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6.底辺配信者さん、有名配信者の命の恩人になってしまう



「いやぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!」


 ダンジョンにマリアの悲鳴がとどろいたのだった。


(わたしのドM戦闘が全世界に配信されてたぁぁぁぁぁぁっ!!!)


 しかも、である。

 よく見れば、そのカメラの脇にいた――即ちカメラの持ち主はマリアも知る有名人であった。


 カレン・レノックス。

 チャンネル登録者は驚異の80万人超えの、超人気のダンジョン配信者である。 

 どうやら自分が彼女の放送に映りこんでしまっていたらしいことに気が付いたマリアは、目にもとまらぬスピードでカメラを捕まえてその両手で覆い隠す。


 それまで呆然としていたカレンであったが、自分が配信の途中だったことを思い出し、


「あ、その……すみません」


 すぐに記録水晶を停止させた。


 だが、一度配信されて魔法通信網ネットに流れ出したものを、取り消すことはできない。

 実際、現在進行形で彼女の戦闘シーンはバズりまくり王国中に広まっていた。

 その勢いを止めることはできないのであった。


 †


 その後ダンジョンを抜け出した二人。

 街に戻ると、カレンはマリアを自宅へと招きいれた。そこで改めて、助けてもらったことに対して深々と頭を下げた。


「改めて……私を助けてくれて本当にありがとうございました」


「あっ、いえ……そんな! 別に気が付いていたわけじゃないので」


 マリアは手をバタバタ振って否定する。

 それは何もカレンに配慮してそう言っているのではなかった。実際、マリアはドラゴンが目の前に現れたことに歓喜しすぎて、倒れているカレンのことはまったく目に入っていなかったのである。

 でなければ、抵抗もせずドラゴンブレスを受けて気持ちよくなる等という「ドMな行動」を、人前にさらすわけがなかった。


「どうであれ、あなたがいなければ私は今頃死んでいました。本当にありがとうございます」


 そんな風にまじまじと感謝されたのが久しぶりだったマリアは、どう反応してよいかいいかわからずタジタジする。


「いえいえ……あの、本当にお気に慣らさず」


 マリアが俯いていると、深々と下げていた頭を上げたカレンと目が会った。


 そして、少しの沈黙ののち、


「あと……それともし違ってたらあれなんだけど……」


 カレンがためらいがちに口を開き、そして


「あなた……マリア……だよね?」


 ここに来るまで、二人ともお互いの名前は名乗っていなかった。

 けれど、カレンはマリアのことを知っていた。


 そして、それはマリアも同じだった。


「えっと……うん、そうだよ……カレン」


 その実、マリアとカレンはいわゆる幼馴染であった。

 子供の頃――12歳になるころまで近所に住んでいたのである。


「よかったっ! 私のこと、覚えててくれたんだ!」


 カレンは急に破顔して言った。

 マリアもつられて笑みをこぼす。

 

「それはこっちの台詞だよ。だってカレンはすっごい有名人だもん」


 カレンは超有名配信者だ。マリアは幼馴染がスターダムを駆け上がっていくのをずっと見ていた。だからマリアがカレンのことを忘れるはずがなかった。


「まさか幼馴染が、登録者70万人超えの配信者になるなんて、思いもしなかったもん」


 マリアがそう言うと、しかしカレンはカレンで驚いたのだと口にする。


「それを言うなら、まさか幼馴染ががイクリプスドラゴンをたった一撃で倒すほど強くなっているなんて思いもしなかったよ」


 カレンも、自分の命を助けてくれたのが幼馴染の少女であったに驚いていた。


「もしかしてマリアは≪騎士≫だったりする……?」


 ≪騎士≫は、ローレンス王国を守護する≪騎士団≫に所属する者のことである。

 極めて高い戦闘能力がなければ騎士になることはできない。全ての騎士が冒険者で言えばSランク以上の実力を持っている。


 そして「ドラゴンをワンパンした」ことを考えると、マリアの実力は≪騎士≫のそれに勝るとも劣らないだろうとカレンは思った。逆に、これだけの実力がありながら騎士になっていないとしたら、一体何をしているのだろうと疑問に思うところだ。

 

 しかし実際のところ、マリアは騎士でもなければSランク冒険者でもなかった。


「まさか騎士なんて……っていうか、なんなら今は無職っていうか……しいて言えば……底辺配信者?」


 マリアが言うと、カレンは後半の言葉にに食いついた。


「えッ!? マリア、配信者やってるの!?」


 カレンはマリアが配信者をやっていることを知らなかった。

 だが、あれほどの実力がありながら、この業界で無名でいることは不可能。一体全体どういうことだと、カレンは首をかしげる。


「え、チャンネル登録者何人? 最近始めたばっかりとかそういうこと!?」


「えっとチャンネル登録者は7人。もうかれこれ1年くらいやってるけど……」


「うそでしょ!? なんで!?」


 カレンは驚きすぎて思わずそう聞いてしまった。

 マリアほどの実力があれば、配信者としてバズる方法はいくらでもあるはずだからだ。


「例えば“イクリプスドラゴンをワンパンしてみた”とか、そんな感じの動画を出せば再生数は簡単に稼げるのに!?」


 それゆえカレンには、マリアが配信者としてくすぶっている理由がまったくわからなかった。

 けれど、そこには明確な理由があった。


「えっと……ああいうのを人前でさらすのはちょっとやってなくて……」


 とマリアがもじもじ両方の人差し指を突き合わせながら言う。


「……どういうこと?」


「その……あんまり人前で出すものじゃないかなって……わたしのその性癖を……」

 

 一応、マリアにも自分が「ドMである」という自覚はあった。

 それゆえ、彼女はその性癖を配信の中では隠していたのだ。


 マリアのスキルは、基本的に「攻撃を受けるほど強くなる」というものだ。

 それゆえ、まともに戦うにはドMな性癖をさらす必要がある。

 それはさすがにということで、マリアは普段の配信では下級モンスターとの戦闘を中心に配信していたのだ。


 ――――けれど命を助けられたカレンからすれば、マリアのそれは隠すことではないと思った。


「ぜーったい、隠す必要ないと思う! ありのままを映すのがいいよ!」


 カレンはまっすぐな瞳でマリアにそう言った。


「そ……そうかな……」


 マリアは半信半疑と言う感じで答える。

 だがカレンには確信があった。


「登録者80万人の私が言うんだから、間違いないよ!」


 マリアはカレンのまっすぐな言葉に心を動かされた。


「うん、そう……かも」


 現に自分より人気を得ているカレンの言葉には重みがあった。


 自分のことを認めてもらえたことうれしかった。


「マリア、きっとすごい配信者になれるよ! 私が保証する! だからその強みを隠しちゃだめだよ!」


 カレンの言葉にマリアはうなずく。


「……うん。そうだね。これからはありのままのわたしで配信、してみようかな」


 こうしてマリアは自らのドMスキルを――ありのままの姿をさらしてみることにしたのだった。



 だが、この時マリアは気が付いていなかった。

 自分がカレン以上の登録者を獲得する超人気配信者になることを。



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