若気の至り④(エリク視点)
部屋に入ると、扉から最も遠い奥の椅子に一段と着飾った王と思われる贅に肥えた男が醜く笑っていた。想像よりも広い部屋にはかなりの人数が集まっていた。王と思われる男がこちらに気付くと全員の視線が自分に集中する。
「ほう…とんでもなく極上だがこの国の者ではないな。どこの誰かな?」
着飾った男がニタニタと醜い面をして見てくる。
「お前に答える義理はない」
「その髪色…もしや……しかしなぜ…」
数人の男が俺を見て顔を青ざめている。この場所で俺のことを知っている時点でもう父上を嵌めた敵だと公言しているようなものだ。
「クソ!!領土の後始末に追われているはずでは」
そう言いながら突然立ち上がり火の魔法を仕掛けてくる。
「……」
ゴウッと音を立てて矢のように飛んできた火の魔法を剣を振り打ち消す。
「国王陛下の命に背くつもりか!!」
そう言い先程と違う男が風魔法を仕掛けてくる。
「はっはっは!笑わせるな。お前らが言えた義理か?」
ヒュンっと刃の様に向かってきた幾つもの風の魔法に対しても剣を振り打ち消す。
次々と魔法が飛んでくるが、学院で絡んできた奴らより劣りすぎていて乾いた笑いが出る。立場に甘え自堕落な生活をしてきたのだろう。こんな奴らに父上は……不快な感情が湧き上がる。
「ゴミ共め」
魔法を剣で打ち消しながら火の魔法を飛ばしてくる本体に向かって歩いて行く。
「――やッ!!やめ!!」
剣を一振りすると火の魔法を飛ばしてきた男が静かに床に倒れる。
「クソ!!相手は一人だ。このままここで殺せば何も問題はない」
その場にいる大勢が一斉に魔法を放ってくる。
こんな児戯のような魔法に俺がやられるとでも?舐められたものだな。
「笑わせてくれる。権力に胡坐をかいていたゴミ共になにが出来る!!俺に刃を向けたことを後悔させてやろう」
「はぁはぁ……なんなんだあいつは。邪魔者はもう排除したと言っていただろう?!憂いはなくなったのではないのか……今後の計画はどうなる?!」
矛先がレイン王国の貴族に向いている間に裏口から走って逃げてきたが、あれはヤバイ。化け物だ。とりあえず兵士のいるところまで行かなくては。思う様に動かない自分の下半身を叱咤しながらなんとか走る。
「わかりません、確かに…確かにこの国に隣接している領主は亡き者にしたと聞――」
「……」
「おい、どうした?!なにが――ッ」
振り向くと空色の髪をした極上の美形と、つい先程まで話していた側近が床に倒れていた。
「ひぃいいいいい!!」
走れ!!走るんだ!!!もうすぐ兵士が集まる場所だ!!そこまで行けば相手は一人だ。なんとかなるだろう。 急げ!急げ!もうすぐだ!!
「グハハ!!ここには兵が集まっている。これでお前も……」
静かさに声を失い唖然とする。扉を開けて転がりながら入った場所は、いつも兵が待機しているはずだった。
「なっ……なぜ……」
「なぜだろうな。まぁどうでもいいが」
あの男が目の前まで来ていた。恐怖で声が出なくなる。
「――ッま…待て!!何が望みだ?!国か?なら王座をやろう。だから――」
ゴトリッ
「最期まで救いようのないゴミだったな。父上……もうこれで未来は誰も犠牲になりません。ただ、ソード家が途絶えることをお許しください」
終わった……これで長年の問題に終止符を打てた。終わるときはこんなにもあっけなく終わるものなのか……この後、国王の命に背いた俺は処刑されるだろうな。
「それは許可できんな」
突然背後からここに居るはずのない声がした。
「…………ヴァート、なぜ……」
「来るのが遅くなってすまない。色々やることがあってな……私が到着するのを待っていたようにこの国の者に懇願されたのだ」
ヴァートの視線の先には最初に侵入した部屋で出会った使用人と思われる男がいた。
「この国の王子が自ら重鎮のアレを3つも持って自国の属国を請われちゃ、我が国としても要求を飲まない以外の選択肢はないのでな。争いの意思はないということで兵士が武器を置いて全員並んでいたんだ。彼らもかなり疲弊していたのだろう」
「……そうだったのか。ヴァート、約束を守れなくてすまない。クルーエルとヴァートが居れば未来は安泰だな。国王になった姿を見れなくて残念だが」
それを聞いたヴァートがなぜかニンマリ笑う。
「それなら今、目の前で見ているだろうが」
「…………はぁ?………」




