お姫様はこんな気持ち?
「――っというわけで、エリクは隣国の歴史に終止符を打った英雄なんだ。そんなエリクを低い地位に置いておくと面倒くさいことが多発するんだ。エリクがキレて暴れられても困るしね。そうそう、当時の戦いを見ていた者からついた名が ≪天空の剣神≫ だそうだぞ」
なにも知らなかった私に丁寧に教えてくれたヴァート父様はニヤニヤしながらお父様を見ている。
「なるほど、お父様のお陰で今は争いがなくなった……それってたくさんの命を救ったってことよね。お父様凄い!!」
美形な上に強くて思いやりがあるとか完璧すぎる!!自慢のお父様すぎて勝手に顔がニコニコしてしまう。
「――グッ――」
「―ウッ―」
なぜか急にお父様が歯を食いしばり、ヴァート父様は胸を押さえて動かなくなった。
「――ゴホン。ちなみにアイリスのその話し方が素なのかい?家族になるのかもしれないんだ、非公式の場では素のままで接してくれ」
「あ……!!では、今後はお言葉に甘えます。ついお父様の話に嬉しくなっちゃって……」
気付かない内にため口で話してしまったなんて恥ずかしい!!お父様の背後に隠れギューッと抱き着く。
「あぁぁぁぁ!!いいなぁ!!女の子いいなぁ!!」
ヴァート父様が両手で顔を押さえながら叫んでいる。
「そうだろ?自慢の娘なんだ」
お父様が背後で引っ付いている私に向かってニコニコしながら優しく頭を撫でる。
「えへへ、お父様大好き!!」
とても嬉しくなって恥ずかしいけど自分の気持ちを伝えた。
「「――グッ――」」
なぜかまたヴァート父様と二人して胸を押さえて動かなくなってしまった。
――申し訳ないけど、エリクとちょっと大事なことを話さないといけないから一旦下がってもらえるかい。王城の中でなら自由に歩いていいから。
って言われたから今は暇つぶしに色々探検している。お父様がヴァート父様にずっと圧をかけていて話が進まないから私が自主的に下がることにした。もちろん王城の護衛さん二人付きで!!
後ろに付いてきている護衛さんたちをチラッと見る。目が合ったのに表情を崩さずに無表情で冷たい印象の人とニッコニコして目が合うと手を振ってくる正反対の二人。
見ていたことが二人にバレて恥ずかしくなって前を向く。
こんなお姫様みたいな状況に正反対のイケメン達に護衛されるとか……!!少女漫画のようなシチュエーションに妄想して無駄にドキドキしてしまう。
「――危ないッ!!」
急に後ろから抱き締められ、ビックリすると同時に目の前の柱が目に入った。
「大丈夫ですか?」
見上げると茶色の髪をした無表情の護衛さんの茶色い瞳が私を抱き締めたまま無表情で見下ろしていた。
目の前の柱に気付かなかったことも、急に抱き締められたことも相まって恥ずかしくなりもじもじしてしまう。
「い~やらっしい!!レイターはいつまでご令嬢を抱き締めたままなの~?いいなぁ、俺も抱き締めてぇ~」
青い髪をした護衛さんが自分を抱き締めながらくるくる回っている。
「ライ、職務中だ」
「へいへい。でもそう言いながらいつまで抱き締めてるんですかぁ~?」
ニコニコしているけど、どこか冷たい印象の青い瞳がこちらをじっと見てくる。
「許可なく触れて申し訳ございません」
サッと両手を上げるとそのまま痴漢していませんよ。みたいに後ろに後ずさっていく。
「いえ、こちらこそありがとうございました」
お辞儀をしてお礼を言い顔を上げると護衛さんの二人は目を大きく開いて固まっていた。
「護衛に対してどうしたの~?てっきり『責任とりなさいよ!!今晩はあなた達の奉仕で許してあげる、光栄に思いなさい』ぐらい言われるかと思った~」
青い髪をかき上げると探るような青い瞳をこちらに向けてくる。
「えっと…」
どういうこと?女性に触れたから無償で働きなさいよ!それで許してあげる!みたいな感じなのかな?簡単に無償で働かせるとかどんなけブラックなの……。
困惑していると後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「おい!そこのお前達。ここは僕の場所だぞ!」
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