prologue2
――遡る。
俺は死んだ。
いや、実際に死んだのかどうか、それは定かではない。けれども感覚として強い衝撃にあい、意識が消えたことは覚えている。
確か……誰かを助けようとして、道路に飛び出した。でも今こうして体がある。のはなぜだ?
自分を出来る人間だと思ったことはない。故にというべきか、他人にアピールできる魅力が存在するだなんてろくに思った記憶がない。
それ故に俺に愛だの恋だのの恋愛経験は皆無であった。自分の意識が途切れるその最後に流れた走馬灯だってやっぱりくだらない記憶ばかりで、色恋沙汰の欠片もなかった。
片思い位ならばしたことがあるけれどフラれるのが目に見えてたから、特に告白した記憶も無い。だからまぁ……何というか、今となってみれば片思いだったけれど当時は好きだとは思わない事にしていた……みたいな感じのものが多い。
兎にも角にも、俺には無縁なものであった。そのままに、恋愛のれの字も知らぬ間にその生を終えたのだ。それでも、最後に誰かを救えたのかもしれない。
それならばまぁ満足とはいかずともまだマシといえるだろう……きっと。
そして。
「うわぁぁぁ?!」
死んだと思ったその矢先、早くも二回目の死を遂げた。目の前に巨大な猪が現れて、その出来事に対する衝撃一つで目の前は真っ暗になった。