暴走してるです!!凄いですっ?!」

「急ぐわよ!!」



 リリは走った。一刻も早くイッセイの元へ行かねば。その一心だった。



   ドォオオオンーーーーー!!



「何?!デカブツがこの音出してるの?!」

「凄い音デス?!」



 リリとココが工場について見ると、防火壁がいくつも穴を開けられた形跡がった。そして、その穴から見える先は、また壁にぶつかりまくっているデカブツだった。



「あの壁の向こう!!キキ様の魔力があるデス!!」

「でもデカブツと同じルートを行くなんて怖いわっ!そうだわ!横からドアがあるかもしれない!回り込みましょう!!」

 工場の外側をリリとココがまた走る。





 ドンッーー!!ドンッーー!!ドンッーー・・・!!





「リリさん!!扉開いてます!入れるデス!!」

「よく見つけたわ!!」

 ココがリリよりほんの少し先を走り、扉を見つけた。非常事態のボタンを押された工場は、非常口と思われる人が通る用の扉が既に自動で開いていたのだ。そして、ココはそこで自分の主人をやっと見つけた。


 

 「・・・!!!キキ様ーーーーー?!?!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ