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対空戦闘

地球換算6月6日 0900 大陸南端より50km沖合

 護衛艦”くらま”はその日訓練を行っていた。

 だが通常訓練にあらず。

「取り舵一杯!」

「ヨーソロー!」

「電動機は黒一杯を維持!機銃員は艦内に退避できるようにしろ!」

「機関室より報告、電動機から煙が!」

現在、本艦は200機以上の無人標的機に取り囲まれていた。

無人機を叩き落とすべく。船体中央のスポンソンに装備された40mm機銃がその伊吹を吐いていた。

命中した砲弾によって、標的機が粉砕されていく。

明かに標的機らは本艦に対したい当たり攻撃を行うそぶりを見せていた。

実際、すでに4機が喫水線近くに激突している。

 しかし、まだまだ標的機は接近している。

127mmが次々吐き出され、接近してきた標的機は爆発四散。

2番砲に設置された57mmレールガンが、はるか遠方47km先の標的機を跡形もなく蒸発させた。

2番砲付近の機銃員も、必死の形相で機銃に取り付いてバリバリと撃っていた。

船体後部のCWISも、両舷に機銃弾の嵐を放っている。

 数分後、対空戦闘訓練終了。

使用弾薬量

127mm砲砲弾が100発。

57mm砲が35発。

40mm機銃弾を1000発。

20mm機銃弾3000発。

対空ミサイル

ESSMを20発。

SM6を5発。

レーザー兵器システムは、高出力のマイクロ波に耐え切れず自壊。

機関電動機はコイル部分に焼損箇所が見られたため、予備電動機に切り替えて航行せざる負えなかった。更に右舷船体中央に標的機が命中した為、外板にへこみの損傷が見られている。訓練でここまで満身創痍になるのも珍しい。

 だが、それほどに標的機による体当たりが苛烈だったことを示している。

艦橋の速力指示器の表示は、第3戦速を指している。

「しかし、ここまでしか速力が出ないのは不便ですね。」

「航海長、そうカリカリするな。」

♢ 

 ―行きはよいよい帰りは恐い。

 ―誰が言ったかその言葉。

しかし、その言葉通りの状況にくらまは陥っていた。

「本艦左舷より魔物の大群の接触を確認した。距離2000。数不明。」

俺は艦長席からその報告を聞いた。

「航海長、機関長。最大船速は。」

「現状速力はここまでです。」

「よし、対空戦闘用意。これは訓練ではない。対空戦用意!訓練ではない!

40㎜機銃操作員は直ちに配置に着け!」

艦長席より見える艦外モニターの様子は、機銃員が銃座についたところを映していた。

「こちら砲雷長、対空戦闘よーいよし!」

「対空戦闘、攻撃始め!」

「トラックナンバー、割り振り完了。001から003まではSM6。

004から009まではESSMで迎撃する。SM6攻撃始め!」

「VLS3から6、ハッチ解放、ミサイルの発射を確認。弾着まで残り30秒。」

VLSより発射されたSM6、しかも3発が陸地より飛来した対空目標に殺到する。

対空目標の数はなおも増え続け、レーダーの処理が追い付いていない。

「ESSM、シースパロー攻撃始め!57mmレールガン、自動射撃開始!」

「シースパロー発射、サルヴォー!57mmレールガン、自動射撃開始します!」

後部VLS甲板より、6発のシースパローが目標めがけて突き進んだ。

そして、射線上にミサイルが存在しないことをレーダーからの情報を受け取ったレールガンが射撃を開始。

 しかし、距離はおおよそ10kmを切ったのである。

「直ちに主砲発射!」

「主砲撃ち方始め!」

だん、だん、という重低音が艦橋前方より響いてきた。

「敵航空目標、本艦との距離5km!」

40㎜機銃の有効射程に入った事を知らせる報告により、CIC内の空気はぴしり、と凍った。

「40mm機銃撃ち方始め!」

僅かに甲高く、そして連続した発砲音が左舷より聞こえてきた。

主砲基部に存在する40㎜機銃も撃ち方を始めたようだ。

そして、艦載機格納庫上部に存在しているCIWSも全力射撃を開始。

 このままではらちが明かない。

俺は静かに言った。「面舵15。方位120に変針。」

「え?」

航海長のとぼけた声が指揮所に響いた。

「面舵15だ!」

「しかし、今転舵すれば撃墜が!」

「命令が聞こえんのか!」

覚悟を決めた航海長は、命令を復唱し舵輪を回した。

「了解、面舵15!」

「方位100に到達後、あて舵2。舵中央に戻せ!」

次々指示を出し、速力を維持しつつ旋回。

報告によると、格納庫後部の機銃は全力射撃を行っている。

 しかし、相手航空目標はなおも追従している。

VLSのミサイルはある程度温存しておく必要がある為、そのハッチは開かれていない。

 船体の進路的には、全火砲を以て撃墜する事はたやすい。

だが弾薬は払底しつつある現状、無駄弾を撃つ事は出来ない。

「砲雷長、このまま泊地に帰投する。」

「後ろの魔物は、どうするつもりですか。」

「本土防衛隊に対処を頼むしかない。」

 しかし、数時間後。

魔物の群れは陸地へと戻っていった。

「対空目標、陸地に反転していきます。」

「対空戦闘、用具収め。」

「了解。対空戦闘、用具収め。」

 本部泊地に帰投後、総帥執務室に乗り込んだ。

「総帥失礼します。くらま艦長田中修です。」

荒々しくノックをすると、総帥の声が返った。

「入れ。」

「失礼します。」

とりあえず乗り込んで説明した。

総帥は暫し考えると、後ろの棚から演習計画書を取り出した。

俺が提出した報告書と見比べると、俺に向かってこういった。

「本当に、その数の標的機が体当たりを仕掛けてきたのか?」

「はい。あれは間違いなく敵意を持ってこちらに接近していました。

実際に、本艦に対し体当たりを行った機もありました。」

更に機銃の増設がなければ、より多くの損害が発生していた可能性も併せて報告した。

 この上申の結果が、多くの艦の明暗を分ける事に成るとは、この時の俺は思わなかった。


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