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筆頭婚約者の権利

 会場に戻ると、みんなそれぞれ自由にしているようだ。とりあえず、お父様に戻ってきた報告を……。っと、お父様を見つけるとたくさんの人に囲まれているのが見える。 忙しそうだからあとでいっか。ちょっと休憩するためにソファーにエスコートしてもらい座らせてもらう。


 「アイリス、お腹空いていませんか?あそこにある軽食はいかがですか?」

 クレバーが気を遣ってくれたのか、飲食を勧めてくれる。 うん、お父様も忙しそうだし食べて待っていようかな。


 食べ物の方へ行こうとするとクレバーにソファーで座って待っているように言われる。待っている間は誰とも話さないように、と念を押された。私の知らないルールがありそうだ。 軽食を選んでくれているクレバーを眺める。 本当に美形だなぁ。 たまに不機嫌そうな顔になるけど、それがまた良い!あんな美形が私の婚約者になるなんて!!キャッ!!


 一人で顔を赤らめてキャッキャしていると誰かが近付いてくる。

 「あの、少しお話いいですか?」

 顔を上げるとクレバーぐらいの年齢のイケメンがいた。 やっぱり屋敷だけじゃなくみんなイケメンなんだなぁ。と思いながら黙っていると急に近付いてきた。


 「――ひっ……。」

 なに?返事していないのに急に近付いてくるとか怖い。なんかこの人無理。嫌。 


 離れたくてソファーの端っこに逃げていると、ニヤついた顔でこっちに手を伸ばしてくる。 嫌だ!私に触らないで! 








 「僕の婚約者に触れないでくれる?」

 手から守るようにクレバーに抱きしめられる。


 「いや、俺はただ話をしようと……。」


 「嫌がってるのが見てわからないかな?もう一度紳士教育し直したら?」


 「も……申し訳ございません!!」

 さっきの人が何回も謝罪しながら去っていった…。 ホッ……よかった。


 「大丈夫ですか?もう少し早く気付くべきでした。」


 見上げるとクレバーの顔が思ったより近く、抱きしめられていることに今更気付いた。  

 「……あ……。」

 緊張してしまい言葉が詰まり、目を見つめたまま動けなくなる。 


 「――っぼ……僕こそ急に触れてしまい申し訳ございません!!」

 ボンッと顔を真っ赤にしてクレバーが慌てて身体を離す。 気まずい空気が流れる。






 「やぁクレバー。男だねぇ……。」

 ニヤニヤしたクルーエル父様が来て、クレバーを揶揄う。一気に明るい空気になり、思わず笑ってしまう。 


 それを見たクルーエル父様がまじまじと見てニッコリした。

 「私もクレバーと同じぐらいの年齢だったらアイリスの婚約者になりたかったよ。」


 「クルーエルは駄目だ!義理でも息子になんて考えるだけでゾッとする。」

 お父様がいつの間にか来ていた。


 「エリクは面白い冗談を言うね。まぁ、そうなればどんな手段を使ってでも婚約者になっていただろうけどね。」

 クルーエル父様が挑戦的な笑顔でお父様を挑発する。


 「本当に出来そうだから困るんだよ……。」

 呆れたように言うお父様が全然嫌そうじゃなくて本当に仲が良いんだなって思う。


 「アイリスとエリクもいるし、今がちょうどいいね。よかったらクレバーのことを婚約者筆頭にしてもらえないかい?」

 

 「筆頭?」

 よくわからず、首をかしげているとお父様が頭をなでながら話してくれる。


 「クレバー君がアイリスを守るためにも私もそれは賛成かな。アイリス、女性は複数の人と結婚することが出来るんだ。婚約者筆頭は両家の父親と本人同士が了承すれば筆頭になれる。他の婚約者にはない権限があったり、女性から一方的に婚約解消が出来ないことかな。アイリスがクレバー君を嫌なら無理強いはしない。」


 「い…嫌じゃないです……。」

 少しもじもじしながら答える。さっきの近付いてきた人が婚約者だったら嫌だけど、クレバーなら大丈夫だって思える。


 「婚約者筆頭にしていただきありがとうございます。名に恥じぬよう努力します。」

 クレバーが私とお父様に一礼をする。


 「私の息子を選んでいただきありがとうございます。」

 クルーエル父様が一礼をする。


 「こちらこそ至らぬところはございますが、よろしくお願いします。」

 2人に向けて軽いカーテシーをする。









 それからなにやらお父様とクルーエル父様は難しい話をしだしたので、クレバーと持ってきてもらった軽食をいただくことにした。 クレバーがマカロンを持ったかと思うと近づけてくる。


 「はい、あ~ん。」

 え?美形のあ~んってどういうこと!!


 「婚約者筆頭になると食べ物を手ずから与えることが出来るんですよ。本当は膝にも乗せてみたかったのですが……。」

 と、残念そうに答えられる。 


 無理!膝なんて無理!あ~んも躊躇しているのに! でもこの世界では普通のことなんだよね……。 この世界では普通、この世界では普通。そう自分に言い聞かせて口を開く。 緊張しすぎて少ししか口に入らなかった。


 「――くっ、かわ……ゴホン。今日のところは膝は諦めますが、いずれお願いしますね。」 

 満面の笑みで言われ、はい。と頷くしかなかった……。



 そこからお腹いっぱいになるまでずっと美形のあ~んという悶絶する行為が続いた。


 「なぁなぁ、見てみろよあそこ。手ずから与えてるってことはジーニアス公爵令息が筆頭になったんだな。くぅ!!羨ましい!!お前さー、あの子近くで見てどうだった?」


アイリスに近付いた男「近くで見るとめっちゃくちゃ可愛かった。つい触れそうになったらジーニアス公爵令息がすごい形相だった、こわかった……。ありゃ、触れていたら魔法ぶっ放してくる勢いだったぞ。」


 一同「マジこえぇ~。」




◇◇◇◇






筆頭の決まったあとの父親同士の会話。

 「エリク、正直うちの息子だけじゃ守り切れるかわかりませんよ。」


 「わかっている……。だがアイリスには出来るだけ学ぶことも本人の自由にさせてやりたいんだ。」


 「それであの部分だけ無知なのですか。まぁおかげでクレバーを婚約者にできましたが。」


 「やっぱりそれが目的で今日来たんだろう。」


 「さぁ、どうでしょうね。」


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