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48話 自称乙女の勘ってやつ

「話を聞いた感じ、チェーニさんは多分ミヤトさんのことが気になっています」

「……?」


 頭に浮かぶ大量のはてなマーク。果たして今何と言ったか。

「つまり私のライバルになると言う訳です」

「!?!?」

 二回目の言葉はこの通り。チェーニも思わずびっくりした表情に。なんで変なフィルター通した発言にするかね。しかしまぁ一番目の時点で言葉自体は理解できた。……のだけれどそれが本当である、と信じれなかったのである。

 いやだって、そりゃあそうだよね。そんな都合のいい展開があってなるものかという話で。


「それは……チェーニさんがそう言った……ってことで良いんだよね?」

「いやそうでは無いんですが……色々聞いていたら、そうとしか思えず」

 そんなことってあるんだ……。

 いや、しかしその聞いてみたの全貌を聞くまでは断定できない。というかするのが怖い。あまりにも早計と言わざるを得ないから。


「ええとですね……」

 そもそもフィリアがチェーニの異変に気付いたのは件の食事の際の話という。確かにあの時フィリア自身も何処か様子がおかしかったな。アレはこのためだったという事か……?


 曰く、チェーニのその違和感でもって一度尋ねてみることにしたという。なんでそれでわかるんだよ。

「乙女の勘というやつです」

 お前男だろ。


「まぁそんな訳でミヤトさんには少し席を外してもらった訳ですよ」

 それから彼女は話を続ける。俺が狩りに出かけてから二人になり、食器の片づけをしながらド直球に質問したらしい。

 ずばり、俺について、どう思っているか……と。小細工一切なしのどストレートな質問。とは言え、それ今のチェーニに聞いても無駄な事なのでは? そんなもの否定以外ありえないだろ。

「それこそミヤトさんも言ってたじゃないですか。内容ではないところに現れると」

「えっ……」

 確かに言ったけど……。

「……私の経験則と勘から言うとこれは完全に惚れてる感じです」


「いっ……いやっ……そ、そんなこと……っ」

 チェーニも彼女の言葉を否定する。フィリアの言葉を聞いた上だとこのどもり方も勝手に好きな人を前にしての緊張に思えなくもない……けど幾ら何でもそれは思考回路として都合が良すぎるだろう。流石にきしょすぎる。何をどうやっても彼女のソレは、その言葉遣いはただただ男性を前にしているが故の緊張以外の何物でもないハズだ。

「そ、そうだって! 流石にこればっかりはフィリアの考えすぎでしょ! ねっ!? チェーニさんッ!」

 俺も同調するように否定の言葉を放ちながら、チェーニの方へと顔をやり再び同意を求める。……のだが。


「は……い……そ、そう……ですねっ……」

「そうだっ……ん?」

 あれ?何かこう、声音こんな感じだったか?

 いや、それこそさっきと同じくフィリアの言葉で勝手にプラシーボを感じているだけだ。そうに違いない。

「そういう所ですよ!!」

 しかしそんな俺たちの反応を見てフィリアは不満気。これが彼女の言う惚れている感じのするヤツとでも言いたいのだろうか。いやしかし俺は決して騙されない。これはそういう恋愛のフラグでも何でもないハズだ。異世界に来てからモテ期なんてなんの冗談だ。ラッキープレイス異世界の占い番組なんてあってたまるか。

 やはり俺としては”惚れている”という刷り込みによる勘違い以外の何物でもないと信じたい。

 というかそうじゃないと俺もそうだがそれ以上に俺に惚れていることにされたチェーニが不憫でならない。

 だからこそ俺が賢明にフィリアの言葉を否定しなくてはならない……。


「いえ本来ならもっと根底から否定の言葉が漏れているハズなんです。恐怖であれば、こんな恋を知った乙女のような声音にはならないのが私の経験に基づく意見です」

 だからその経験多分って己自身のものだろ。そしてその己自身とは男じゃねえか。

「と、とりあえず俺に惚れてるかどうかは置いておかない……?」

 多分三者三様で今気まずいだろ、この話を続けるのは。少なくとも俺は大変気まずいから一刻も早く別の話題で塗りつぶしてしまいたいし。


「そうはいきません。ここでなあなあにしておくと少なくとも私の今後に関わりますから」

「ええ……」

「だってそうじゃあ無いですか!? ミヤトさんが狙われているとあれば、はいそうですかと受け流してはいられませんよ! 私が第一正妻候補だと思ってますからね!!」

「せいさっ……」

 正妻も何も男だろがい。……いや子供がどうとか考えなければ良いのか?……とそういう話ではなく、そもそもその考え自体フィリアの主観によるものでしかなくて、言うなれば偏見であり思い込みに過ぎないと思うんだけど。


「その結論に至った乙女の勘ってやつが信用できないんだけどなぁ……」

 しかしまぁ確かに。なあなあにしておくことのデメリット自体は存在する。単純にしているのは問題の先送りだし。フィリアが”チェーニが俺に惚れている”という主観バリバリの意見を言った訳だが、これにより無意識にその感覚、意見が刷り込まれる可能性があるというわけだ。流石にそれは避けるべきか。とは言えフィリアはこの調子だし、かといってチェーニをどうにか……と思ってもそもそも彼女はフィリアを除く男との会話は困難である。それと同時に俺も下手に話続けてたらこちらの感情もどうなるか分かったものではない。勿論チェーニが嫌いと言う訳でも逆にフィリアが恋愛的に好きという訳でもないけれど……。

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