22話 どいつもこいつも方向音痴
「アタシが教えたんだから、当然よ。ていうかロックタランドスくらい倒してもらわないと困るわ」
ドロップしたアイテムを集めているところにどや顔でそんなことを言ってくるカコ。邂逅から僅か1日足らずだけれども、しかしそれが”いつもの調子”という感覚がしてしょうがない。
「こちとらめちゃくちゃ必死だったんだぞ……」
「知らないわよそんなこと。あたしなら3秒あればやれるわね」
流石に盛ってるだろ。
次ロックタランドスとやらが再び現れたら一人で討伐してもらうからな。それに今回は初見の敵という事と、初めてのソロ格闘戦だから、というだけ。恐らく次回、次々回と繰り返すうちに3秒とはいかずとも数十秒くらいには縮められる気がする。根拠は無いけれど。
「フィリアならさっきのどれくらいで倒せるの?」
ふと気になってフィリアに問いかける。カコはプライドからは足を盛るだろうけれど、フィリアであればそんなことはないはずだ。
「私、武器は使えませんから……」
「いや流石に魔法でいいよ」
流石に魔法であれば、ということで聞いているつもりだったが。
「ううん、さっきのであれば魔法一つで終わるので……8秒とか……でしょうか」
「はち……」
あまりカコと性格的に変わらないのかも知れない。もしくはフィリアなら本当だったりするか。彼女の魔法の才覚は底知れない。直感的な話でしかないけれど、今の時点ではまだまだ抑えているんじゃなかろうか。
デバフがかかっているのか、意図的に出力的なものを弱めているのか分からないけれど……。
「と、とりあえず……コレで探索再開……ってことだよね?」
「え……まぁそうね。……アンタ、そんなこと気にしてたの?」
「大なり小なり、迷惑かけてるわけだし」
「それはアタシの台詞よ」
そう言うと、カコはくるっと方向転換した。
「ほら、アイテム拾い終えたんでしょ? さっさと行くわよ」
■
「今更だけど、トリープだっけ。それって具体的にどこにあるの?」
この山の麓、というところまでは聞いている。しかしそれまでだ。一言で山の麓と言ってもあまりにも広大すぎる。故にどこにあるのか判別がつくのだろうか。
いっそのこと大変であることは理解しつつも、山の頂上と言われた方が場所としてはわかりやすいだろう。じゃあ山登りするかと言われると困るけど。
とは言え、ずうっと彼女についていく形で歩いていた訳だから流石にある程度の目ぼしとか方向はわかっていると思うけれど。
「どこまでが本当かはアタシも知らないけれど、一応どこにあるか、は分かってるわよ」
そう言いながら地図を広げて見せながら指で場所を指し示す。最初山に入ってきた位置からだと北西気味だろうか、兎も角ここにあるのだとか。
とは言え彼女が直に見たわけじゃないからどこまで信用に足るかは分からないが、これ以外に宛てもないからアレやコレヤいうのは野暮だろう。というか彼女もそれを理解した上で、のようだし。
まぁ目的地が分かっているというのはありがたい限りだ。そこまで愚直に歩くだけだし。
(どれくらいの距離なんだろう……明日とかには着くのかな)
……。
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「……道、間違えてないよね?」
地図と実際の距離感が異なる、というのはさして不思議なことではないはずだ。ましてやこの世界は自分のいた世界に比べて地図の正確性は劣るだろうし。
「まぁ地図が間違っているか、アタシの仕入れた情報が間違っていたかのどっちかでしょうね、あるとしたら」
その言葉的に少なくとも道は間違っていない、という事らしい。最低限、地図は読める女だと思って勝手に全幅の信頼を置いていたけれど、しかし方向感覚がよろしくない、とかそもそも山の中であるから正常であっても方向感覚も失っている、とかそんな可能性もあるのか。
「地図上だとどの辺り?」
しかしせめて今地図上でどこにいるかさえわかれば、目的地とトランキーロの場所とで大体の距離感が、地図が不正確とは言え掴めるのでは……。
「地図が役に立たない可能性がある以上、考えても無駄よ多分」
しかし彼女はそんなことを言って拒否する始末。
「迷ったときは素直にそういった方がいいですよ」
すると横からフィリアがそういった。明らかにカコへの当てつけのような言葉である。しかしまぁそんな台詞をフィリアが言うのか、という気持ちにもなる。そんな嫌味な事を言うというマインド的な話ではなくてシンプルに言葉自体の意味――まぁつまりは、フィリアは地図が読めず空元気的に励ましていた御仁である。その癖にそんな台詞を吐いてはブーメランだろう、と。お前がソレ言うのか、と。
「地図が役立たずってだけよ、アタシ自身が迷った訳じゃないわ」
しかし当然、カコも簡単には折れないし認めない。どこに欠陥があったかはいざ知らず、しかし辿り着けていないのは事実である。その上で地図の確認を拒否する……となると、まぁカコ自身は迷子の身だろうな。
……と待て、そんな呑気な事を考えている場合じゃない。今は何としても戻る道を確保するのが大事になってくる。それから余裕があればカコの目的であったトリープの場所。
「と、取り合えず道に迷ったにせよ、地図がダメだったにせよ今の現在地を確認して、戻る道だけでも確保しないと……」
そう思って提案したのだけれど、カコからは
「どうやって戻る気? そもそも今の位置分からないんじゃ戻っても更に迷うだけじゃない」
と返された。そりゃあそうかも知れないけれど、であれば歩き続けることも尚危険ではないか。
「まぁ戻りたいなら止めはしないわよ。アタシはアタシでトリープ探しするだけだから」
「いやパーティーここで解散って言うのは……」
「元々アンタたちはアタシに巻き込まれただけでしょ? だったら解散なんて万々歳じゃない」
彼女の悪癖がだんだんと悪い方向へ動いていってるのが分かる。素直になれない、というただそれだけの性質とプライドが。
「ミヤトさん、良いですよ無理に引き止めなくても」
それでもってフィリアまでカコのいう事に乗っかる始末。
「ほら、フィリアもそう言ってるんだし、丁度いいでしょ? アンタたちは頑張って帰り道探せばいいわ。どうせ、目的のものだってアタシが必要としてるだけだし」
「そうかもしれないけど……」
言葉で引き留めるも虚しく、カコはこちらに背を向けてどこかへ走り出してしまった。




