若気の至り①(エリク視点)
あぁ、どこもかしこも腐ってるゴミばっかりだ。
荒れてしまった辺境の領土に隣接している国で見た光景の感想だ。
ヴァートが国王の座を早めると言っていたな。あいつが言うことだ。本当に早めに王になるのだろう。そしてクルーエルも宰相になるだろうな。
三人で約束した『誰もが羨む国』を目指すために、権力にヴァート、知力にクルーエル、武力にエリク。
今の国王は悪い人物ではない。一言で表現するなら『優しい』だが国王としては優しすぎた。故に傀儡状態になった。
俺はしがない辺境伯の息子だ。父親との関係は悪くはなかったが、隣国と隣接しているこの辺境では小競り合いが絶えないせいで父親はほとんど家にいなかった。子供だろうが辺境伯の息子だ。自分が戦場に出ることもあった。そこで感じた状況に、国の管理がここまで届いていないのが子供の自分でも理解できた。
自分の髪色が他と違ってめずらしい色をしているのは気付いていた。予想通り10歳の魔力鑑定で稀有な属性をもっていることが判明した。
それもあって、学院では実技で常に首位だった。たかが辺境伯の息子が首位なのが気に入らないと絡んでくる奴がひっきりなしに来たが、全員実力で黙らせていた。
そんなことばかりしている日々を過ごしていると、ある日声をかけられた。
「初めまして。君が噂の辺境伯令息のエリク・ソードかい?」
「そうだが……お前も文句があるのか?」
「いいえ、称賛こそすれ文句なんてとんでもない!私は君と話がしたいだけさ。」
今までと明らかに毛色の違う男に興味が湧いた。
男はクルーエルと名乗った。その後も幾度となく話す度に感心させられ、気付けば常に行動を共にするようになっていた。
「エリク、君に紹介したい友人がいるんだ。」
ある日、昼食を約束していたクルーエルと会うとそう言われた。断る理由もないのでそのまま快諾した。
「やぁ、君が噂のエリクかい?クルーエルからよく話は聞いていた。初めまして、私はヴァートだ。よろしく。」
クルーエルに連れられて入った一室で彼を見た瞬間驚いた。 王族じゃねぇか!
「えぇっと…俺…いや、私は…エリク・ソードと申します。」
「ははは!!硬い硬い!!ここには学生として来ているんだ。畏まらなくても大丈夫さ。」
「そうだよエリク。王族に無礼を働けるのは学生のときだけさ。今のうちに無礼をしておかないともったいない!」
「はっはっは!!そんなこと言うのはクルーエルだけだぞ。そういうことで、エリク。君も一人の学生として接してくれて構わない。」
ここで変に遠慮することは求められていないのだろう。クルーエルめ。先に言っておけ!!
「じゃあ、遠慮なく。辺境伯出身なもんであまり丁寧な貴族の話し方が慣れていないんだ。今のうちに無礼を働いておくよ。よろしくヴァート。」
「ハハッ!!最高だな!!クルーエルの言った通りだ!!」
なぜか嬉しそうに笑い出して自分の膝をバンバン叩いている。チラリとクルーエルを見る。
「ヴァートに『君と対等に話が出来る相手がいる』と話しただけさ。」
出会いはこんな感じだったが、ヴァートは王族なのに驕らず、少年のような男だった。3人で仲良くなるには時間がかからなかった。
ある日の放課後。いつものように3人で雑談をしていたとき、ヴァートが急に真面目な顔をして話しだした。
「私は学院を卒業したら、王位を狙おうと思っている。」
「何言ってんだ?もうお前は次期国王って決まっているだろうが。」
「あぁ、だけどそれは何十年後だ?父上は親としては理想そのものだが、国王の器ではない。エリクは辺境伯だから感じているんじゃないか?腐った貴族共のせいで管理が杜撰だ。」
確かに子供ながら感じたし、年々治安が悪化している。
「なら、私は宰相になって膿を出すことにしようかな。その為にまずは父上には隠居してもらおう。」
クルーエルは、明日の食事は何かなレベルの軽い口調で物騒なことを言い出した。
ヴァートがこっちを見てニッコリと笑う。
「それでエリク。君に頼みがあるんだ。」
更新が遅くお待たせしております_(._.)_
今更ながら台詞のあとに句点はいらないことに気付きました(;´▽`A``
今まで投稿したものも修正するか、このままいくか悩んでおります……。




