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67話 お礼

 翌日になる。すっかり日は昇りきっていて清々しい朝である。それでもって天気も無事に回復してくれた様子だ。

 若干地面がぬかるんでいることは気になるけれど、まぁ多少歩く分には問題ないだろう。何より彼女の魔法でもって再び転移すればそんなこと関係なくなるわけだし。


 しかし何というか夜の間土の中で寝て過ごしたのは何とも蝉のような感覚である。空は飛べないけれど。

 何にせよ、兎にも角にも朝である。

 土で作ったあの空間から這い出て、最初に伸びをした。陽の光を一身に受けて、気持ちのいい限りである。

 俺と同じように彼女――レンも地面から出てきて伸びをしている様子。早速もう帰れるかどうか確認しなくては。

「もう転移魔法使えますかね?」

「ん……まぁ」

「良かった! それなら早速……」

 普通に考えたら1日かかえる、というのであれば再使用に24時間必要なのではないか……と思わなくもないがこの世界はゲーム的なシステマティックな世界である。日付が変わる、をトリガーにしても不思議ではないか。

 何にせよ使えるのであればそれに越したことは無い。早い所街へ戻って……と思ったのだが、何やら彼女は辺りを見回している。何か探しものだろうか。


 辺り一帯を見終えたかと思えば、

「ちょっとだけ付き合って」

「え……あ……はぁ」

 そう言ってレンは俺の服の裾尾をぐい、と引っ張ってくる。何をするつもりなのやらと思いつつも一応彼女の後ろをついていく。しかし特定の目的地へと向かって歩いているとかそんな様子には見えない。

 何か平原の周辺をただ歩き回っているかのような……。落とし物……という風にもみえないけれど何だ。


「あの、さっきから何を……」


 声を掛けようとした瞬間、すっと腕を横に伸ばして静止させてくる。ここで止まれという事らしいけれど……やはり彼女のしようとすることが全くもって分からない。

 何事かと軽く頭を斜め上にだして確認しようとしたところ。


 ドウッ……。


「へ……?」

 突如として何もなかったはずのその場所に、モンスターが出現する。

 土煙を巻き上げて。


 サイズ感自体は大したことないけれど、あまりにも唐突な出来事すぎて少なくとも俺は戦闘態勢が全くもって出来ていない。流石に彼女だって……。

 アレ?


 何か……おかしいというか違和感があるような……。

 そんなことを考えているうちに、そんな瞬き程度の時間のうちに光景は動く。

「……終わり」


 出現したはずのモンスターは倒された。


「え? え……?」

 時間にしてどれほどだろうか。分ではない、秒。たったそれだけの時間だった。協力しなくては、決意を抱いたあたりで終わった。

 それから彼女はモンスターの方へと近寄る。忽ちのうちにドロップアイテムへと変化していくそれを眺めつつ、終わると同時に手に取った。

 かと思えばこちらの方に振り替える。


「まぁ大した額にはならないかもだけど」

 そういってモンスターから手に入れたアイテムを此方へ渡そうとしてくる。

 半ば強制的に俺の手へと押し付けようとしてくる。

「一体何のつもりですか……」

 幾ら何でもコレを受け取る権利は俺には一切ない。少しでも加勢しようかと思ったけれど、そんな暇一秒たりともなく、ただ平然と処理されてしまったからただただ傍で見ているだけで終わってしまった。

 呆然唖然。


「つき合わせたお礼」

「お礼って……」

 確かに時間的な拘束はあったけれども、それでも受け取れるかと言われると……。

「いや、受け取れないですよわざわざ」

「……そう、折角狩ったけど」

 どこか、しゅんとした様子に変わる。変に断らず受け取るべきだったのかも知れないけれど無償の施しというのもな。しかしこうタイミングよくモンスターが出てくるとは……ちょっと待ってくれ、そうか、そうか。


「あの、なんでここにモンスターが出るって分かったんですか?」

 先程の一連の動き、無駄がないとかそういう話を超えている。シンプルに予知の領域のようにも見えた。全てわかっていたから身構えて動くことが出来たかのような。

 特に、モンスターが出現する前の移動や俺の前に手を出して静止させた行動なんかがそう見える。

「気配察知あるから」

「い……いや確かに俺もありますけど、反応しませんでしたし……明らかに出現する前から分かってたような感じで」

「気配察知の差」

「差……?」

「気配察知にもステータスやスキルと同じく書いてないけどランクがある。その差」

「レンさんの程度だとどこまでわかるんですか……?」

「ある程度近づけばどこにモンスターがスポーンするか分かる」

 チートだろそれもう。しかし成程これが答えと言う訳か。


 少しずるいとは思いつつも、裏を返せば俺も何かしらの要因で彼女と同じランクに達することも不可能ではないはずだ。生まれ落ちた時点で決まりきっているステータスという可能性もゼロではないけれど、ゲームのシステムチックな世界であるならこの辺りの性能差は埋められてしかるべき要素な筈だ……。

 問題はそれをどうやって鍛えればいいのか、という事になるけど。


「まだ日が浅くて弱いから仕方ない」

 そう言いながら彼女は俺の肩を叩く。多分彼女なりの慰めなんだろうけれど、弱いから、は不要だろうが。泣くぞ。

「ま、まあ……理屈は分かったので、戻りましょう。もう転移使えるんですよね?」


「そうだね……戻ろうか」

 彼女はぐい、と俺の腕を再び引っ張った。


「……転移」

普通にログインが面倒になってました

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