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12話 私服を肥やす

 ギルドでの依頼完了の報告を終えてから長旅のための準備を始める。


「とはいえ……何から買うべきか……」

 旅行の旅支度といえば着替えとか歯ブラシとかそれらを入れるバッグにプラスアルファ……そんなくらいだろうか。しかし旅行じゃなくて冒険のための支度であるし、場所にしたって異世界であるからまあ参考にはならないよな……。

 フィリアに聞いて……も彼女も経験のないことだろうしあまり意味がないかな。

「食料は幾つか買っておきましょうか。道中でモンスターにも遭遇出来るとは思いますけど、肉ばかりというのは私としてはちょっと……」

 そういって露店で野菜のようなものを売っている店へと駆け込んでいった。今は新鮮なのもあって気にならないけど、数日単位となると俺でも飽きてきそうだな。

「ミヤトさんもあれだったら必要なもの買い揃えにいってくださって大丈夫ですから」

 先ほどのギルドでの買取や依頼報酬については俺預かりになった。殆どフィリアのお陰だとは思うのだけれど、これから旅支度をすることだとか、そんな理由でフィリアが俺に預けてくれた。

 有難い限りではあるが、こちらの世界の値段相場が分からないから一人での買い物というのも少し不安になるが……。

 まぁそれでもウィンドウショッピングならぬ露店ショッピングとでもいうべきか。ウィンドウ越しでないだけで陳列さてたものであることに変わりはないが。

 そうして一旦フィリアと離れる。


「……そもそも何買えば……」

 それこそ食料だけで言えばフィリアが買いに行っている。それ以外だと何だろう。

 冒険者なんだし武器とかか、等と考えていたが故の運命なのか、目を向けた先には武器屋がある。……いやでも今の魔法攻撃である程度どうにかなっているしなぁ。

「何より一番相場が分からないからな……」

 昨日今日の外食で食べ物周りの相場はなんとなーく理解したつもりである。そこから相対的に他の服だとか道具だとかも判断できるものは出来るだろう、が。

 流石に武器となるとなにも分からない。それがボッたくられようと、その逆で破格の値段で売られていようともこっちじゃ判別する術がないし。

 少なくともフィリアだとか分かる人間がいる時にするか……。

 後はなんだろう、それこそ道具周り……ナイフの一本でもあれば……と思ったが自衛目的であればそれこそ魔法で事足りるだろうし、そうじゃない道具としてであればフィリアが持っているのではなかろうか。

 となると……。

「買うもの、ほんとにないのでは……」

 実際問題、特に買うべきものがないのであれば下手にあれこれ金を使ってしまうよりはいいと思うけれど……。

 何かしら買う、ということが主目的になってはいけない、というのはその通りなのだが、こうも何もないと、それはそれで不安になってしまう。


「……うーん、ほんとに何も……ん?」

 目的らしい目的もなくふらふらと歩ている。こうしてみると色んな店があるんだな。道具屋に武器屋、それからフィリアが駆け込んでいった食料周りとか、それから服屋。

 そっかそう言えば服は元の世界のままだったか。実際数日経っているし変えるのもアリだろうか。

「値段は……」

 そもそも服に余り拘りがなく、安い店のものばかり購入していたがこの世界じゃ大規模な生産工場があるわけでもないし、安く買いそろえようなんて画策はそうもいかない。

「まぁ……初めての買い物としちゃあ無難か……。」

 服を確認しながら呟いていると、どこからか声がする。フィリアのものだ。

「ミヤトさん、ここにいたんですね」

 思ったより早かったな……と思ったがもしかして俺が思った以上に時間がかかっていただけだったりするんだろうか。

 兎も角フィリアと合流は出来た。

「服買うんですか?」

「いやまぁ見てただけというか……」


 フィリアの合流と同時に店の奥から人が出てくる。恐らく店員だろうか。

「おや、すまないね。客が来てるとは思わなんだ」

 口ぶりからしてもやはり店員らしい。

 こちらへ歩み寄るなり、何やら興味有げに自分の方へと近づいてきた。

「あんたキミョーなかっこだねぇ。どこの街の服だい?」

「えっ」


 そう言われてふと自分の服を見る。奇妙というのはやはり俺の格好のことだろう。明らかに視線はこちらに向けられている。……そうか、この服、浮いてたのかもしかして。確かにこの世界の人間からしたら異世界産の服ではあるが。

「縫い目が綺麗だね……生地もなんだいこれ」

 只管に店員は興味深そうに服を触ってくる。すっごい距離感が近すぎて逆に何も言えない。

「何より……何だねこの妙ちくりんなデザイン」

「みょっ!?」

 妙ちくりんなんて言葉今日日聞かないというに。しかしこの店員の反応からするに――

「もしかして、この服って目立つの?」

 横にいるフィリアに尋ねる。

「まぁ……どの町でも見ない服だなぁとは……」

 フィリアにしてもこんな返答である。明らかに言葉を濁した発言であり、心が特に読める訳ではないが多分もう少しネガティブな感想を抱いていそうだ。

 ……もしかして依然として感じていた視線はフィリアがどうこう、ではなくてこの服だったんじゃなかろうか。


「……そこの服買います」

 途端に自分の格好が恥ずかしくなってくる。

「ん? なんだい、買うのかい? もう少しばかりあんたの服見ていたかったんだがねぇ」

「だったら――」


 ■


「良かったんですか? あの服売ってしまって……」

「まぁ異世界の服だし、目立ってるっていうならね……」

 先ほどの店で服を買うのと一緒に着ていた服を一式売ってしまった。それを元手に今着ている服以外に何着か購入してストレージの中に仕舞っている。

 あれだけ好き放題言われた服であるから

 視線がこれで多少なりとも落ち着けばいいけれど……。

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