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40話 小さくとも明るい者

「いらっしゃい! ……あれ、フィリアおねーちゃんは?」

「後からくるよ。例のお母さん治してくれる人と一緒にね」

 先に家に上がらせてもらう。フィリアたちとはそこまで距離をは足て歩いたつもりはないけれど、一人で歩いていたから勝手に歩くスピードは速まっていたかもしれない。


 そんなことを考えていたら姿が見えてくる。

「あっ……来た来た」

「ミヤトさん、お待たせしまし……」

 最期の文字を言うより先に気になる事象が。こちらの……俺の存在に気づいた彼女、チェーニがスッとフィリアの背中へと隠れてしまった。実際にはさっきのシデロス以上に身長差があるから隠れていると言いつつ隠れちゃいないけど。頭というか顔だけ無理やり隠している感じ。


「ぁぅ……す、す……ぃ……せん……ど……どぅ……ぅしても男の人を見ると……」

「私は大丈夫だったじゃないですか」

「フィリアさんは……女の人にしか見えないので……何なら自分よりずっとかわいい……」

 フィリアがかわいい事についてはまぁ同意であるけれど、しかし依然として声は震えている。距離があるからか、それともフィリアの背中に隠れているからか、ファーストコンタクトに比べるとちょっとはマシになったかな。ちょっとだけ。

 少なくともシデロスの読み通り、フィリアという男性らしくない見た目であれば問題という事ではあるらしい。これで所謂男装女子という男性みたいな格好の女性であればどうなるんだろう、とか幾つか興味は湧くけれど、そんなもん湧いた所で俺と会話もままならないのであれば意味はない。


 取り敢えず今すぐこちらに慣れてくれ、という訳にもいかないので暫くはフィリアを介して……という事にはなるかな。幸か不幸かフィリア越しかもしくはフィリアとの会話という形であれば男性恐怖症による声の小ささエトセトラは多少ではあるものの改善されている気がするし。


 とはいえ。

「まぁこの様子なら俺は別室にいた方が良いかもね」

「そうですね……申し訳ないです」

「いやフィリアが謝る事じゃないでしょ」

 そういうやりとりをしていると、フィリアの背中側からも僅かに小さい声がする。

「ぅ……す……すぃ……ごめ……さぃ……」

「ああ……いやチェーニさんが謝る事でも……こういうのって克服するの大変だっていうし」

 周りに異性に対する恐怖症を抱く人間については心当たりはないけれど、それでも大変さだけなら想像に難くない。


「……お姉ちゃん誰?」

 ミネが尋ねる。そうか治してもらうという話こそすれど彼女の名前やなんやは知らないもんな。


「彼女はチェーニさん。ミネのお母さんを治してくれる人」

「おかーさんを……治してくれる?!」

 その言葉を聞くなり彼女の口角があがる。嬉しそうだ。


 さてチェーニともども家に上がってもらう。彼女の緊張採択としては俺は別室……というより寝室から出た廊下のところで待機していることにした。チェーニには別室にいるとか適当な事を言って。無駄に俺の存在を意識されて注意力がそがれては困る。かといってミネの母親の顛末は気になってしまうので。

 それにさっきの移動中は遠くからだったから俺がいない時はどんな感じだったのか分からないし。


「お邪魔します。こちらは例の魔法使いのチェーニさんという方で少し男性が苦手でして……」

 フィリアが俺に変わって母親へと説明をしてくれた。俺がこうして部屋から出た理由も含めて。


「お……お邪魔します」

 先程の俺との会話とは雲泥の差。こんなにちゃんと声出る子だったんだなやっぱり。本当にひどい男性恐怖症か……。会話の内容的にもミネの母親とのものに見えるから人見知りのソレとも違う。


「どうでしょう……?」

「とりあえず鑑識で状態を……うん……? これって今何か魔法かかっていたり……レフェクティオとかその辺の……」

「! そうです。気休め程度にしかなりませんが、無いよりはマシだろうという事で」

「た、確かに気休めですね……レフェクティオはあくまで回復力を高めるものです……。病の根源は回復の類では消滅しないので……」

 チェーニは見ただけでそこまで言い当てて見せた。成程、シデロスが太鼓判を押すだけのことはあるらしい。


「ただ……これくらいなら私の魔法でな、治せます」

 その言葉を言った後は早かった。

「ええと根源の位置が肺の右側あたりなので……この辺ですかね……リチェーニエ……これで……」

 すぐさまミネの母親に魔法をかけていったらしい。

「どうでしょうか……?」

 ある程度光が収まったところで、チェーニがそれらしい言葉を発したのが聞こえてきたので俺も部屋の中に入った。


「……!」

 その姿を見てみるとどうだろうか、先程とは明らかに顔色が異なっている。

「え……終わった……んだよね?」

 あまりの短さにそんな質問を投げてしまう。

「そう……みたいです」

 時間にして3分くらいしかたっていないだろう。彼女がこの家に入ってから出考えても10分とかそこらもない。本当に簡単に終わった。

 これで本当に終わりかどうかは疑うべくもなく、ミネの母親の顔色を見れば明瞭だ。

「ええ……すっかり元気よ。今までのが嘘みたいな……」

 当の本人もこんなコメントをしているあたり本当に回復し、解決したのだろう。

「ほ、ほんとになおったの?」

 しかしまぁ俺を含めて信じ切れていない人間がほとんどである。ミネにしたってこの様子。

 それに対して母親は頭を撫でながら再び答える。

「大丈夫、お母さんもうすっかり元気だから」

 そう言うと、彼女はすっとベッドの掛布団を横へおいやって、ベッドを出てその場に立つ。

「うん……ちゃんと動くわ……体も重くない」

 手足を軽く動かしている。フィリアの回復魔法でも食事なり何なりの軽い動きであれば問題なかったけど、チェーニはそれ以上の効果である。

一人称も敬語も同じなので結構区別が難しい気がしてきた。一人称くらいかえれば良かったかな。

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