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友軍合流

地球換算 2035年1月4日 0000

世界名”キュラーム” 中央大洋上 北大陸南端より沖合200㎞

 俺がこの世界に来て約二年。

何度目かになるかわからない練習航海。今回は友軍部隊と共に行動していた。

はるか後方には、霧島を始めとした艦隊が航行しているのだろう。

10回、それが捜索の為航海を行った数である。

 今回が11回目なのだが、どうやらあたりらしい。

「こちらレーダー室、本艦を基準として方位200、高度6000に、レーダー反応を確認。数1。データリンクの接続オンライン。機種YF23。」

「よし、本部に連絡を入れろ。”我深海鮫と接触す”」

「了解です。」

 しかし数分後、レーダー上の機影は後方の霧島含む艦隊へと急に進路を変えたのだ。そのままレーダー上の機影は友軍の飛龍と接触。

「艦長、飛龍より入電。」

「判った。」

「貴組織の戦闘機搭乗員及びその乗機は本艦が預かる。以上です。」

「はぁ。まったく。こう返してくれ、子守を頼む、と。」

 かくして数日後、友軍艦隊と共に泊地に帰投。

八重島鷹接触作戦の成功?の功績により総帥から”くらま”全乗員に対し、4週間の休暇が付与された。

 泊地に帰投後、俺の下にある人物がやって来た。

その人物の名前は白波瀬忠一。特殊部隊隊長として大陸に派遣されていた人物だった。

 「白波瀬だ、入るぞ。」

休息二日目、艦長室に何の遠慮もなく白波瀬大尉は入ってきた。

「白波瀬大尉、何か用か。」

「白波瀬空軍少尉の居場所が分かった。彼女は大陸にいる。」

俺は書類仕事をしながら、そうか、とだけ返した。

「田中。お前は24日本部に向かってくれ。そこで重要な情報が共有される。」

「そうか。判った。」

 俺は一切書類から目を離さずに対応した。

白波瀬文については、少し前にある人物から聞いていた通りの情報だった。

 そして、本部における重要な情報。

それは恐らく、この世界の根幹に関する事なのだろう。

同年1月23日 2300 くらま飛行甲板

 その日、俺と副長は本部に向けて出発した。使用機材はSH60対潜哨戒ヘリコプター。本部迄はおよそ50km、ヘリコでもあっという間だろう。

「艦長、それから副長もお気をつけて。」

「ありがとう、航海長。留守は頼んだ。」

ダウンウォッシュの中、俺と副長はヘリコに乗り込んだ。

側面のスライドドアが閉まり、ふわり、と機体は浮上した。

 本部に到着後、俺と副長は宿泊棟に移動して明日に備えた。

そして迎えた当日0854。本部会議室に入室する。

見回すと、少佐以下の階級章を付けている者はたった一人だけだった。

そして、その人物の所属部隊は燕の徽章を掲げていた。

 そういえば最近、友軍艦に着艦した馬鹿がいたような…。

そして、その人物が今所属している部隊がスワロー隊。

階級章は大尉だったが、顔立ちやその体格から16になるかどうかの年齢であることが分かった。

おおよそ30分後、漸く講義が開始される。

講師はこの世界で生まれ育った人物で、白波瀬忠一が保護した人々の一人だった。

どうやら名前を新しく得たようで、篠原キヨと名乗った。

そして、その人物から語られたのは、この世界の歴史と現在の国家勢力である。

また、過去の偉人であるイリーナ・アーゼンバークの存在についても語られた。

俺はその人物の特徴を聞いたとき、ある一人の人物を想起する事に成った。

確か弘治おじさんと一緒にいた女の人に似た人がいたような…。

 他人の空似かと思ったが、一度根付いた疑念はなかなか離れず、その人のことが頭から離れなくなってしまった。

同年4月5日 1500 本部泊地

 護衛艦くらまは3週間の練習航海を終え停泊していた。

俺は艦長席で、ただ静かに部下からの報告を待つ。

その間に、対空戦闘訓練を行った際の報告書を読んでおく。

 現在、本艦の兵装の習熟は着々と進んでいる。

しかし最近、訓練海域到達前に魔物に襲われることが増えてきたのだ。

航空隊は高度1万メートルを基本的に飛行しており、ヘリ部隊の訓練は本部周辺海域や本部が位置する島嶼部において行われている為問題はなかった。

 ついこの間の演習航海も、魔物との戦闘が9回発生した。

使用した兵器は40mm機関砲のみだったが、それでも弾薬の消費が多くなっている。

 また、大陸に展開する歩兵部隊にはすでに被害が出始めていた。

特に、洞窟を住みかとする魔物との戦闘での消耗率が非常に大きい。

平地においては交戦距離が非常に長くなりこちらが有利だが、洞窟は交戦距離が比較的短いため、お互いにインレンジでの戦闘を強いられることが多々あった。

 「艦長、訓練の報告書です。」「ああ、ありがとう。」

部下から渡された報告書に目を通す。どうやら機関科からの報告書らしい。

機関部については、やはり即応性という観点でいえば大幅に向上しているらしい。だが、それ以外の点ではやはり厳しいものが有った。

特に機関への負担が大きく、新型機関への換装を具申していた。

 (なら、あの機関を用いるか。)

俺は技術課の人間に電話を掛けた。

「ああ、俺だ。田中中佐だ。技術課の新堂大佐は。…少し頼めるか。

例の新型発電機に換装してほしい。」

 後日、俺は技術課の新堂忠雄大佐と面会していた。

「判りました、1週間で終わらせます。」

新堂大佐はそう言って、改装ドッグにくらまを回航する事を指示した。

俺は帰艦後すぐに航海予定表を本部に提出。

 搭載される新型ロータリーエンジンの大きさは全高1m、全幅90cm、長さ5メートル程度だった。これは以前搭載していたガスタービンエンジンよりも小型である。

これを発電機として搭載し、空いたスペースを蓄電池搭載区画に転用。

これにより、レールガンの連続発射能力を向上する事が出来た(毎分10発から30発)。

 また、レーザー兵器の搭載も行われた。

これは艦橋前面と艦載機格納庫上部にそれぞれ追加設置されている。

更に、40mm単装機関砲を4基追加設置さている。

それぞれ1番砲塔と2番砲塔の間の右舷左舷、格納庫後部側面だった。

これら改修の結果、”くらま”は”花魁”というあだ名が付けられたのだった。

 しかし、この改修が後に”くらま”を生かす装備となるのだった。

同年6月2日 1000 本部泊地

 「出港よーい!」

ラッパの音が、泊地に響く。

”くらま”は新型機関に換装後、2度目の訓練航海を始めようとしていた。

錨が海中から引き揚げられ、艦首にその身を預けた。

タグボートに曳かれて、コンクリートの護岸を離れる。

 その様子を、俺は艦長席から見ていた。

「両舷黒半速。」

「両舷黒半速ヨーソロー!」

「タグボートとの接続切ります!」

「甲板員は作業完了次第艦内に戻れ!」

「発電機室より通信。発電機異常なし。」

艦橋には殆ど人がいない、俺を含めても3名のみだった。

 これも大規模改装がもたらした結果である。

 艦内は荒々しい足音と声が艦内を支配している。出入港前の艦内はいつも騒々しい。

「艦長、大陸南端で対空戦闘訓練です。」

「了解した。副長、道中で対潜戦闘訓練、及び対機雷戦の練習も行うぞ。」

 出港から2日後、艦内放送を流す。

「総員、機雷戦訓練用意。配置に着け!」

艦内は一気に騒々しい音で満たされる。

 怒号、足音の2重奏が響いた。

艦尾乾ドックより無人艇2艇が発進。

機雷を想定した浮遊物を無人艇が回収していく。

また、主砲両脇に追加設置された40mm砲がその火力を発揮した。

 機雷戦訓練終了後、対潜戦闘訓練開始。

無人艦載機を用いた潜水艦の探知訓練、及び短魚雷やアスロックを用いた撃破手順の確認である。

無人固定翼機や無人艇に装備されたMAD(磁器探知機)による潜水艦探知の手順の確認だった。

 そしてさらに3日後、対空戦闘訓練。

しかし、それは通常の訓練にあらず―。

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