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24話 灯台下にぼたもち

「フィリア、それコイツにぶつけて!」

 カコがそう指示した。彼女の杖の上でずうっと渦を巻いているその魔法だ。

「はいっ!!」


 ドォぉぉン!!!

 巨大。そう言い表すのが正しかろう轟音が響く。

「何だこれ……」

 広大な土煙が舞い、それが止んだところにあった光景は、前方一帯がまるで隕石か何かで抉られたような惨状である。クレーターだろこれ……。

「後ろからきてるモンスターまとめて倒せればと思ったけれど、流石にやりすぎたかしらね」

 しかしまぁこの爆風のおかげだろうか雨の姿はどこへやら。空はすっかり快晴である……が、雨とフィリアの水の魔法でもって地面はぬかるみ切っている。

 正直迷子になる事以上にテンションが下がるかもしれない。


「……ごめん」

 突然、カコがこちらに向かって謝ってきた。何て言うか、あまりにも意外なことで、俺もフィリアも呆気に取られてしまう。

「何ていうか……上手く言えないけど……アタシが結局迷惑かけたわけだし……今だって、正直アタシが間に合ってなかったら危なかっただろうし……その」

 しかし相も変わらず謝罪の言葉すら不器用であった。とは言え、俺もそうだし、フィリアにも今はこれで十分どころか十二分だ。許す許さないというところはとっくに超えている。

「いえこちらもカコさんに嫌味を言い過ぎましたから……お互い様というか……で」

 と思えばフィリアもあまりうまく言葉を紡げていない。やっぱり似た者同士かもしれないな。

 そんなもじもじとした様子のフィリアの言葉を聞いて恥ずかしがっているのか何か改めて言いたげなカコ。


「……あと、アンタたち、カコ”さん”ってやめてくれる? 少し恥ずかしいというか……距離がある……から……」

 呼び方の話だった。確かに俺に対して、でもあるが常に敬語且つ敬称つきであるし、俺もずっと”カコさん”と呼んでいたか。

「多分フィリアは無理だな。俺に対してもずっとこの調子だし」

「そうですね……どうしても癖で抜けないと言いますか……」

「……それならアンタだけでも変えてもらえる? そっちのをフィリア呼びしてるんだから大丈夫なんでしょ?」

「え……まぁ、それならえっと……カコ……で」

 しかし改めて呼ぶと少しばかり気恥ずかしさみたいなものがあるな。

「ア、アタシの名前呼ぶくらいでそんな緊張しないでもらえる!?」


 さて、カコとも合流出たわけであるから、こっから再スタートである。仲直りっぽいことは出来たけれど、結局迷子っぽい状態であることと、カコが目的としていたトリープの居場所はわかっていない。


「正直に言うわ。迷子よ」

 カコについてもこの調子。

「場所以外の情報って無いの?」

「宝箱の情報とか、箱がある場所の様子の情報ならあるけれど、結局場所が分かんないんじゃ意味ないと思うわ」

 つまり、その宝箱とやらが見つかればある種のゴールということにはなるか。しかしまぁ都合よくその辺りに転がってるわけないだろうしな。


「じゃあ箱がある場所の様子……という方は?」

「一応”閉ざされた場所”っていう話だけは耳にしてる。けれどもこの山の中じゃあ該当箇所が多すぎて役に立たないと思うわよ」

 閉ざされた場所……。穴の中とか……もしくは洞窟とかだろうか。それこそ雨が降った際に俺とフィリアが雨宿りとしていた場所なんかも該当するだろう。であるとしたら、多少探す候補が減っている、というだけであまり意味がないだろうか……。

「……そういえばさっきの洞窟みたいな場所ってどうなったんだ?」

 フィリアの魔法によって辺り一帯がまるで焦土と化している。ならば当然あの洞窟もどきにしたって多分屑と化して――。

「あれ?」

 目をこする。少なからず俺の目の前から暫くの距離はクレーターかのように抉られていて、件の洞窟もその範囲にギリギリ入っていた筈だ。

 しかしてどうだろうか、不自然にもそのクレーター範囲の中に崩落した岩でできた瓦礫の山のようなものがある。そこだけ、唯一。


「フィリア……あそこって俺たちがいたところ……だよね?」

「ええ……別に威力をそこだけ弱めた、とかはしてないはずですけど……」

 妙な違和感がした。思わず再びフィリアに頼んで魔法の力でもって岩石たちをどかしてもらう。


「あっコレ……!!」

 そこにあったものを見て真っ先に叫んだのはカコであった。

「宝箱……?」

 所謂ゲームや漫画といったフィクション世界でよく出てくるような宝箱の見た目をしている。あからさまにここから何かアイテムが出ますよ、と告げているようなデザイン。


「アタシが聞いてたものと同じものだわ」

「ちょ、まっ……」

 そう言うと、宝箱を開ける。こういう時、たまにダミーが混じってるものが鉄板だと思うがしかし彼女は特に躊躇う様子もなく、一気にがばっと開いた。俺が静止する暇もなく。


 そうして開かれた宝箱の中に詰まっていたものは……。


「……これなんか違うような」

「明らかに宝の山ね……」

 トリープなるものがどんな形をしているかは不明である。けれども目の前にあるソレは違うはずだ、ということが本能的に理解できた。


 金銀財宝。所謂宝の山。

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