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最期の花束  作者: 白桜有歩
2/14

朝の日課

結と明日葉はいつも朝練を共にする。


 窓側に西洋人形が飾られていて、壁には、結が幼少時代に書いた水族館のイルカのショーの絵が飾られている。


 隣には、お兄ちゃんと私が遊園地で、メリーゴーランドの馬車を模した座席に座ってカメラに向かってピースをしている写真が飾られていた。



「例えのろまな亀でも諦めない根性で努力を続けることで、兎よりも前を走るトップ選手になれる! 結! 明日葉ちゃんとトップを走って二人仲良く頑張りな! いってらっしゃい!」と髪を束ねてひよこのアップリケを付けたエプロン姿のお母さんが、結の背中を優しく叩く。


「よしっ! 頑張るね? 今日も一日努力を続けて諦めない根性を燃料に、誰も越えられなかった向こうまで全力で走ってくる!」と結は、笑顔を見せて手を振る。


「今日も歩むんだぞ? 続ければ負けも失敗もないからな? どんな逆境でも挑み続ければ勝利を手にする翼が手に入るからな! 何度でも羽ばたいて飛ぶ力を付けなさい! きっと遠くまで飛んで行けるから! いってらっしゃい! ゆい!」と起きたばかりでパジャマ姿のお父さんが、新聞から目を離して結に微笑む。


 お父さんは、朝食を食べてから髪を整えるので爆発したように髪が跳ねている。


「あなた? 髪切った方がいいんじゃない? 伸びてきているわよ? 休日なんだし美容院に行ってきなさいよ?」


「そうか? まだいいんじゃないか? めんどいし?」と彼が、欠伸をしながら言うのでお母さんは、「若いころはお洒落さんだったのにー、いつもカッコよくいてよー!」


「ふっ。十分に魅力があるのに、母さんは分からないのか? 俺から放たれるフェロモンが?」


「何言ってんの? 馬鹿でしょうあなた? いまは色気が微塵にも感じないんだけど?」


「なっ!?」と飲もうとしたコーヒーを膝に零して、「熱っ!?」と跳び上がるお父さん。


 玄関で靴を履こうとしたら、階段から足音が聞こえてきた。


 見上げてみると、階段の壁に背中を預けて手を顔にかざしたお兄ちゃんが、


「妹よ? 闘う人はなぜ背中がカッコいいか分かるか?」


「涙を零しても諦めようとせずに闘う意思を見せるからでしょう? これで何回目? お兄ちゃん? 子供の頃から朝必ず聞いているんだけど? 

いつの間にか挨拶みたいになっているんだけど? どこのアニメに影響されたの? さすがに無視していいかな? もうそろそろお兄ちゃんの文通の友達にバラすよ?」


「また決め台詞か? 妹よ? これで何回目だ? お兄ちゃんのハートにまたひびが入ったぞ?」


「はいはい。粉々に砕け散ってね? お兄ちゃんのハート! 粉々になったハートをさらに踏み砕いてゴミ箱に捨てるからね?」


「妹よ? ブラが透けているぞ? 白い服は気を付けた方がいい。お兄ちゃんでも恥ずかしいんだからな?」と私の胸元に、「ビシッ!」と効果音を口に出して指をさし注意する彼を睨みつけて、


「不快かっこ不快」


「今度お兄ちゃんが大切にしているアホな事を書いている中二病ノート消し炭にしとくね? ゴミはゴミ箱にでしょう? ゴミの分別もつかないの? お兄ちゃん!」


「あれは親友から譲り受けた奥義について書かれている秘伝の書だ。燃えないように呪いがかけられている。黒龍の家紋が書かれているだろう? 

あれが呪いだ。そしてあれはゴミではない。ハートが砕け散ってしまうからもうそろそろやめような?」


「『中二病を直した方がいい』ってお兄ちゃんが昔好きだった子が笑いながらクラスメイトと話していたよ?」


「く・・・・・・っ! やるな、精神攻撃が上達しているじゃないか? だかな妹よ? 口が悪いと友達がいなくなるぞ? お兄ちゃんは妹が将来結婚相手を見つけるか心配で仕方ない。

口さえ悪くなければいい人見つかると思うんだけどな? あの女か? 正直になれないんだな? あれから何年経ったか・・・・・・。

あの女が俺に気持ちを伝えずに他の男の元へ行ったあの日から、俺たちは違う道を歩んだんだよな? ——」


「巻き込まないでくれる? 回想シーンとかやめてよ? お兄ちゃんを見ると手がうずくんだから、殴りたいって!」


「もう無理だ・・・・・・! いってこい! 妹よ! 次に会うときは刃を交えずに握手しようぜ? お兄ちゃんみたいな奴になるなよ? ——」


「また朝にアホなことを言ったらズタボロにするね? お兄ちゃん! 妹からの朝の挨拶だよ? 顔面で受け止めてね? 拳を!」


「ふっ。これだから、女ってやつは? やれやれ、別れのときまで正直じゃないな?」と肩をすくめて朝の剣道の鍛錬のために庭に向かった彼に、「いつもながら馬鹿だよなー、お父さんに似ているよー」と外に出るのに時間がかかった結は、明日ちゃんと朝練するために公園に向かった。


朝に、昼に、夜に、寝る前に、『最期の花束』を読んでくれてありがとうございます! そして、おはようございます! こんにちわ! こんばんわ! お休みなさい! いい夜を! いい明日を!


では、またお会いしましょう! さようなら!

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