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テリブル伯爵家のお茶会③

 目の前にマカロンやケーキ、シュークリームなど甘いものがズラリと並べられていく。


 「さぁ、いただきましょうか。遠慮なく食べてちょうだい。」 


 急に歓迎モードになって怪しすぎる……。 毒とか入ってそうな勢いなんだけど……。 躊躇していたらクレバーがマカロンとシュークリームを掴み、お父様のつけてくれた護衛2人に手渡した。


 「申し訳ないけど、アイリスの食べる物の毒見をお願い出来るかな?」

 「はっ!!承知しました!!」


 やっぱりクレバーも毒を疑ってる。そうだよね……怪しいよね。


 「そんな警戒しなくても、ほら?毒なんて入っていませんわ。ふふ。」


 見せるようにマカロンを食べているけど、だからその笑みも余計に怪しいんだって!! 護衛の人が食べてたけど、本当になんともないのかな?


 「アイリス、念のために食べないでおこう。」

 アイリスは頷いて、護衛の人をじーっと観察した。 ん? 顔が赤い気がする? 大丈夫かな。


 「ねぇクレバー。護衛の人達、顔が赤い気がするんだけど大丈夫かな?やっぱり何か入ってた?」

 

 「いや、今のところ彼らは正常だよ。だから気にしなくて大丈夫だよ。それにあんまりジロジロ見たらやりにくいと思うよ。」

 それは申し訳ないことしちゃったな。ジーッと見られたら仕事の邪魔になるだろうしやめておこう。







 実際はアイリスに見つめられて照れていただけなのである。それに気付いたクレバーにさりげなく阻止されていた。

  (「余計なこと言いやがって!!」)  by護衛





 

 

 「喉乾いたわ。早く持ってきなさいよ。クズ!!」

 豊満さんがまた蹴り飛ばした。蹴られた黒髪の使用人は怯えながら俯いて、急いで用意しだした。 普段からあんな風に蹴ったりしているのかな。 そりゃ、怯えるよね。


 「お…おま、お待たせしました。」

 食器をカチャカチャさせながら私の分も用意しだした。 そんな怯えなくても私は蹴らないよ……。


 「焦らなくて大丈夫ですよ、落ち着いて下さい。」

 怯えないように微笑みながら伝えた。 


 すると顔が真っ赤に染まっていき小さな声で「ごめんなさい」と聞こえた。 その瞬間、ポットがこっちに傾きお茶が零れる。 


 「アイリス!!」

 「アイリスお嬢様!!」



 『ガッシャーン!!!!』


 さすがに避けれないよね……。 熱くなかったからよかったけど、左側の腰から下が濡れちゃった。 クレバーにも少しかかっちゃったかも。 


 「クレバーは大丈夫?」


 「あ、あぁ。うん。僕は手が濡れただけだから。アイリスこそ大丈夫?」

 クレバーは取り出したハンカチでアイリスを拭いてくれる。


 「うん。でも、せっかく素敵なドレスくれたのに染みになっちゃうかも、ごめんね。」


 「ドレスのことなんか気にしなくていいよ。選ぶ楽しみが増えるだけだから。また贈るから受け取ってくれる?」


 「う…うん。ありがとう。」

 気遣いが出来すぎてこの世界での年齢感覚がバグっちゃう。 前世だったらドッジボールしようぜ!って遊びで泥だらけになりそうな年齢なのに……。 この世界では見た目年齢と精神年齢が一緒なのかも。


 

 「まあ!!うちのクズどもがごめんなさいね。大丈夫かしら?ドレスが濡れてしまっては駄目ね。私の新しいドレスあげるからこちらへいらっしゃい。」

 豊満さんが婚約者の膝から下りて歩き出した。


 「確かにそのままじゃ、良くないね……。お言葉に甘えようか。」

 クレバーが横抱きのまま立ち上がり、一緒に行こうとする。


 「あらあら。クレバー・ジーニアス様はレディの着替えを覗くご趣味でも?」


 「ちっ!違います。僕はここで待つことにします。その代わり着替えるところまでは護衛をつけさせていただきます。」


 クレバーにそっと下ろされたので、歩いて豊満さんについていくことにした。 あのお茶を零した黒髪の人はいつの間にかいないけど、あんなに怯えていたら零しても仕方ないよね。あとで豊満さんにあの人を責めないように言ってみよう。



 


 「こちらに入ってちょうだい。あなた達はここの扉の前まででいいわ。」

 ついてきていた護衛にここで待つように言っている。確かに着替えを見られるのは嫌だしね。


 「ですが……。」

 

 「ここまでで大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

 

 「では、私達は扉の前で待機していますので何かございましたらすぐにお呼びください。」



 


 「こちらに来て下さる?」

 扉に入ると視界一面がカラフルになった。衣装部屋なのかな? すっごい量のドレスがある。 これ全部把握してるのかなぁ。


 「こちらで着替えていただきたいの」

 そう言うとたくさんのドレスで見えなかったけど、小さめの扉が見えた。豊満さんが扉を開けて待っているので歩いて向かう。


 「あの、アグリー・テリブル伯爵令嬢。さっきのお茶を零した方を責めないであげてください。私はなんともございませんので。」


 豊満さんは扉に入ったのを確認するとニッコリした。


 「えぇ。わかっているわ。だって……。」













 「わざとさせたことだもの。」



 待っているクレバーの心情

 『そもそも、華奢なアイリスにアグリー・テリブル伯爵令嬢のドレスが身体に合うのか。 いや、そこはさすがに衣装係がいてなんとか即席で合わせることが出来るか。 趣味の悪い奇抜なドレスを着てきたらどうする。 それでもアイリスの可愛さは変わらないけど……。 濡れて帰すよりマシか……。 くっ!!せっかく膝に座らせていたのに、あの黒髪の使用人あとでチェックしといてやる。』




 アグリーの婚約者達

 「ジーニアス公爵令息、なんかどす黒い空気醸し出してるぞ。」

 「やめておけ、あのジーニアス公爵家だぞ。見るな、触れるな。目を付けられるぞ。」

 「あ、あぁ。」


 (早くこの空気なんとかしてくれ!!)

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