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74話 巨体の冒険者、オージャ

「トロール……?」


 あまりにも巨大な人間に思わず素の感想が漏れ出てしまう。本当にそう見える体躯をしているのだから許していただきたいものだ。


「……フム?」

「いやいやいや、ミヤトさん普通に人です! 冒険者です! トロールなんかではなく……」

 俺がポツリと無意識下で呟いた言葉に両者が反応する。完全に何も考えずにいってしまったわけだが、普通に失礼極まりない。


「なるほど! この体をそう表現するとは面白い!! はははは!!」

 がしかし相手の反応は想像以上にカラッとしていた。何と言うか気持ちの良い笑い方である……がしかしまぁ五月蝿いのはどうにかならないだろうか。やはり耳が痛くなりそうで。


「……と、違う違う。つい興奮してヒュージボアをこの辺りに投げてしまったが……大丈夫だったか?」

 そのヒュージボアを探すかのようなしぐさをしつつ。

「投げた……ですか? ヒュージボアを」

「ん? おお、そうだぞ。中々に凄まじい重さだったがリキを入れればどうってことない!」

「ど、どうってことない……」


 フィリアは大男に問いかけたものの、その回答に唖然としてしまっている。声にこそ出していないが、それは俺もレンも同様だ。それはあまりにも規格外故に仕方ないと言えよう。ヒュージボアがどんなものかは先程見えたあの姿と名前から、サイズ感とか規格を想像するのは容易である。逆に言えばそれを投げ飛ばしたと言うこの男に驚きを隠せない。

 でもここまで巨体で筋骨隆々なら魔法と組み合わせたりすれば不思議でもないのか……?いやフィリアも驚いてるしな……うーん……?


「っと、こんなところで駄弁りに来たのではない。さっきのヒュージボアのアイテムを集めねば……」

「ああ、それならそこに……」

「おお、コレか!! よしよし」

 そう言いながら大男はアイテムたちをかき集めていく。あれだけの巨大なイノシシである。故に落ちる素材の数も大きさも別格なのだが……この男の手であればさほど違和感のないサイズに見えてしまう。これが錯覚というやつか。本来なら俺やフィリアがも問うものなら普通に両手が必要なレベルなのに。


「分けてやれなくてすまないが、これも冒険者の掟だからな! それにその見てくれ……恐らくそれなりの腕だろう? だったら食い扶持くらいは困らんよな」

「え、ええ、まぁ……それに、それくらい気にしていませんが……」

 わははと笑いながら、男はアイテムを拾い終えた。アイテムストレージの中にしまって、その場を去ろうとする。

 フィリアもそこそこ優秀な冒険者であろうはずだが、彼には気圧され続けている様子だ。まぁ俺もだしなそのあたりは。


「ねぇ」

 帰ろうとする男に対して、ずうっと黙りこくっていたレンが話しかけた。

「む?」

「どこから来たの」

「どこからも何も……この辺りの森なら大体がリーオの人間だろう? ……ははぁ、なるほどな!! 別の街から歩いてきたクチだな!?」

 彼の大声に対して無言でこくり、と頷くだけのレン。何とも対照的なやり取りだろうか。しかし、その質問は確かに今の俺たちにとってはとても助かるものかもしれない。しかも男の口からリーオという言葉が、地名が聞こえたのだ。


「案内してほしい」

「ふむ……それなら後ろをついていくと良い。少し森の奥地まで来てしまってはいるが……そう遠くはないだろうからな」

 そんなわけで歩き出す。ちらっとレンがこちらを振り返って軽くドヤ顔をしてきたような気がする。確かに一応丸く収まりはしたけれど……そもそもこんな森で迷子になりかけていたのはレンの所為でもあるんだが……まぁ一旦置いておこう。


「こっちだ。来るといい……そういえば、名を名乗っていなかったか?」

「あ……確かに」

 道案内までしてもらうことになってようやく気付いた。

「ええと、エストから来ました。俺がミヤトで、こっちがレン、そっちがフィリア」

「おれはオージャだ。ただの帰り道程度ではあるがよろしく頼む」

 握手……はこの男としたら下手したら手とかつぶれそうだしな、相手から求められない限りはやめておいたほうがいいかもしれない。

 そんなわけでついぞ先日、一時的にパーティメンバーが増えたところにさらに一時的にパーティーメンバーが増えるかのような形になった。


「さぁて行くぞ!」

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