若気の至り③(エリク視点)
「――坊ちゃまッ!!それは危険です!!」
これからの作戦を伝えるとシークが必死に止めてくる。かなり危険なのは理解しているが逆に今が絶好のチャンスだ。俺はもう決めている。長年の争いに終止符を打つにはこれしかない。
「では問おう。いつ達成できる?」
「それは……」
シークが言葉に詰まる。
「俺は父上のように寛大ではないんだ。それに一人の方が動きやすい。挽回のチャンスが欲しいんだろ?なら国内に蔓延る上級貴族共をなんとかしろ。責任は全て俺に投げろ」
「承知しました……。掃除はお任せを。ぼっ……エリク様、無事に…ご帰還をお待ちしております」
シークを筆頭にずらりと並んだ使用人一同に頭を下げられ見送られている中、身体強化を使い走り出した。
「……あそこか」
見えるギリギリの位置で息を潜め様子を伺う。 シークにもらった地図を頼りに来たが、この国の王族が住まう王宮といわれているものが自国の王宮のイメージからかけ離れていた。
ギラギラと金をたっぷり使った外装と悪趣味な装飾、ここへ向かう途中に見たボロボロでスラムと化してた町や村と比べると雲泥の差だった。
「自身を肥やすことしか考えないゴミ共め」
国王からの命で隣国に立ち入ることが許されなかった。我が領土に立ち入った奴らを対処するしか出来ないせいで頻繁に小競り合いが起きた。それももう終わりだ。
罪をかぶるのは俺だけでいい。俺が処刑されても次期国王はヴァートだ、クルーエルもいる。未来は明るい。負の楔を俺が全て断ち切ってやる。
再度身体強化をかけ、地面を蹴った瞬間に魔法で押し上げるように補助をして空を駆ける。単身の利を生かして王宮に上空から乗り込んだ。
「――なんだ貴様は?!」
侵入した部屋に人の気配が3つあったのは知っていた。視界には装飾品でゴテゴテに着飾った老人達が叫んでいる。
「はぁ…やっぱりゴミばっかりだ」
「私をだ――」
「うっせえなぁ」
剣を一振りすると静寂が訪れる。
バタバタと足音が聞こえる。さっきのゴミが叫んだせいで人がきたのか。
「どうかなされま――ひぃッ!!」
ここの使用人なのか、人が着ていると思えないようなようなボロボロの服装をした男が尻餅をついたまま動かなくなった。
「おい、ここの王族はどこにいる」
チラリと視線を合わせると顔が青ざめガタガタと震えながらも指をさす。
「あ…あち…あちらの…へ、へへ部屋で…す」
「そうか、ありがとう」
エリクは赤い水溜まりを踏み、跳ねた液体が靴に付くのを気にもせず、そのまま指をさした方向へと歩きだす。
エリクが部屋から出ていくのを見送ると、辺りを見回す。
あの圧迫感から解放され男は深呼吸をした。どうやったのかはわからないが、恐ろしいほど美形な彼はかなりの手練れのはずだ。王族や上位貴族がいる最上階にバレることなく侵入出来ている時点で今までとは違う。
「もしかしたら彼はこの現状から解放してくれるのかもしれない!こんなことしている場合じゃない、早く仲間にも知らせなきゃ」
床に落ちている3つの物体を布で包み、急いでこの部屋から飛び出した。
見かける者は皆怯え、さっきの使用人と思われる者と同じようにボロボロの服を着ていた。
「ここだな」
扉に手をかける。悪趣味だ、明らかにこの部屋の付近だけ吐き気がしそうな外装をしている。
エリクはため息をつくと一気に扉を開いた。
「なにご――」
ゴミ共がまともに口を開く前に剣を一振りする。
「きさ――」
一振り
「おま――」
また一振り
静かになると奥から笑い声が聞こえる。この奥の扉に王族がいてるのだろう。扉の前の奴らがこの世から去っているのにのんきなものだ。剣についた赤い液体を振って飛ばし、奥の部屋への扉に手をかけた。
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もう少しエリクの話にお付き合い下さい_(._.)_




