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防衛

先の出撃より12時間後。

地球換算 2033年5月25日 0900

「錨降ろせ。」

「錨降ろします。」

「ボラードは大丈夫か!しっかりとおらえたな!」

 ここは泊地の内、第2区画と呼称される場所である。

その中でも、最も外洋に近いのがここ3番ふ頭だった。

 泊地についてだが、今更ながら説明しようと思う。

大きさは東西5キロメートルほどで、南北700mほどの大きさだ。

最も東側が第一区画、ここに乾ドックが3つある。

このうち2つは、大屋根でおおわれていた。

乾ドックの大きさは360メートルほどの物だった。

他にもガントリークレーンが3機存在する。

 第2区画はふ頭がいくつかある。

ここにもガントリークレーンがある。

少し特殊な形状をしている為、入港は特別難しい。

 第3区画は、航空基地などが存在する。

小型ながら滑走路もあるが、軽飛行機ぐらいしか離発着できない。

 第1区画の東と第3区画の西側には、大きな岩壁がそそり立っていた。

この為、陸路でここに向かうのはほとんど不可能だった。

 「艦長、係留作業終了しました。」

「ご苦労。出港は1週間無しだ。艦内点検後、半舷上陸を許可する。」

「了解です。」

くらまはふ頭に繋がれ、しばし休息の時をとる。

 俺は艦長席に座り、窓から見える景色をじっと見た。

眼前にそびえる西側の岩壁に、白い点がいくつか見える。

 鋪野指揮官によると、この辺りは魔物が住まない場所らしい。

この為、恐らくは野生のヤギなのではないかという話だ。

 その理由はいくつかある。

まず、我々がこの世界に存在する点。

いきなり我々がこの世界に現れたとは考えにくく、段階が有ったはずだという。

その前段階とは空気のやり取りであったり、水のやり取りであったりした。

物質の移動の規模が徐々に大きくなり、我々のような人もこの世界に流れ着くようになった、と推察されている。

 俺はすっと目を閉じて、腕を組んだ。

何より、この世界自体が、随分ちぐはぐなものだった。

10年以上もこの世界で活動している鋪野指揮官も、同じ思いを抱いていた。

 この世界には、大陸と呼べるものが一つしかない。そして、不自然なほど野生生物が強い。特に魔物はその傾向が顕著だ。

海棲の魔物は、その鰭を鋭利な刃の様に研ぎ澄ます種もあれば、上顎を頑強なる剣へと変化させたものもいる。

また全身を硬い鱗で守り、長い尾を鞭のようにしている種もある。

また、烏賊のような外観の魔物の腕力は凄まじく、多くの魔物をとらえて離さず、やわらかいスポンジのように引き千切り、水を吐く力は大抵の魔物を空へと打ち上げるほどに強かった。

 陸生の魔物はまだ見た事は無いが、それでも強いらしい。

咀嚼力が5トンを超える火を噴くトカゲ、時速60kmで30分巡航できるオオカミのような何か。外観は子供の人間だが、大人よりも力が強く、知恵の回るゴブリン。そして、筋骨隆々のオーガや豚を人間にしたようなオークなど多種多様な魔物の数々。

恐らく人々の生活も、余り発展してはいない。

 まるで、我々がイレギュラーそのものであるかのような錯覚を受ける。

いや逆だ、我々はこの世界に本来存在しないはずの異物なのだ。

 この世界に初めから魔物がいれば、人類は瞬く間に塵殺されていたはずだ。

 つまり、魔物は人工的に作られた可能性が高い。

こればかりは、実際に魔物をとらえて、DNAなどを調べる必要があるだろう。

 再び目を開けると、岩壁の白い点に混じって、何か別の色の点が有った。

俺は見張り台に出ると、双眼鏡を除いて確認する。

赤い点のようなものを双眼鏡で通してみると、トカゲのようなものが見えた。

 しかし、大きさは山羊とほとんど同じである。

俺は艦内に残っていた通信科の乗員を呼んで、状況を説明した。

通信科はすぐに状況を把握すると、無線機に取り付いて、全周波数で通信を開始した。

「こちら”くらま”西の岩壁に大きなトカゲのようなものを視認した。体色は赤。大きさは約2メートル。繰り返す…」

 オオトカゲの観察を続けると、時折口から火を噴いていることが確認できた。

「艦長!そいつ、口から火を噴いていますか!」

その直後、血相を変えて俺の下に来た通信科。

「ああ、結構派手に吹いているが。」

「艦長、艦内に退避してください。あれはサラマンダー、魔物です!」

俺は艦橋に退避、艦内放送を流した。

「本艦が現在艦首を向けている方向に、魔物らしき生物の群れが確認できた。

これより本艦は、対地戦闘を行う。総員配置に着け!」

艦内にはアラームが鳴り響き、そこかしこで怒号が響く。

俺は艦橋で指揮を執る為、窓から岸壁の様子を見た。

まだ山羊の類にがっついているサラマンドラ。

 「CICへ、主砲撃ち方始め!」

その号令により、主砲から砲弾が放たれた。

岩とトカゲの混合物が複数形成される。

こちらに気が付いたサラマンドラも複数存在したが、首をこちらに向けた時点で次々と砲弾を叩きこまれる。

数分後には、岩壁にいたサラマンドラはすべて撃破した。

 俺は外線に発信する。

「鋪野司令官。こちらくらま。事後報告になりますが、西の岩壁に魔物が存在していたため、主砲を用いてすべて撃破しました。こちらに被害はありません。」

「こちら鋪野。そうか、ご苦労だった。」

 半舷上陸した乗員の中には、砲撃の様子を目撃していた者もいた。

 そして、夜。

艦長室で書類を整理していた俺のところに、上陸していた乗員がやって来た。

「失礼します。艦長。第2分隊の井上3等海士です。半舷上陸中に、このようなものを発見いたしました。本泊地西側の、岩壁付近です。」

差し出してきたに握られていたのは、水晶の様に透き通った結晶だった。

 俺は席を立ってそれを受け取ると、付いていた下士官も呼んで観察する。

大きさは十センチと割合大きいが、随分と硬い。

しかし、その大きさの割に随分軽いように感じた。

「しかし、艦長。」

「何だ。」

「これが見つかったのは、艦長が砲撃を行った後なんです。」

 俺はそれに引っかかった。

「これはもしかしたら、この世界の生物、特に魔物と称されるものに見られる特有の器官なのではないか。」

「艦長?」

俺は二人に順を追って説明した。

 約3時間前、俺はその西の岩壁で魔物を目撃したこと。

それを本艦の主砲を用いて攻撃したことも伝えた。

二人はどこか納得できないような顔をして、俺の話を聞く。

「本艦の砲撃によりズタズタに引き裂かれたトカゲの体から、これが出て来て、そのまま放置された。そんな具合だと思う。」

「では艦長、周辺にそのトカゲの破片が見つかっていないのはおかしいのではないですか。」

「恐らく泊地の警備部隊が回収したのだろう。」

 俺は再びその結晶体を見る。

「なあ、他にも有ったか。」

「はい。同程度の大きさのものをそれを含め4つほど回収しておきました。」

 俺は出来心で、少し舐めてみた。味はしない。硝子を舐めている様だった。

「か、艦長!」

突然の奇行に驚く部下たち。

「なる程。少し舐めた程度では、人体にさしたる影響はなさそうだ。」

俺はそう言って、舐めた結晶を洗った。

ハンカチで丁寧にふき取った後、それを井上に返した。

「人体に無害なのであれば、考えられることは二つ。一つは我々も結晶化と言わないまでも、これと同じものを体内に有している。ただし、器官までは発達していない。

二つ目が、」

「これと同じものは我々の体内に存在せず、吸収できない物質である。」

 ハッとしてみると、部屋の出入り口にいたのは、鋪野指揮官だった。

俺たちは慌てて敬礼すると、鋪野指揮官は楽にしていいと言った。

「そうだ、君たちの持っている物についてだが、陸軍の白波瀬大尉が教えてくれたよ。魔物の体内での未発達した器官、魔力結晶。

それがその結晶のこの世界での名前だ。

地球では、霊力結晶というらしいがね。」

そう言った彼は、俺たちの持っている結晶を渡すように言った。

 俺はそれに従うほかなかった。

 鋪野司令官が立ち去った後、俺たち3人は顔を寄せて話した。

「ところで、魔力結晶は魔物全般についているのですよね。そうすれば、なぜ火と水を生み出せるのでしょうか。」

この疑問を上げたのは井上だった。

俺はその疑問に答える。殆どあてずっぽうだったが。

「電力は熱も発生させるし、冷やすこともできる。それと同じなんじゃないかな。」

「だとしても、ガスのような燃焼反応と、放水車の様に水を吐くことが同じ器官でできるとも考えにくいです。」

 意見を交わしていると、いつの間にか消灯時刻10分前になっていた。

結局のところ結論は出ず、専門家に任せようという結論に至ったのだった。

 後に分かったことだが、魔物は固有の魔方陣を体内に有しており、それに魔力結晶に蓄積された魔力を流し込み、火炎放射や水流放射を行っていることが解明された。

 ただし、疑問は尽きない。

魔力が結晶化して体内に蓄積される点については、体液に溶けて体外に放出される為、一定以上の大きさにならず、大威力の攻撃が放てないはずである。

 しかし、古文書の記録によると、山脈を融解させるほどの大威力の火炎放射を放てる魔物の存在が確認されている為、様々な仮説が唱えられることとなった。魔力結晶の大きさは魔物の体の大きさに依存する為、大威力の魔法を放ちやすいとする説や、複数の魔物が集まって魔法を発動させたという説も唱えられた。

 白波瀬大尉による追加報告は、その数週間後のことで、厄介な荷物を連れての帰投となった。

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