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鬼ヶ島と命の糸  作者: 桃乃実 明


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14/19

遊園地とオカルト茶屋

「なんだ?なんでだ??俺たちは遊園地にふつうにあそびにきたんじゃなかったのか?!どうしてこーなった??」

一気に異様な空気に包まれたその場所は、すべての扉が閉じられ、方向もわからないほどになっていた。

そして、まるで建物が浮かんでいる様な気持ちの悪い感覚。

もはや、ガンダルンダやノルンダルンだけの恐怖では無くなっていた。

「し、し静子がもどってきてない。」

母の頼子の顔が心配で青ざめている。

ガンダルンダとノルンダルンは和昭に必死にしがみついている。

「「みつけたぞ。永く姿を隠し、神を欺き続けたお前達。自分達のいるべき世界にもどられよ」」

スピーカーから流れてきているように、その空間全体に聞こえてきた声は、直接頭にも響いてきた。

それは男なのか女なのかわからない声質で、ビビりたくはないが、正直、和昭自体もびびってしまう程の声だった。

しかし声の主が言う「神を欺く」と言う言葉に、和昭はひっかかりを感じていた。

「悪いが俺たちはこの店に客で来ただけだ。いきなりこんな事をして、一体お前は誰なんだ?」

びびっていた和昭が、ひとつ唾を飲んでそう口を開くと、部屋が左右にすこし揺れた。

その時、机にしがみつく頼子の顔が見えた。この状況に戸惑い、不安に満ちた表情を浮かべていた。すると、ググッと圧がかかるかのように全体が響いたかと思うと、

「お前、誰に向かってその口を開いている。」

と聞こえた。

途端に和昭の身体に電気を浴びたような衝撃が走った。息がうまくできない。

力も上手くはいらなくなり、身体が机にうなだれた。もちろん小鬼2人の体を抱えるなど出来なくなっていた。2人は和昭の体から滑り落ちそうになっていた。

「「かずぅ!!」」

ガンダルンダとノルンダルンは和昭の服を必死に掴み、声をあげて叫んでいる。

「その者から今すぐ離れよ!ガンダルンダ、ノルンダルン。お前達がいるべきところへ戻るのだ。戻るならば、人間どもを元の世界へ戻そう。戻らないのであれば、この人間達は2度と戻れぬ地へ向かうことになる。お前達!戻ってくるのだ」

和昭に必死にしがみつこうとする2人の身体が、突然ふわりと浮かんだ。

「わぁぁぁぁぁぁ!!いやだぁ!かず!かず!」

ガンダルンダが全身で声をあげて叫んだ。

ノルンダルンは必死に目を瞑り和昭を力強く掴んでいる。

「こいつらはずっと、俺のばあちゃんちにいたんだ!こいつらをずっと放置しておいて、こんっな状況を作って、こいつら連れていくって。神だろうと、道理が違うだろう!!」

揺れ動く室内で、和昭は小鬼2人を引き寄せながら叫んだ。

ガンダルンダとノルンダルンはしっかりと和昭にしがみつく。

「しずこ」

頼子が背もたれにつかまり、体を丸めて心配声でそういった。

静子のことが気になる。

この状況では救出ができない分、心配はふくらむ。

だがどうにもこうにも、こんな摩訶不思議な現象に、どう対応しろというのか?こんな状況だからこそ和昭は力一杯考えていた。

揺れ動く店の中で、叫んでいるような声が微かに聞こえた。

「しずこか?!!」

揺れ動き、身動きが思うようにならない中でガンダルンダとノルンダルンを抱えながら、力いっぱい叫んだ。

「………--…--」

そして今度は唸るような声が遠く聞こえたかと思うと、空間の動きがぴたりと止まった。

「なんだ?どーした?」

いきなりきた静寂に驚いた。

次に何がくるのか不安になっていると、奥から光沢のある白い生地に、青いラインの入った服を着たものが現れた。

どこかで見た絵本の中に出てくる王子様のように、青いマントを羽織っている。それもまたサテンのような生地で光沢があった。

その者は訴えるように、話しながら近寄ってきた。

「お前!いい加減そいつらを渡せ」

和昭の目の前に、その者は立った。

男性的な容姿だ。

だが綺麗な銀髪で、美しい青い目には銀色の縦の筋が入っている。

顔は血の気がなく白い。

服や着こなしは王子というよりも、昭和のアイドルのようだった。

和昭はその風貌に目を奪われ、落ち着きを取り戻した。

そしてあまりの愉快さに我慢の限界もあり、思い切り吹いて、そして高らかに笑った。

もちろん受けた者は、気分のいい者ではない。

「何がおかしい!!」

その男は言った。

「いや、お前の格好が…」

一気に恐怖から抜け出した和昭は、目の前の、何者かもわからない者に対しても、特に面白い以外、なんの感情もわいていなかった。

「お前、この状況がどういう事かわかっているのか?そしてお前の抱いているその2人は、この世のものではない。こちらに戻せと言っている」

和昭はその言葉聞いてさらにイラついて言い返した。

「何が戻せだ!人を恐怖に陥れるようなことをして、はい分かりましたって、家族をすんなり渡すと思っているのか?!」

「家族?お前たちが勝手に家族にしただけだろう。それなら私も勝手にこの娘を家族にするぞ。なぁ、静子」

ボールを撫でるように右の手のひらを上に向けると、透明の球体が現れた。

よく見れば、その中には小指ほどに小さくなった静子が入っていた。

「あぁ。なんてこと」

長椅子に横になり、椅子の上部に掴まって座っている頼子は、横目でそれを見ていった。そして

「そんなの脅迫じゃない!神様がそんな事していいの!静子返さないんだったら、こっちだってガンちゃんとノルンちゃん、返すわけないでしょう」と付け加えた。

その男はまだ少し考え、

「ちょっと場所を変えよう」

と言った。

そーいっ途端、物凄い圧がかかり、吐きそうほど苦しくなった。

とても目が開けてられない。

なんで思っていたらスッと楽になった。

ゆっくり目を開けると、そこには見慣れた風景があった。

「ば、ぁちゃんち?」

いつのまにか、祖母の家の居間に全員が移動していた。

立っていたのはあの男だけだったが、アイドルの衣装ではない。

スーツ姿の、見たことある奴がそこにいた。

「鷹一おじさんとこの拓馬!?」

がそこにいた。

「そうだ、鷹一様秘書小出拓馬だ。お前ら2人が余計な事してくれたおかげで、事が面倒になったんだ。この家に小鬼2人、閉じ込めておいてくれればよかったものを、連れ去からこういうことになるんだ。」

拓馬になった姿に、和昭はもう上から目線になっていた。

「やばいぞ拓馬。全く意味がわからん。お前、女にしか興味ないんじゃなかったのか?」

拓馬は恥ずかしそうに対抗して応えた。

「そんな事はない。私はこの鬼2人を監視しろと命じられた1人。真面目にやっていた。なのにどうだ、お前達のおかげで、この鬼2人が、人のあるべき時間を狂わせに狂わせてしまった。もう連れ戻さなければ、魂の調整が効かなくなる。俺の立場も危うい。」

すると、和昭の横で、空間移動に耐えられず寝ていた頼子が目を覚ました。

ぼやけた目をこすりながら、周りを見れば見慣れた空間に、夢でも見ていたのかと困惑していた。

「おばさん、夢じゃないからね」

和昭が言った。

「静子!!」

静子もその隣で横たわり、気持ちよさそうに寝ていた。

「拓馬くん?!」

頼子も気づいた。

「良いから、鬼2人を返せ!もうこいつらはこの世界に長くいすぎた。こいつらも充分楽しんだろう。俺の心が広すぎたのが罪だったが。

和昭小鬼2人から手を離せ!手を離さないと、お前も向こうの世界に飛ぶことになるぞ」

ガンダルンダとノルンダルンは和昭にしがみついたまま寝ている。

あの縦横無尽に飛び回る2人が、寝ているにも関わらず、グッといまだに和昭を掴んでいる。

その姿を和昭は理解していた。

だからこそ余計に、和昭はこの小鬼ふたりを離したくなかった。

子供のように我儘と言われてもいい。

大人だが、どんな抵抗でもしようと思った。

すると、さっきまでの恐怖はどこに行ったのか、頼子が拓馬に向かっていった。

「拓馬くん!この子達はダメ!連れて行ってはダメよ!」

「なんであんたが…??」

「だめよ!だって可愛いもの!知り合ったばかりなのよ!連れて行くなんてやめてちょうだい!2人は私の子よ!!」

「頼子さん違うでしょ…」

「私の子よ!」

「…」

流石の拓馬も呆れていた。

「仕方ない。今まで様子を見て来たけれども、もう無理なんだ。こいつらのやって来た事は人間には喜ばれても、沢山の命を左右してしまった事は、神の世界ではダメな事なんだ。その命はその命だけのものだ。悪いがこのままでいるなら容赦なくやらせてもらう」

和昭と頼子はそれを聞くと、拓馬の予測できない話に、なんだか鳥肌が立つ程何が始まるのか怖かった。

拓馬は右手の平を大きく開き、その手を高らかに上にあげた。すると、ものすごい光と共に、和昭にしがみついていた2人の小鬼の指が解かれ、身体が浮き上がった。

「ここにある二つの小鬼の魂よ。今、我の元へ引き寄せられ、あるべき下へ還れ。汝ら2人は2度とこの地を踏むことなく、いるべき世界にてその身の役割を自覚せよ。」

まるで磁石のように、2人はその右手のひらに吸い寄せられた。

「あっ!!おい!!」

和昭は手を伸ばしたが、届かない。

頼子もがっかりして、それをみているだけだった。

「もう、終わりだ」何かを察知した和昭は

咄嗟に左手を床につけ体を前に、惰性をつけると拓馬のマントをつかんだ。

和昭の察知したとおり、拓馬はそのまま消えていき、和昭もそれに連れ立っていった。


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