糸口(クレバー&エリク視点)
しくじった!! 父上にも言われていたのに、護衛が付いて行ってるから大丈夫だと過信しすぎた。アグリー・テリブル伯爵令嬢が何かしたことは間違いはない。 ただ証拠がない。 あのわかりやすい彼女の自信満々な態度を見ると証拠は隠滅してアリバイもつくってあるのだろう。
揺るぎない確実な証拠がない限り女性を責めるなんてことは出来ない。相手は女性だ、中途半端な証拠じゃ、逆にこっちが潰されてしまう。
「クソッ!!」
クレバーは苛立ちを抑えきれず、綺麗に整えていた自分の髪の毛を頭を抱えるようにグシャっと掴む。落ち着け、父上も言っていたじゃないか。なにかヒントがあるはずだ。
それにしてもアグリー・テリブル伯爵令嬢は堂々と着替えまでして迫ってきた。アイリスがいなくなったら、僕が婚約者にでもなるとでも思ったのか。 でも、アイリスに出会ってしまった僕にはもうどんな女性でも心が動かない。
あいつがお茶を零さなければドレスも汚れず、今もまだ僕の膝に座っていたというのに。そういえば、お茶を零した黒髪の奴がいなかったな。 少し調べてみるか、父上にも協力してもらおう。黒髪は目立つからすぐに情報が集まるだろう。
「そこの君達、少し聞きたいことがあるんだけど。」
物を運んでいたテリブル伯爵家の使用人に声をかける。使用人は手を止め、僕の顔を見ると公爵家の子供だとわかったようで背筋を伸ばして立つ。
「ここで働いている黒髪の使用人の名前を教えてほしい。」
「……え?黒髪の使用人はいてませんが……。」
は?どういうことだ!” あれは使用人ではないということか。 まさかアレが当たりか。 使用人ではないということはアグリー・テリブル伯爵令嬢の婚約者か協力者だな。 ってことはお茶を零す行為も仕組まれたことだったのか。 少しずつ見えてきたぞ。 急いで父上に知らせよう。
クレバーは急いでその場を後にした。
◇◇◇◇
「なんだと!!シーク、今すぐにテリブル伯爵家に行くぞ。」
「落ち着いて下さいませ旦那様。」
「これが落ち着いていられるか!アイリスがいなくなったんだぞ!!」
アイリスにつけていた影から報告があった。 アイリスがテリブル伯爵令嬢の衣装部屋に入った瞬間、テリブル伯爵家の影20人に襲われたらしい。 こっちは2人しかいなかったから全員倒すのに時間がかかってしまい、その間にアイリスの行方がわからなくなってしまったそうだ。 護衛はなにやら薬でやられた様で衣装部屋の扉の前で意識が朦朧としていたらしい。
「今、動くのは得策ではございません。確実に、徹底的に、息の根をとめるには情報が足りませぬ。たかが伯爵家の影ごときに時間がかかるとは……。申し訳ございません。」
めずらしくシークが感情的になっている。おかげで少し冷静になれた。
「そうだな、私達に敵対したことを後悔させてやろう。」
短いので明日また更新します_(._.)_
明日も他者視点がありますが後半に少しだけ本編に戻ります('ω')




