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幸せと不幸は大抵突然起きる②

「あら。珍しいこともあったもんだ。」

ぞろぞろきたみんなの顔を見て、と言うよりは、ほぼそれは和昭に向けての言葉だった。

親戚に対して、早々体の動くタイプでは無い和昭がそこにいたことは、この叔母だけではなく、ほどんどの身内がそう思うところであるだろう。

当の和昭は、その言葉が自分に向けての言葉と知ってか知らずか、黙ってみんなの後ろについていた。

「おばさま、体の具合はどう?」

静子が声をかけた。

「別にどおってことはないよ。寝るのが飽きてるくらいだよ」

「そう。」

静子はクスッと笑った。

「和、あんた久しぶりにあった病人に何もないのかい」

何も言うつもりもなかった和昭は、みんなの後ろでただ、だまってたっていた。

正直このまま気づかれることなく、過ぎていって欲しいと思っていた。

「お大事に」

そう一言いうと、

「やっぱおれ、外でてるわ。」

と、病室から出ていってしまった。

「本当にあの子はつまんない男だねぇ。あーいうつまんないところ、兄さんにそっくり。」

おばさんはそういうと、静子母を見た。

「ねぇ(より)ちゃん。さっきから連れてるその子たちは誰の子?まさか、静子じゃないでしょうね!!」

「やだ!おばさまっ!!」

静子は驚いて言葉を返した。

すると静子母も

「あるわけないじゃない。静子のことは親の私より、(とも)ちゃんの方が知ってると思うけど」と、朝子を見ながら鬼の子2人を抱き抱えた。

「着替えも持って来たことだし、帰ろっか」と、朝子の見舞いそっちのけで、静子母は帰る方向へと変えてしまった。

「ちょいまち!その子達の答えは?」

静子母は、妹の朝子に本当のことを言いたくなかった。

「和昭くんの知り合いのお子さんらしいわよ。事情があって、静子もしってる人だから、2人で交代で預かってるらしいのよ。可哀想よねぇ」

強欲だ。

良くこんな嘘が出てきたものだと、静子は心の中で思っていた。

「なんか、いろいろ納得できないような話ねぇ。」と右手で自分の右頬を触り始めた。

(あーなんかやばい)

静子は心の中でそう探知した。

追求方の叔母は納得するまで聞きたいタチなので、こう言う仕草を始めた時は、大抵面倒な追求の長期戦になる。

そんなのは御免なので、やはりすぐさま帰る事にした。

「じゃおばさま、またきますね。お大事に。母さん和昭さんが待ってるから早く行きましょ」

手を降る小鬼2人を抱えながら、2人は逃げるように病室を出た。

「あんた察しがいいわねぇ。」

と静子母は笑っていた。

病室を出ると、休憩室で待っていた和昭を迎えに行った。

まだ仕事の残る静子母に手を振った。

名残惜しく小鬼2人に手を振る静子母に、小鬼2人は元気に手を振りかえした。

そして4人は和昭の車に乗り込み、帰って行った。

見えなくなるのを確認すると、静子母は自分の仕事場へと向きを変えた。

女の子がさっと足元に近づいてきた。

「看護婦さん、あの子達とお友達なの?」

「そうね。お友達よ」

下から見上げる可愛い彼女に、静子母は彼女の目線まで腰を落とし、そう返した。

女の子はそれを聞いてほっとしたように、

「看護婦さん、あの子に病気治してくれてありがとって伝えて欲しいの」

と、いった。

「私ね、あの子のおかげでお家に帰れる事になったの。学校にも行けるのよ。だからお願い。必ずありがとうって伝えてね」

そう言うと、彼女は嬉しそうに手を振り、病室に戻って行った。

(小鬼ちゃん……)

静子母は何かを思うように、彼女の向かった方向を見ながら佇んでいた。


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