表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/83

17話 彼女の理由と彼の理由

「それでプルトス山脈はもう行くの?」

「行ける訳ないでしょ、許可証発行中なんだし」

「許可証……?」

 新たに聞く概念に戸惑っているとカコが若干呆れたような声を漏らされた。

「あそこに入るにはギルド依頼っていう形の許可証がいるのよ。入り口には門番もいるもの」

 という事らしい。詳しく聞くと、山脈など一部の危険な探索場所においては、下手に人が入って怪我などの危険があってはいけないからとそもそも入る場所を限定して、最低限の安全を確保しているそうな。まぁそれで下手に被害者出たらギルド側も体裁が悪いだろうしな。それに変に管理と化されてなかったらカコみたいに勝手に入りかねない人間も現れるかもしれな……いやそもそも山だよな?


「山なら無理やり入れたりしないの?」

 例えば洞窟みたいに穴でも掘らない限り入り口は一つ……みたいなところとは違って山である。

 門番とやらがいる箇所とその周辺くらいはある程度強固に守られているかもしれないけれど、いずれは抜け道のような場所位見つからないのか?

 そう思って聞いた所、

「一応山だから無理やり森を抜けて、とかできるけど正攻法じゃないやり方はあたし嫌いだから」

 という事らしい。

 ……一人でここの調査を受けようとしたり、勝手に他人を巻き込むソレは正攻法の内とでも言うのか。まぁ後者は兎も角、前者はちゃんとギルド側が認めたのであれば問題ないといえば問題ないか……。


「それであんなやり取りをしてたの?」

「そ。実力認められさえすれば一人でもいけんじゃないかしらって思ったけど頭が固くて駄目ね」

 三人以上と言う取り決めが良いのか悪いのかは置いといて、しかしそう決まってるなら従えばいいだけではないのか、とも思うが。

 少なくとも理不尽であったりその条件を満たすのが難しい、という話にも見えないし。危険だということなら猶更。

「あ、あたしの実力に見合う人間がなかなかいないだけで……」

 こちらの言葉に対して慌てた様子で返すカコ。その割に俺らは初めましてだと思うけど、とは言うべきじゃないだろうと思って喉奥にしまいこんだ。隣にいるフィリアも俺と似たような表情をしている。多分思っていることも似たような感じだろうな。


「兎も角、プルトス山脈調査にはギルドの許可証が貰えるまで準備期間よ。早ければ今日の夕方くらいにはお貰えるけど、流石にそんな時間から調査は遅すぎるから明日ね」

 そんなわけで今日のところは各自別れて明日の用意ということになった。俺とフィリアは先ほどギルドで出来なかったアイテムの買い取りをしてもらいに再びギルドに向かってから宿を取りに向かう。


「本当に良かったんですか?」

「ああ、カコさんのこと?」

 宿にてフィリアが尋ねてきた。昼間にも同じような事を聞かれたけれど、フィリアの中では納得出来ていなかったらしい。

「ええ……まぁ。ミヤトさんがそれで良い、と選んだのなら文句は言わないですけれど、回避しようと思えばどうとでもなるのでは? 人助けと言えば聞こえはいいですけれど今のところ体の良い人数合わせでしかないでしょうし……」

 ……いやこれは明らかに納得が出来ていない、という言葉一つで片付くものではなさそうだ。

 すると急にフィリアは何か気づいた風な表情をしたかと思うと、忽ち不安げな表情にかわる。

「……まさかミヤトさん……!?」

「ん……?」

「カ、カコさんみたいな性格の女性がタイプなんですか!? で、でしたらわ、私もすぐに……」

「いやいやいや!? 待って何か勘違いしてない!?」

「で、ではもしや、ああいう体つきの人が……それは私には流石に……いや魔法であれば何か一つくらいあるはずなので旅程を少し変えて……」

「まず俺がカコさんのこと好きみたいな前提から一旦ぬけだしてくれ!!」

 唐突な暴走に思わず声を荒げてしまう。少なくとも今のところはカコに惹かれているだとかってことはないのは確かだ。

 例え顔の良さこそ認めることは出来ても、流石にあの性格では難がありすぎるし。

「そもそも、カコの件は好き嫌いで選んでないから」

「で、では一体どうして……」

 まぁ具体的な理由を聞かれると困るけど……ぼやっとした理由しかない只管感情論からくるものだし。


「ううん、上手く説明はできないけど……まぁほっとけなかった……が一番近いのかな」

「ほっとけなかった……ですか?」

「上手に話せなくて、人といざこざがあった……とかって俺も思うところがあったから……」

 俺に関して言えば今は大分まともになっているし、カコの性格からくるソレとはベクトルが異なるけれど、所謂コミュ障という括りで言うなら当たらずとも遠からずだろう。

「少なくとも、彼女自身に変えたいって気持ちがあるなら協力してあげたい」

「……ミヤトさんはお人好しですね。そこまであの人を気に掛けたくなる気持ちは私にはやっぱり分かりませんよ」

 先ほどよりは落ち着いた様子ではあるけれど、それでもフィリアの表情はどこか不満気に見える。


「……フィリア、もしかしてカコのこと苦手?」

「にがっ……ええと……まぁそうですね。得意ではないタイプであることは確かですけど」

「あはは……」

 確かにカコとフィリアじゃ性格も結構違ってそうだしな。フィリアはどちらかと言えばザ素直って感じである一方でカコはわかりやすく素直ではないという、まぁ真反対なもの。言うなら水と油か。

「少なからず性格ならフィリアの方選ぶからそこは安心して」


 カコに対して先ほどから少し嫌そうな態度気味だった理由はそういうことか。シンプルに性格面のウマが合わなさそうという事と、勝手な嫉妬心。

 前者は兎も角後者はまぁ解決した……と思うけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ