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13話 アモールの街から

「フィリアの方は買い物終わったの?」

「はい、買いたい食材はあらかた……あとは食器類ですかね」

 そう言って近くにある店へとそそくさと入っていった。店の看板には皿がデザインされた絵と食器と読める文字。フィリアのあとに続いて入店すると、文字通り木製の皿が幾つか置いてある。

「食器買うの?」

「ああ、私の分はありますけど……ミヤトさんの分はありませんし……」

 そう言ってはそそくさと幾つかの食器を選んで店員の方へと持っていく。昨日今日じゃ見た記憶がないけれど……まぁ殆ど肉焼いて食っていただけだから、不要と言えば不要か。フィリアなりに気遣った可能性もあるが。

「……ていうか俺用の、ってことなら金は俺が……」

 先ほど自分の服を売ったばかり故、幸か不幸か手持ちもある。

「いえ、大丈夫ですよ。私がそうしたいだけですから。そもそも今はパーティーを組んでるんですから、私が払っても、ミヤトさんが払ってもあまり変わらないですよ?」

「ぬ……それもそうか……」

 結局先ほどのギルド依頼による報酬にしたってそうだが寝食を共にするという事であれば俺とフィリアの持ち金を足したものからそれは支払われるわけだし……。

 とは言え感覚的には奢られてばかり、となっているのでもどかしさがある訳だけど。少なからず心のどこかでは借りができた、という気持ちだからいつか返さねば……。


 ■


「ミヤトさん、今のところ服だけですけど良いんですか?」

 先ほどの店を出てフィリアがいった。彼女は只管に満足気である。俺の食器買っただけだろうに……。

「何か、これ!……ってものが浮かんでこなくて……」

 食器選びの最中に軽く聞いてみたがやはりナイフだなんだの類も既に持っているらしい。

「一応外でも余裕があれば料理くらいしますし」

(料理出来たんだ……)

 女子力を感じる……というとフィリアの見た目も相まって少しややこしな。まぁそうでなければわざわざ野菜を買いにいったりしないか。

「あとは武器とか、って考えたけど、相場とか分からないしそもそも魔法で今のところどうにかなっているからいらないかなって思っちゃって」

「剣とか槍とかってことですか? ミヤトさんの適性的には近距離戦闘でもいいかとは思いますが」

「それって、剣とかの方が適正あるってこと?」

 そう聞くとフィリアは少しばかり申し訳なさそうな顔になりながら返答する。

「ええと……まぁどっちも変わらないと言いますか」

「……」

 確かに自分のステータスはどっちもどっちだったけれど……。それこそ剣や弓といった分かりやすい武器の適性が武力に換算されているかは分からないとは言え魔力1に対して武力2という五十歩百歩な数字だ。これが単純計算で魔力よりも武力が2倍高い、っていう意味合いなら今すぐ鞍替えするけれど流石にそんな小学生じみた仕組みじゃないだろう。


「ただ、私魔法しか扱ってこなかったので、知識は多少あれど教えたりは出来ないですよ?」

「まぁ最悪振ればどうにかなるかも……と」

 あまりにも他の冒険者たちには失礼なものいいだろうけれど。

「……そうだ扱い方もそうだけど、フィリアって武器の値段相場とか分かったりする? もしも分かるならアドバイスとか……」

 なんて言ったけれど、想像通りといえば想像通り、彼女は首を横に振った。否定である。

 であれば店員の善性を信じて買うしかないということか……いやそもそも店に入るよりも先に疑うのも良くないよな。


「まぁ良いか。武器だけ買っておこうと思う。まぁ魔法で事足りてるけど、何かあったら便利かもしれないからさ」

「分かりました。武器屋となると……さっき服を買ったお店の近くですかね、この辺りだと」

 フィリアが示したのは先ほど俺が外だけ見ていた店である。そんな訳で来た道を戻って店の前まで。

 さっきは本当に武器がいるかどうか、くらいを考えてすぐさま店からは離れたわけだが。

 今度は中に入って展示物を幾つか眺めた。

 そもそも武器を買う、なんて漠然と決めたにしても種類が多すぎてどれを選べばいいのやらという状態。それこそ分かりやすい所で言うならば剣があるけれどしかし剣と一口にいってもサイズ様々用途様々。

 所謂短剣と長剣の二つがあるわけだが、その2種類からさらに細分化されているのが展示を見て理解できる。


「どれを選べば……」

 当然ながら剣もしくはそれに類するものを含めても経験はない。精々子供のころ傘をそれっぽく見立てて振り回していたくらいだろうか。

 だからこそどれが適正があるのかは全くもって不明。どこまでいっても勘で選ぶ他無い。


 そもそも剣だけの話をしているが、店の中だけでも槍だの斧だの種類様々。悩み始めたら文字通りキリがないだろう。

 とは言え店にあるもの全ての中から選ばなければいけないと言う訳では当然にない。それこそ俺が持てないものについては対象外。シンプルにサイズが大きすぎて体に合わないものとか、明らかに重そうだと感じられるものとか。結局振り回せなければ宝の持ち腐れであり、無用の長物。

 ……まぁそれらを除いたとしても結構数あるわけなんだけど。


 まあどこまでいっても勘になってしまうという事であれば、デザインとか持ちやすさで選ぶ他ないよな。

 そうなると僅化ながらの憧れもあるし、剣がいいかな、やっぱり。

 その中で扱いやすそうとなるとやはり長すぎない程度の剣か。

「それなら……これかな」

 大体自分の腕と同じ程度くらいの長さがある剣。重さでいっても振り回せない程ではないし、レンジの面で言っても最低限はあるだろうし。


 そうして支払いを済ませる。昼食から相対的に考えたら大体1万円くらいだろうか。それが高いのか安いのかはやはり分からない。

 店員もなんというか不愛想という感じで、こちらが物を買うというにさしたる興味も示さず、淡々と処理された。

 しかしまぁ最低限、武器と服は購入できた。

 あとは――。


 ■


 そうして次の日。幾つかさらに買い足した。

「こうしてみると、冒険者って感じがしてくるな……」

「元からミヤトさんも冒険者じゃないですか」

 俺の言葉にフィリアが笑う。確かに肩書上は冒険者となっていたけれど、これはあくまで気分の話である。

「形から入るってやつだよ」

 改めてバッグの中身を確認する。これも旅支度の中で新たに購入したものである。サイズ的には彼女と同じものだ。ウエストポーチ程度のサイズ感しかない割にそれでもストレージの容量が大分増えている。

 そもそもこの身一つでもストレージの概念が付与されて普通じゃ持てるわけがないだろ、という量やものを持てるから十二分に不可思議だが。


 兎も角、バッグも手に入った。

 中には新しく入手した広大な地図。フィリアが持っていたものとは別のものである。

 彼女が持っていた地図だとここいら一帯しか確認できないから目的地としたエストとやらの位置も分からなかったので用意したものだ。


 その地図をバッグから取り出して改めて位置を確認した。現在地、アモール。そこからずうっと東に行くことでエストにつくわけだ。道中にも幾つか街があるとのことでそこを中継地点とする。

「目的地はエスト……で中継地としてトランキーロが一番最初に寄るところかな」

「そうですね、東側になるので門の方も向こうからでしょうか」

 相変わらずアモールの中だけなら頼りになるんだよな……。


 兎も角、出発。

次から別の章にいくつもりですが章タイトルは思い浮かばない

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