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一目惚れ(クレバー視点)

 「今週末、エリクの所に行くから予定を空けておきなさい。」


 父上に呼び出されたと思ったらそんなことか。なんで僕まで一緒に行く必要があるのさ。不満げな顔をした自分を見て父上は何が言いたいのか察したらしい。


 「エリクに娘がいるらしくてね、今週末にお披露目パーティーがあるんだ。クレバーもそろそろ誰かの婚約者にならないとそのままじゃ不味いんじゃないのかい?アグリー嬢とかね。」


 「げっ!!父上がなんで知ってるんだよ!」


 最近ずっとしつこく誘ってくる令嬢だ。なんとか躱しているけど、そろそろ限界だろう。そもそも女性の誘いを断るということがあり得ないほど、世の中の女性は貴重だ。全員が蝶よ花よと育て、女性の要望は必ず応え、自由にストレスを感じないようにと男性達は身を粉にして尽くす。それが当たり前の世界だ。僕にもそれを求められるが僕の心が動くような女性に出会ったことがない。

 そんな異常な僕の心は死んでいるのかもしれない。それに今は勉学が楽しくて正直女性を優先にする時間を勉強にあてたいんだ。父上のようになるにはここで手を抜くことができない。


 「まぁ、無理にとは言わないがエリクの娘がまだどんな娘なのか、婚約者は何人なのか情報が全くないんだ。でも、かなり秘匿されていたんだ。いたとしてもまだ少ないだろう。クレバーが望むなら私がなんとしても婚約者の座にねじ込むよ。」


 父上が僕の心配をしてくれているのはわかっている。勉学の時間がとれそうな子だったら父上にお願いしようかな。 







 当日、そう軽く考えていた自分を殴りたい。彼女を見た瞬間息が止まった。白とはなにかが違う、キラキラと輝いている髪の毛が揺れ、まさに妖精のようだ。まだ幼いその身体はほっそりとしていて、か弱く守ってあげないといけない衝動に駆られる。 


 ――彼女が欲しい。彼女の瞳に僕を映したい。


 階段を下りた彼女はまさに天使が下界に降り立ったようだ。彼女が古文書でしか存在の知らなかったカーテシーを披露すると周りの空気が飲まれるのがわかった。僕はかなり焦った。

 彼女の纏っているドレスも髪飾りも真っ白だ。婚約者は誰もいないということ。僕が筆頭になれる可能性もあること。


 「――ち…父上!僕、彼女じゃなきゃ駄目です!!彼女の傍に居たいです。お願いします。」

 父上に必死になって頭を下げる。僕にはまだこの周りの大人たちを出し抜ける権利も力もない。


 「へぇ。クレバーがねぇ……わかった。私に任せておきなさい。」

 父上はニッコリと微笑み、僕の頭を撫でて彼女の方に向かって行った。


 ドキドキとしながら祈るように父上の合図を待つ。 こんなに心が動いたのは彼女だけなんだ。お願い!僕を選んで! 


 父上からの合図があり、震えるほどの歓喜が身体中に駆け巡る。ニヤついてしまう顔を我慢し、彼女の手を取り口付けをする。 手が小さい、可愛い。


 「……あ…あの…クレバー様……。」

 潤んだ瞳で恥ずかしそうに僕を見て名前を呼ぶ。彼女の瞳に映った自分の顔が赤くなっていくのがわかる。

 なんだこれ、可愛すぎる!!こんな感情がぐちゃぐちゃになるなんて初めてでどうしていいのかわからなくなる。感情が溢れて彼女の顔をまともに見ることが出来ない。 父上にからかわれたけど、僕だってこんな気持ち初めてなんだ。





 彼女が休憩するので『婚約者』として僕が一緒に行くことになった。初めてのエスコートはかなり緊張した。 周囲の僕を見る嫉妬の視線をビシバシ感じる。 ひとつでもミスをしたら揚げ足を取ろうとしているのがわかる。


 庭に出たと思ったら彼女が黙り込んでしまった。僕のなにかが気に入らなかったのかもしれない。じっと待っていると、意を決したように彼女が口を開いた。僕は自分の耳を疑ったぐらい彼女は信じられないことを口にした。

 咄嗟に否定したけど、一瞬何を言われたのかわからず固まってしまった。 僕の気持ちを考えてくれるとは思わなかった。なんて慈愛の溢れた心なんだ。僕が嫌なわけないじゃないか。こんなに焦がれたのは彼女だけなんだ。


 必死だったからつい両手をとってしまったけど、彼女は嫌がる素振りを見せない。 これは僕も期待してもいいのか。可愛すぎて直視できない。


 名前を呼ぶ許可がもらえた。よし、つ…次は僕の名前だ。

 「……ア…アイリ…ス。僕の事も…こ、婚約者なのでクレバーと呼んでほしいです。」

 よし!!言えた!言えたぞ!!

 「ふふ。はい、クレバー。」

 返事に気を取られてつい顔を見てしまった。 アイリスの笑った顔が花が咲いたように華やかで、彼女の不思議な瞳に魅了される。 無理だ……。頑張れ僕。




 もっと精進せねば、と思っているとなにやら騒がしい物音がする。これはもしかして……。 アイリスが僕の後ろに隠れる。僕に頼って触れてくれるなんて……。ニヤついてしまいそうな顔を引き締め、彼女を守ろうと決意する。


 案の定アグリー・テリブル伯爵令嬢だった。 彼女は人気のある令嬢らしいけど、どうにも僕には合わない。僕の予定など構わず、婚約者でもないのに婚約者のような振る舞いをしてくる。 頑張って躱しているけど、僕の素っ気ない態度がえらく気に入ったらしくアプローチが激しくなるばかりだった。


 それにアイリスを見たあとだとよくわかる。アグリー嬢には何も感じない。僕はアイリスじゃないと駄目だ。心が動くのはアイリスだけだ。 





 彼女に害を成すならたとえ女性であろうが容赦はしない。

不機嫌そうな顔はニヤついてしまう顔を我慢しているのです('ω') 


ブックマーク、いいね。ありがとうございます(*´ω`*)

ちょっと次回の更新が少し空いてしまうかもしれません、申し訳ないです(ノД`)・゜・。

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