テリブル伯爵家のお茶会④
「わざとさせたことだもの。」
そうだったんだ!!あの「ごめんなさい」は零してしまっての謝罪じゃなくて今から零しますの謝罪だったんだ。 謝るタイミング早いなーって思っていたけど、私にはわからないミスしたのかと思ってた。
「それで、ここへ連れてきてどうするのですか?」
扉の前には護衛がいてるし、大声出せばなんとかなるかも。
「あぁ、ちなみに扉の護衛はもう使い物にならなくなっているんじゃないかしら。」
「え?」
ちょっとそれは計算外!! でも、どうやって……。
「あら、気になるの?特別に教えてあげる。一緒に来るのがクレバー・ジーニアス様だもの。警戒して食べないっていう選択をすると思っていたわ。 食べたらラッキーだったけど。」
「何が入っていたのですか?毒?」
「クレバー・ジーニアス様も食べるかもしれないものに毒なんて入れるわけないじゃない。ただの媚薬よ。」
媚薬?媚薬なら、ちょーっともにょもにょなるだけで大丈夫なような……。
「あぁ、でもお父様が所持していた媚薬だから『ただの』ではないかもしれないわね。力が入らなくなり意識が朦朧とするらしいの。効果は絶大だけど、効果が出るまで時間がかかるのが難点だわ。」
ヤバイヤバイ。めっちゃ違法そうなやつじゃないの!!
「クレバー・ジーニアス様が食べていてくれたら、このまま愛し合う2人が結ばれて何の邪魔もなく結婚出来たのに。あなたなんてなんとでもなるもの。」
あぶない。クレバーが既成事実作られちゃうとこだった。 とりあえず逃げれるように辺りを見回しても広いただの物置部屋に見える。 扉は1つだけ……詰んだ……。
「うふふ。怖がらなくても大丈夫よ。私は直接殺しなんかしないわ。ちょーっと目の前から消えてもらうだけで。」
それ、間接的に殺すって言ってるようなものじゃ……。なんとか会話して時間稼がなきゃ。
「私がいなくなったらあなたが疑われますよ。」
「大丈夫よ、証拠は残らないようにするから。 あなたのそのドレスを着た身代わりに家の方角に馬車を走らせて目撃させるのだもの。目撃情報もあるし、帰ったって思うわ。」
「そんなことをしてもすぐにバレると思いますよ。」
ドレスを着た身代わりってことはここで脱がされる可能性が出てきた。 乱暴は嫌だけど、女同士だしなんとか突破出来るかもしれない。
「うるさいわね!!身の程も知らない鶏ガラが!!クレバー・ジーニアス様に近付くからこうなるのよ。 ほら、さっさとしてちょうだい!!」
――ガコッ!!
えぇ、仕掛け床!そんなのズルい!! 床から男性が2人も出てきた!! その内の1人はさっきのお茶を零した黒髪の人だ。 早く逃げなきゃ!!
逃げようとした目の前に小さな火の玉が飛んできた。
――え? 魔法? アイリスはアグリー・テリブル伯爵令嬢を見た。
「魔法は禁止されているんじゃ……。」
「あら、私は使ってないわよ?」
男性の方を見ると私に向かって手をかざしていた。確かに、女性は禁止だけど男性は禁止されていない。 規則は破っていない……。
「怪我したくなかったら大人しくしていた方がいいわよ。殺しはしないんだから。」
今、暴れるのは得策ではない。ここで殺しはしないならまだチャンスはあるはず。ここは従っておこう。
「あぁ、クレバー・ジーニアス様のことは心配しないで。私があとでちゃ~んと慰めてあげるから。おーっほほほほほ!!」
お茶を零した黒髪の男性がこっちに歩いてくるのでビクッと身構えてしまう。
「何度もごめんなさい。俺もこんなことしたくはないんですが……。怪我をさせたくないので大人しくしていて下さい。」
男性が小声で申し訳なさそうにそう言うと私の頬を撫で、髪を掬うとそっと口付けをし、私に向かって手をかざした。 少しずつ意識が薄れていく……。 ごめんなさい、お父様…クレバー…………。
ここまで読んで頂きありがとうございます(*^^*)
次回他者視点が少し続きます。展開が遅くもどかしいかもしれませんが、付き合ってもらえると嬉しいです(*´ω`*)




