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6話 パーティーを組むとは書面上の話

 てんやわんやの朝を越えて。

 気づけば昼が近くなっているようであった。

 流石に一日中宿にいる訳にもいかない。資金は自ら稼がねばならないのだから。


「とりあえず……改めてパーティーを組む? ってことだけど……今までみたくモンスターを狩って、アイテムをうって……って感じなんだよね?」

「基本的には……あっでもギルドに届出がいります」

「届出?」

 また行政みたいなことが。フィリア曰く、冒険者同士でパーティーを組む場合はその届出が推奨されているらしい。あくまで推奨であり義務ではないが、パーティーを組んだことを知らせておけば何かあったときにまとめてパーティーメンバーへと連絡がもらえるらしい。

 それ以外にもメリットがあるらしいがそこはフィリアも知らぬ領分のようである。


「私ソロばかりなので……」

「そうなの……?」

「私は……ほらその……」


 無意識に彼女の古傷を再び抉りかけていた。

 思わず話を反らす。


「と、とりあえずギルド行ってみようか」

「え、ええ……はい」

 そうして二人で宿を出た。


 新ためてみた街の風景はやはり異世界的というか、見たことない景色であるけれどどこか見知った感覚がある。さんざっぱらアニメで見てきた影響だろうか……。

「…………」

「ミヤトさんどうかされました?」

「いや……なんていうか、俺目立ってない?」

 街の風景と共に映る人々。そこからなんとなーく視線を感じるような……。気にし過ぎか、シンプルに隣にいるのがフィリアだからだろうか……。


「ううん、私のせいでしょうか……そ、それなら……」

 すると忽ちフィリアが自動的に落ち込みだす。中々に彼女は扱いが難しいかもしれないな……。

「まぁ気のせいかもしれないし、気にしても仕方ないからギルドに急ごう」

 実際理由はまだ分からないわけだし。


(そういえば気配察知なんてスキルがあったよな)

 彼女もとい彼と分かった一件でみた鑑識スキル。それとは別に存在していたスキルとして言語認識と気配察知があった。言語認識は恐らくこうしてフィリアと喋ることが出来たり、自分のステータスであるとか鑑識結果に出ている日本語でも何でもない文字が読めること、に関係するものだろう。


 気配察知については何も分かっていない。こうして人から視線を感じるのがソレだといわれたら納得してしまうかもしれないほど。こっちもまぁ判断するには材料が少なすぎるし、もしかしたらフィリアが何か知っているかもしれないからまたあとで聞いてみるか……。


 ギルドまでたどり着く。昨日きたばかりというになんだかまさしく”異世界”という感じがして心なしかテンションが上がる。中にいる人たちもまさしく冒険者然とした風体が多く、こちらもなんというか、らしい。


「パーティーの届出ってやつはどうやれば……」

「私も初めてなので受付の人に聞いちゃいましょうか。一番安牌ですし」


 そうして受付へ。

 パーティーを組んだことを告げるとそれ用の紙とペンを手渡される。その間にあれやこれやと説明を繰り広げられでもするんじゃないかと思ってたがむしろ逆でこちらが記入を続けている間、ずぅっとにこやかな笑顔でもって此方を見つめていた。寧ろ気が散るというものだが、そんなこと言えるわけもなく。


「とりあえずこれで大丈夫ですか?」

「確認します」

 元の世界でもそうだったが、こう書類提出の段階に感じる緊張感は何なんだろうか。不思議な感覚である。

 しかしまぁ記入することと言われてもパーティーの人数と名前、それから存在するならパーティー名を書くくらいのものであったから、記載不備も何もなかった。

「はい、確かに受理いたしました。それではパーティーについての説明をば」

 そう意気込んではあれやこれやとその場で説明を貰う。ざっくり流し聞きでしかないけれど、要は複数人いることで受けられる依頼に変化が出ることがあるらしい。

 それからパーティーメンバーはお互いがお互いの身分を証明する役割を持っているとか。

 つまりはそれこそ関所で言うと一人でパーティー全員分の手続きが済むということらしい。

 他にも別の街に移ったときだとか色々と説明された気がするがあまりにも流暢な喋り過ぎたもので一周回って聞き取れていない……がまぁそこまで重要な話でもなさそうだから大丈夫だろう。


 それから手続き後に折角だから、と二人向きの依頼を幾つか斡旋された。

「モンスター討伐系でも採集系でもお好きな方で構いませんが……単価が高いのはやはりモンスター討伐……特に数が必要なものですかね」

 モンスタ―討伐の中でも幾つか種類に分けられていて、それこそ言われた数が必要なものとシンプルに敵が強すぎるものの二つが基本のようである。

 特に複数人向けなのは前者だろうが、こちらは時間さえかければ一応達成できるので単価は少しばかり安いか……。


「フィリア、どうする?」

「私はどれでも……このレベルなら多分問題ないので」

 サラりと凄いことを言われた気がするぞ今。

 しかしまぁ昨日みた魔法がその一かけらであるとするならば問題ない……のか?強さや依頼単価の基準は今一つ分からないが、金はあるにこしたことはない。

 モンスター名も書いてあるがなにがなんだか状態であったから高そうなものを適当に選び受けることにした。


「はい、ではスネークフラワーの確保という事でよろしくお願いいたしますね」


 スネークフラワー。名前の通りであれば蛇と花ではあるが、一体どんなモンスターなのやら想像がつかない。

「適当に選んじゃったけど……どんなモンスターなんだろう」

「名前の通り花に擬態した蛇ですよ。森の奥地でしか見つけられない上に、植物に擬態するから見つけづらいんです。単価が高いのも場所の遠さと見つけづらさじゃないですかね」

 話だけ聞くと少し危険に思えてくるけれど大丈夫だろうか……いやフィリアの説明が担々としているわけだし危険性はあまりないか……もしくはあったとしてもフィリアからすればそこまで警戒するモンスターではないという事か。


「蛇って危険なんじゃ……」

「まぁ噛まれるときは噛まれますが……気を付けていればどうってことは……」

 なんとたくましい言葉だろうか、とてもこの華奢なからだと顔つきからは想像できない頼もしさである。それとも冒険者とは男女にかかわらずこんなものなのだろうか……いやフィリアに関しては男だけども。


「まぁスネークフラワーなら私も何度か狩ったことありますから早いとこ片付けちゃいましょう。私もあまりいったことない場所ですから、時間かかっちゃうかもですし」

「そうなんだ?」

 昨日いたアモールの森とは別の方向にある森にいるとか。フィリアのことだからこの街周辺くらい走りつくしているのかな、とか勝手に思っていたが……。

「いやぁ……親から少しばかり止められてまして」

「??」

 しかしまぁフィリアの余裕そうな表情を見ているとなんだか落ち着けるような気もしてくる。

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