42話 決意新たに
「ミヤトおにーちゃん何してるの」
「あっ」
部屋の外で盗み聞きみたく立っていたところ、我慢ならなかったのか部屋から出ていたらしいミネに見つかった。まぁ部屋出たらすぐに俺がいるわけだから、見つかるのは時間の問題だったわけだけど。
「ひぃっ!?!? そ、そ、そこ……そこに……い……ぃる……?」
ミネの一言により、俺という存在を近くに知覚したということか、チェーニの言葉が途端にしどろもどろになりだす。失礼ながらちょっとばかり面白い……興味深いという方向で思ってしまった。
少なくとも彼女のソレは気配みたいなものを感じ取って起こるものではないのは先程の一件で理解した。では姿が見えなければ問題ないか、というとそうではなくて、やはりというべきか何と言うべきか近くにいる……と分かるだけで男性恐怖症によるソレは発症するようだ。
兎にも角にもミネに見つかってしまった以上はここにるわけにもいかないので、再び部屋に戻った。出たり戻ったり忙しい限りだな。
俺が入るなり再びチェーニはフィリアの背中へと隠れてしまった。その行動は相変わらずだし、それをしたとて身長差のせいで隠れきれていないのも相変わらずだな……。まぁ少なくともチェーニがフィリアという男の存在の背中に隠れられている辺りもう男という判定ではないんだろう、フィリアのことは。ていうかそうでなきゃあんながっしりと男の腕掴んで背中に隠れて……ってできないだろうし。
というか逆にあそこまで密着されて、フィリア側は全くもって何ともないんだろうか……。
だってあの密着具合明らかに当たってるぞ。
一挙手一投足、その仕草すべてが女性っぽい……とはいえ一応男ではある。女性にあれだけくっつかれて何にも反応しないで済むもんなのか、と度々フィリアが本当に男なのか疑わしくなる。あの日、あの鑑識スキルで見たソレがバグなんじゃないかと思う。
「おおきいおねーちゃんさっきからフィリアおねーちゃんの後ろに隠れてどうしたの?」
「ああと……あの人はちょっと……ね」
果たして男性恐怖症何て言葉、どう説明したものか。概念としては存在しているだろうけれど単語自体はこの世界には存在していなさそうだし。
取り敢えず一旦適当に濁しておくことにした。
「???」
当然そんなぼやっとした表現で年端もいかぬ少女が察せる訳もなく。頭の上にハテナが浮かんでいるかのような表情をして首をかしげている。まぁ無理も無いよな。
兎にも角にも、これ以上ここにいる理由もないし、折角治ったのであれば親子水入らずの時間を与えるべきだろうということで3人で家を出た。試しにフィリアの背中に隠れるという形であれば一緒に行動できるだろうか……と思って試みたけれどこれは何とか出来るらしい。あくまで何とか、というレベルであり横一列なんてものはとてもとても無理だったが。
移動はままならないがその場にとどまることは出来るらしい。というか移動ができない辺り単純に緊張で足がすくんでいるとかそんなんだろうか……。
ミネ達の家を出て少し歩いた道端にて再集合。良くも悪くもチェーニがぴったりフィリアの背中にくっついているお陰で、3人が散り散りに……という事もなかった。良いのやら悪いのやら……。
「とりあえず……どうしようか」
「どう……とは?」
今後の行動の展望について。少なくとも俺はプランゼロ。ああして啖呵みたいなものをきったフィリアには何かあると思うけれど……。
「いや……チェーニさんをどうするか……っていうかシデロスに頼まれたじゃん。それどうしようかって」
「……本来の依頼はあくまでパーティを組んでくれ、ってだけですよ。だったらどうにかする必要なんて」
そう言えばそうだったか……いやたとえそうだとしても、それで処理して完了としてしまうのは流石に人の心がないというか……。
「……というのはまぁ流石に冗談ですけど。ミネちゃんのお母さんの助けてもらった恩もありますしね。治したいかどうかは本人次第ですけど」
そう言いながら自らの背中に隠れているチェーニに話を振るフィリア。家を出てから此処まで一言もしゃべっていないな。
「わっ……わっ……わた……しのせぃ……で……て、手間をとっ、とらっ……せるのは……」
答えた内容的にやはり噛み噛みではあるけれど当の本人はどこか消極的。まぁその消極的という部分が、どちらかと言えば俺たちに対しての申し訳なさ……みたいなところからきている言葉っぽくはある……が、それを言い訳にして逃げてるだけという可能性もまぁあるか。
まぁそれでも表面上の言葉としては、その男性恐怖症そのものをこのままでいい、としているわけではないと受け取っておこう。
彼女が男性そのものを拒絶していないのであれば、その気があるならば何とでもなるはずだ。
「少なくとも、現状から変わりたい気持ちはある……んだよね?」
「うっ……ひっ……は、は…………ぃ」
やはりつっかえながらではある……が確かに、俺の言葉に対して工程をしてくれた。ちゃんと男性として緊張し、恐怖している存在の言葉に。
「うん、チェーニさんもこの調子なら少なくとも前向きにいきましょう。……まぁ私この辺りは門外漢なのでどうしたものか……というところではありますが」
同じくこういった手合いは門外漢であるから、どう転ぶかは分からないけれど、やれることをやるのみだ。




