表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/83

18話 戦いのセオリーを今になって知る

「ちゃんと来たわね」


 次の日である。昨日の別れ際、カコから指定された場所……ギルド入り口付近にてフィリアと共に集まった。俺たちが到着するころにはとっくにカコは着いていた様子である。

「カコさん、早いね」

「まぁ一応あたしがリーダーだもの、それくらいはね」

 どこか少ししおらしく見える。変な所で律義なんだな。

 ちらっと横にいるフィリアの様子を見た。表情からは不満そうな部分は伺えないけれど、内側では中指立てたりしてるんだろうか。


 兎も角、三人が集まったという事でギルドに入り、カコの言っていた許可証とやらを貰いに行く。

 動物皮で出来た紙擬きに依頼内容とカコの名前、それからパーティーの人数として3人と記載されているようだ。

「こちらをプルトス山脈入り口にて提示頂ければ入山できますので」

 とのこと。入山許可証と言われるとなんだか本当に登山じみてくるな。あっちと違って何かあっても助けが来なさそうだけど。


 ■


 本当に件の許可証とやらを見せただけで山の中へ入ることが出来た。入ってしまえばあっさりしているというか、そこらの森と雰囲気は変わらないな。

 とは言え山である。いずれ空気が薄くなったり高所による身体への影響が……。


「そもそもあたしたちが行くのはプルトス山脈の中でも低地気味な場所よ」


 ……そう言えば山の麓と言っていたか。低地であればそれほど登山としての危険は少ないと思うけれど、逆に探索範囲は広くなるから別の意味で大変か……。

「それでも他の冒険者の報告だと、高地となるとモンスターも限られる。逆に高地に住めないモンスター達が低地に集まるらしいわ。それでもあたしの敵じゃあいけれど」

 他にも危険はあったらしい。成程住める範囲が狭くなる分、それ以外の地帯に広がっている……ということか。

「ミヤトさん、大丈夫ですよ。私がいますから」

「……アンタ回復役かと思ってたけどもしかして魔法使い?」

「え? ええ、まぁ」

 フィリアの言葉に反応するように、カコが尋ねた。ヒーラーとかメイジとか何の話だろうか。ヒーラーは回復とかそういうのだっけ?

 メイジは確か魔法使いとかだっけか……。


「ミヤト……だっけ? アンタジョブは? 武器はストレージの中かしら?」

「ジョブ?」

 今度はこちらへ問いかけてくる。流石に今の仕事とか職歴を聞かれてるわけはないだろうから、ゲーム的に言うところの役職か。

 しかし一括りで冒険者だろうにそんなものあるのか?

 などと考えていたところ段々とカコの表情が唖然としたものに変わる。


「は……? そんなことも決めずに冒険者してるワケ!?」


 彼女曰く冒険者として戦う場合ジョブを決めておくのがセオリーだという。近距離戦闘、中距離戦闘、それから中距離からのサポート。

 厳密に分けられていたりするものではなく暗黙の了解的なモノらしいが。

「じゃ、じゃあフィリアもジョブとかちゃんとあるの!?」

「私は中距離ですよ。魔法メインですし」

 横にいたフィリアはさらっとそんなことを言ってみせる。あなた何も教えてくれなかったじゃないの、などと問い詰めたい気持ちも湧かなくはないが、しかし彼女たちからしてみればこれが当たり前ということだろうか。

「見たところ武器らしい武器もないし魔法メインなのかしら?」

「まぁフィリアに教えてもらいながら……ではあるけど」

「じゃ、成り行きで、ってことね……」

 何やら呆れたような反応をされているがこちらとしては右も左も分からない状態が故であるし多少は大目に見てほしいものだが……。

 まぁそれでいうなら彼女はそもそも俺が異世界人であることを知らないわけだけど。


 突然、カコは歩く足を止めてこちらを振り向いた。

「それなら本格的な調査に入る前に、ジョブについて少し教えておくわ。アタシもアンタの戦い方とか知っておきたいし。基本的には近距離、中距離、後方支援の3パターンね」

 そう言うと背中の鞘から剣を取り出してこちらへ切っ先を向ける。

 一瞬身構えこそしたが、しかし同時に攻撃の意図はないことも読み取れた。


「あたしは近距離。……厳密に決まってるわけじゃないけど、一般的には戦士とかね。自分の得物が届く範囲で戦う。基本的に誰でもやろうと思えばできるモノよ」

 剣……。そういえばアモールの街を出たときに購入したきり……ストレージで眠っていたか。

 使おうと思えば使えるんだけれども、身のこなしだとかそもそもの利便性だとかで結局魔法に頼りきりになっていた。


「それからそっちのフィリアが中距離手。魔法使いとか弓兵がそれって言われてるわ。近距離手の後ろから矢だったり魔法だったりで戦うの。こっちはモロに才能とかセンスの世界ね」

 才能の世界……。ちらっとフィリアを見た。

 彼女を見ていると確かに、と思えてくる。自分のそれと比べると単純な練度の差で片付けられない何かがある気がするのだ。

「……てことはカコは魔法は……」

「はあああ!? もしかして魔法の使えない雑魚って言いたいわけ!? そんなんじゃないわよ、近距離の方が性に合ってるってだけで!」


 少しばかりのいらぬ発言で思わぬ地雷を踏み抜いてしまったらしい。

 しかし彼女の説明だけを聞いているとふと思うことがある。

「近距離手には攻撃当てないように、中距離から攻撃って難しくない?」

 そういうとフィリアの方から補足のように説明が入る。

「まぁ人を避けて攻撃を当てる、ってなると難しいですけど……ある意味それがカコさんの言うところのセンスの一つですから。それに必ずしもお互いに攻撃を当てる必要もないですし」

「当てる必要がない?」

「そりゃそうよ、結局は目の前のモンスターさえ倒せればいいんだもの。魔法で敵を追い込んだり急所を狙いやすくしたり……逆に近距離手が敵を引きつけて背面とって魔法で倒す、とか定石よ」

 なるほどまさしく連携の御業。しかし、それを説明しているふたりともパーティーだの連携だのには縁遠そうなのは皮肉なものである。

 それでもって不安もある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ