二十一話:二号
「冗談じゃないわよ!こんなの二体も相手してらんないわっ!!」
地震が起こったその直後だった。空が暗くなり見上げたイッセイたちは、もう一体デカブツが空から生まれるかのような光景をみた。これは異世界からデカブツをもう一体送られたのだ。
上空からぬるぬると現れたデカブツは手足というアームが動いている。そのままドシン!!!と地上に落ちてきた。そこでココが気付く。
「・・・?あ!でも!最初のよりサイズがちっちゃいデス?!」
「そんなの別に安心材料にならないからぁああーー!!ココ!!小さいデカブツの方頼んだわよっ!?」
「そんなことないかも知れない。同じデカブツを二つは所有していないのかも知れない・・もしくは同じサイズを二つ送る必要がなくて、この小さいのには別の役割があってつまり」
「分析も大事だけどイッセイもっと離れてくれるともっと派手に魔法が使えるんですけどー?!」
キキの命令通り、ココは小さい方のデカブツへと寄って拘束魔法を掛けようとした。しかしーー
シュピンッッーーー!!
デカブツから、今現れた二体目のデカブツに光線が送られた。
「ビームみたいなの出たデス?!」
「何?!喧嘩?!?」
そしてその直後だった。
ギュイイイイイイイイインーーーーーー!!!
「あぁああっ?!離れて行くデス?!」
キキやイッセイがいる方とは別の方向へと勢いよく動き出したのだ。しかも、アームで歩くように動くのではなく、今度はタイヤで走行している。
「待つデスーーー!!!」
ココは勢いよく追いかけて行った。
「なんだ?キキの核探しの石が目的じゃないのか・・・?」
「あっちって、おじいちゃんたちが行った工場の方よね?!教えてあげたらっ?!」
キキの助言でイッセイはすぐにおじいちゃんに電話を掛けた。
さて出発という時だった。
二輪車に跨った神風。そして、リリを後ろに乗せたおじいちゃんの携帯電話が鳴り出した。スピーカーにして繋ぐ。
「もしもし!こちらおじいちゃん!!」
『じいちゃん!デカブツがもう一体現れたんだ!!』
「寝言は寝てから言え!!!」
『でも、サイズは少し小さくて、今ココが追ってるんだけど工場の方に行ったんだ!!気をつけて!!』
「ぺぇえええええ?!マジかいなっ!?」
「イッセイ?!デカブツ2(ツー)が現れたの?!こっちにきてるって本当なの?!」
「それなら略して『デカブツー』がよくねぇか?!」
話の論点がズレて呼び名の議論に変わった。確かに大事なことではあるが、優先すべきはその新しい個体がこちらに向かってきていると言う事実に神風は急いで話しを進める。
「聞き分けしにくいので辞めましょう。新しい方は『セカンド』でいいじゃないですか。きてほしくはありませんがこの後も3台目がくるかも知れませんし」
「その場合の3台目の呼び名はJーー」
「イッセイ君!!小さいと言っても具体的なサイズはどれくらいですか?!」
『目測ですけど半分はあります!』
デカブツセカンドのおよその大きさを想像したおじいちゃんが考えて口にした。
「半分か・・・よしイッセイ!!セカンドはなるべくこっちで抑えておくわい!なるべくだけどな!出来る範囲でな!」
「予防線が多いのよ」
「今から先に太郎を戻らせる!!武器をしこたま持たせた!!ワシが戻るまで頼むぞ!!」
『助かるっ!!』
そういうとイッセイは通話を終了させた。
「おじいさん!ここにセカンドが来るんです!私が今出てしまったら・・!」
「大丈夫じゃ。お前さんは裏から出ろ。セカンドはこの工場で取り押さえる」
「じゃぁ、リリさんは・・」
「私はおじいちゃんとここでセカンドを取り押さえる手伝いをするわ」
そう言った彼女の目は、まだ少し揺らいで安心感はないものの、いつも通りの決意の強さと、さっきとは違う顔持ちだった。
「最上さんのところにすぐに戻りたいとは思わないのですか?心配ではーー」
「心配よ!!まだ人なの言ってた自己責任のかけらだってあまりわかってないわ!多分、イッセイとかはなんとなくわかってたんでしょうけど!!自己責任が・・・自分の身を守るだけの話じゃないって事。
私はパパの娘だもん。まだ一年しかいないけど。でも、異世界行ってからも五年間ずっと探してくれてたって言うし。何かあったら庇ったり身代わりになったりするわよね・・・。だからこそ最初から・・・危険な場所から遠ざけたいって思ってたんでしょうけど。
だから、今この時点でどっちかにいなくちゃいけないのなら、デカブツより小さいセカンドの方に居た方がまだ安全なんでしょ?私の安全が、他の・・・周りの人たちの安全にも繋がるなら・・。私はここでおじいちゃんの手伝いをするから」
「大人しくしているというお手伝いを完遂してくれなっ!」
「茶化さないでよっ!!」
リリの気持ちを聞いた神風は、やはりこの事態で物事を考えられる彼女の聡明さを感じた。自分の大事な上司を、その上司の実の娘であろうと危険に晒すことに不快を感じていたが、彼女はまだ幼い。こうやって経験と体験をしてようやっと大人になって行くんだなと、神風も自信が年甲斐もなく機嫌を損ねたことを少々反省した。しかし、
「よく物事をお考えになって下さってよかったです。あなたが生まれる前からずっと大切な私の上司を今後危険に晒したら許しませんよ」
「時雨何よそれーーー?!私の方が大事にされるべきでしょ?!」
「子供だからですか?女性だからですか?またリリさんはそんな昔みたいな古臭いこと仰って」
「黙りなさい三十路越えっ!!」
この世界にリリが来た時から本当に少しずつ神風と距離が縮まりつつあると自覚があったリリだが、今このような神風の本音を混ぜた軽口を聞けてより親密になれたと感じた。
「ほれっ!!和気藹々は良いがイッセイが待っとる!!太郎頼んだぞ!!」
「神風です、では先にーーー」
その瞬間、工場のシャッターがピンク色に発光した。
「何じゃぁー?!」
「魔法では?!」
「でも、イッセイの方に居るはずでしょ?!」
ガッシャーーーーン!!!ガシャンガシャンがシャンドォォオオオーーーーン!!!!!
閉めていた工場のシャッターに大きな塊がぶつかってきた。シャッターが内側に大きく凹んだ。そして、その後、突き破りたいと何度も突進をして遂にぶち破って入ってきた。
セカンドだ。そしてその後ろから・・・
「魔法がちょっとだけ間に合わなかったデスー!!シャッターごめんなさいデスーー!!」
「ココ!!!」
ここの登場にリリが嬉しくなる。
「キタァーーーーー?!?!太郎!ほら出発せいっ!!!」
「確かにデカブツより小さいわね!!時雨早く!!」
「では、先に行きます!!」
ボタンでエンジンを掛けた。超大型バイクのため、エンジンも大きい。音も物凄く響く。そして颯爽と破られたシャッターからイッセイの元へと走り出した。
セカンドが一度神風の方向を向いた。そして、『ピピッ』と機械音がした。
「まさか太郎を追って行くんじゃ?!」
おじいちゃんが一瞬危惧したがセカンドは次におじいちゃんとリリとココを同時に向いて捉えた。
ピピッ・・・・・ピピピッーーー
ビィィイイーーーーーーーーー!!!!!!
警報のような音が鳴り、セカンドが一行に向かってきた。
「狐!!小娘をっ!!」
「承知デスーーー!!」
おじいちゃんは向かってきたセカンドの軌道からそれるように転がって避けた。ココは、リリのジャケットの襟を掴んで宙に浮いておじいちゃんと反対方向に距離を取った。
対象物が二方向に分かれたセカンド。そして再度周囲を確認するように目が動いた。そして
ピピッ・・・・・ピピピッーーー
ビィィイイーーーーーーーーー!!!!!!
「嘘でしょ?!」
「なんでデスかー?!」
リリとココの方向を向いた時に警報が鳴った。




