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最期の花束  作者: 白桜有歩
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約束を交わしたあの日

陸上でいい結果が出なくても何度も挑戦する結ちゃん。

周りから落ちこぼれだと結ちゃんは言われ続けても諦めない。

結ちゃんが自主練をしている姿を何度も見かける。

そんな彼女は、いつのまにか大会に出場するまでの実力になる。

明日葉は結ちゃんに劣等感を感じた。

二人で自主練しているときに、明日葉は弱音を吐いたら結ちゃんは前を向くまで前向きにしてあげると小指を突き出してくる。

明日葉はすぐに後ろを向く性格だから、結ちゃんが明日葉の所為で後ろ向きになる、と言うと、彼女はそれの方が迷惑! と催促するように小指を突き出す。

その日、二人は、明日葉が後ろ向きになったら前向きにすると約束した。



 朝比奈明日葉(あさひなあすは)の髪は、カスタードの色みたいに甘そうな黄色のツインテール。そして、目が海のように美しく抜けるようなコバルトブルー。


 幼いころから明日葉は落ちこぼれだった。


 何をやっても上手くいかず、みんなの期待に応えられなかった。


 でも、小学校では持久走だけは自慢できる実力だった。


 この取り柄だけでも自慢できるように、力を付けていつか、負け知らずの力を持とう、と陸上部に入ったが、次第に自信を持っていた明日葉の記録を超えていく同級生。


 最初は、持久走のコツなどを聞かれたりして、戸惑いはしたが丁寧に教えていた。


 だが、しかし、明日葉よりタイムが良くなった彼女たちは、自分に関わらないようになった。


 言葉にはしないが、自分よりタイムが良くなったことで吸収するモノは無いと見限ったのだろう。


 オレンジ色の夕焼けが、窓から学校内を照らしていた。窓から照らした夕焼けは明日葉の陰を作り、明日葉が急いで学校内を走る足音と共に影も付いてきた。


 家に帰宅したとき、学校に宿題のプリントを忘れていることに気が付き取りに行くと、自分のクラスの教室で賑やかな声が聞こえた。


「朝比奈ってさー。陸上部に要る?」


「要らない要らない。三奈(みな)たちと自主練をしてたときは速かったけどさー。いまは、のろまな亀じゃん!」


「そうだよねー。あのときは速かったけどいまは走るだけ邪魔に見えるし、後ろで荒い息を出して無理すんなよーって心の中で嗤っているから杏子(あんず)は!」


「ホントよねー。遅いし後ろで荒い息をされると髪が臭くなるわー! 走るのが苦手なのろまな亀は辞めればいいのに陸上部!」


「「「ははは!」」」


 自分は何も彼女たちに悪い事なんてしていない。でも、彼女たちが言う ”のろまな亀” は彼女たちとの実力差でたしかに出ている。


 込み上げてくる涙を拭って走って家に帰った。





 もういいや、陸上部を辞めよう・・・・・・。


 初めは、それでいいや、と思った。でも、明日葉が陸上部を辞めると陰で彼女たちが何を言うか分からない。


 悔しさだけを残す思い出にしたくはない。だから、辞めずに部活に参加して、いつか、タイムを上げて彼女たちを超えてみようと、更に自主練も頑張ってみた。


 でも、練習で前を走る同級生たちの背中を見るだけで、自分は弱い、どれだけ自主練や練習しても追いつけない。


 こんな弱い奴は、いまこうやってみんなの後ろで走っているだけでも、同級生たちは、辞めればいいのに、この、のろまな亀は遅いから邪魔なんだよ、と思っているんだろう。


 次第に、自分なんて、何も出来ない出来損ないだよ、と思うようになった。


「どうせ、明日葉は何やっても駄目なんだよ・・・・・・」


「努力なんて積めば積むほど馬鹿だと思われるよ・・・・・・」


「諦めて生きた方が、努力を続けて頑張るより幸せになるよ・・・・・・」


 後ろ向きになる一方でその先が見えない。後ろの景色は見過ぎるぐらいには自分に自信が無かった。


 でも、そんな自分には憧れの人がいた。


 後ろばかりを振り向く明日葉と、前を向いて歩んでいく結ちゃんは、大きく違う生き方だからだ。


 前の景色を見る彼女に憧れるのは、後ろの景色を何度も明日葉は見続けてきたから、そういう違いがハッキリと出ているからこそ、彼女の台詞を聞き逃さずに、聞いては、自分に言われているような感覚になり、心が温かくなっていた。


 なんでも熟す子ではなかったが、諦めずに何度も挑戦して学んで繰り返して、いつの間にか実力を上げて成功する。どこかのヒーローみたいに、いつかは高い壁を飛び越えて勝ってしまう結ちゃん。


 彼女は弱音を吐かずに、諦めない強さを武器にして挑み続ける。


 彼女の堂々とした言葉には、自分に持っていない魅力があまりにも輝いていた。


 野球部やサッカー部、ソフトボール部の掛け声や校舎からはコーラス部の透き通った歌声がグラウンドまで聞こえる。


 放課後の陸上部の使用許可があるスペースの一角で腰に手を当てて胸を張る、ハチミツのように輝く金色の目のゆいちゃんは、


「順位が下から数えた方が早くても、何度も挑戦して挑めば勝つ力がつく! 失敗や負けなんて言うのは諦めない限り、ない! 諦めない限り勝利は目の前にある!」


 恥ずかしくなるぐらいに部活のみんなの前で熱血な勝利宣言。いいよな、結ちゃんは強くて、カッコいい性格で、明日葉も結ちゃんみたいな子だったらよかったのに・・・・・・。


 心に書き足した彼女の台詞を吸収して、思い出すたびに自分自身を励ましていた。





 それでも、陸上部の落ちこぼれの彼女と明日葉は大会に出場しても勝ち残らない。


 それでも、諦めずに自主練をする姿を朝も夕方も見かける結ちゃんは、次第に、記録をどんどん更新していく。


 結ちゃんはいつの間にか陸上部のエースになっていた。


 周りは最初、彼女に、


『この世界は最初から、才能で上に行く者と、下でノロノロと歩く才能の無い無能は分けられているんだ』


『夢を追いかけて気付けば婆になるだけよ』


『お前が夢を見ても結果はいつも同じ。才能の無いお前に陸上部に要る資格はない』


『鳥頭みたいに阿保な奴。自分の実力も知らないのか?』と彼女に否定的だった。


 でも、彼女は、


『結は諦めませんぜ? 先輩! 結は最後でも立ち上がって勝つんだから! いつか先輩たちの記録を超えますぜ!』


 彼女は宣言通り、先輩たちの記録を超えてしまった。


 なんでも、諦めない強さを武器にする彼女の背中がカッコよく見えるのは、自分があまりにも諦めない強さが無いからだよな・・・・・・。


 サッカー部と野球部、ソフトボール部も体力を鍛えるのに走る学校周りを明日葉あすははみんなに追い抜かれて、一人、荒い息を吐きながら走っていた。


 いつまで経っても、のろまな亀は、みんなに周遅れで何度も越されるだけで心が腐っていきそうだった。


 心が弱くなった分、足に力は出ない。でも、それでも走る。前に憧れの人が走っているんだ! いつか並んで走るんだ!


 でも、見過ぎた現実で出た答えは、諦めない強さは高い壁を飛び越える、という考えは消えてしまい。能力を持っている人と能力を持っていない人は、生まれたときから違いがあるから頑張っても意味がない、と思うようになった。


 弱者は弱者のまま、強い者は最初から力を持っている・・・・・・。生まれた瞬間に能力は決められている。


 そう思うようになった明日葉は俯いて走るようになった。





 そんなある日、結ちゃんが、


「明日ちゃん! 一緒に自主練しない?」


 久しぶりに、自主練に誘われた。他の子にも誘われて自主練をしていたけど、彼女たちは実力がついたころから、明日葉は除け者にされていた。


 明日葉は部活終わりに、結ちゃんと自主練を一緒にするようになったが、自分よりも成績のいい彼女を見ていると劣等感の塊にしか見えない。夕焼けが染まる公園には、犬の散歩をする老人やジョギングを楽しむ大学生が、ちらほらと見かける時間に走る二人。


 明日葉と同じペースで隣に走る結ちゃんは、真剣な顔で真っ直ぐ前だけを向いて走る。


 彼女は自分に合わせて走っているのは、普段、更新し続ける記録で分かる。


 自分は隣で走る結ちゃんに劣等感を感じた。


 一時間走った後に、明日葉は弱音を吐く。


「全然、実力が上がらない・・・・・・。やっぱり、ただののろまな亀だ。明日葉なんて・・・・・・、何も自信を持てる能力が無い・・・・・・」


 俯いて溜め込んでいた気持ちを吐き出すと、自分の惨めさに涙がボロボロと零れ始める。


「何度も繰り返して頑張ってみよう! 出来るよ! 明日ちゃんは!」


 涙がボロボロと零れて、身体の震えで足に力が入らなくなり立てなくなって、しゃがみこんだ明日葉に、結ちゃんも自分と目が合うようにしてしゃがみ、背中を優しくトントンと叩いてくれる彼女に、自分は更に溜めこんでいた気持ちを吐いた。


「じゃあなんで! みんなより落ちこぼれだった結ちゃんと明日葉は、こんなにも実力が違うの! 最初から持って生まれる力は決められているんだよ!」


「自分がそこまでだと思えばそこまでの力しかつかない。でも、人は諦めない強さを武器にして、高い壁を飛び越える力を持つんだよ。誰にだって持っている可能性の原動力となるパーツ、それは——」


 結ちゃんが明日葉の胸を優しく突いて、


「いままで、どこを見て生きて来たの? 明日ちゃんは悔し涙を流すぐらいの “心” があるじゃない! って事は、そういう子って最後には諦めて負けているのかな? 勝っていると思うけどね! 諦める弱さは人が持っていいモノじゃないよ。諦める弱さを持てば心が弱くなっていつか腐ってしまうの」


「諦めて生きた方が、周遅れで息を切らしている亀よりマシだよ!」


「亀でいいじゃない!」


 やっぱり、明日葉は亀なんだね。結ちゃんにとって。


「亀の凄さって知っている? 亀を馬鹿にした兎に越されても、諦めずに自分を信じてゆっくりでも兎を追い掛けたんだよ! 能力が強いのが本当に人は持たなければいけない力なの? 頑張っている明日ちゃんがそのまま兎に馬鹿にされたままで人生を歩んでいける? いまはみんなを追い越せないかもしれない。でも、逃げずにゆっくりでもいいから頑張りなよ! いつか、自信を持つ子になるように頑張ればいいのよ! そうすれば! 自信の無かったのろまな明日ちゃんが、諦めない強さを武器にして、いつか兎を追い越す亀になるよ!」


「本当に自信が付くほど強くなるの? 諦めなければ?」

 

「諦めない限りは勝利が目の前にある! 涙を零すのも、弱音を吐くのも、何度だって結に見せてもいいから、いつでも明日ちゃんの気持ちを結の前で伝えて!」


「そんなのただの迷惑をかけるだけだよ! 明日葉はいつも、後ろばかりを振り向いてしまうから結ちゃんが後ろ向きになっちゃうだけだよ・・・・・・!」


「結は、明日ちゃんが遠慮して何も言わないで後ろを向く方が迷惑なの! 余計に心配して気にするよー。それじゃあ、そんな後ろ向いた顔を横でされたら、メロンパンも美味しく感じない! そんなにも後ろ向きになるなら約束! 結が一生懸命になって、明日ちゃんがいつも前を向くまで前向きな言葉をあげる!」


 小指を明日葉に向けて指切りを催促する結ちゃんは、


「いまから言う言葉に少しでも足りないと感じるなら、甘えていいから足りないと言って! 優しい言葉だけを明日ちゃんにあげる! 最後に立ち上がれば明日ちゃんの勝ちだ! 立ち上がれますか?」


「だから! 結ちゃんに迷惑かけたくないって!」と怒鳴った明日葉は俯いた。


「明日ちゃん? 逃げるな? 結から。亀は逃げないはずだよ? ・・・・・・はぁー・・・・・・、でこ貸して? 明日ちゃん?」


「えっ? ・・・・・・痛いっ!」


 結ちゃんに額をデコピンされた明日葉は、彼女の真剣な表情を見て、


「本当に、いいの? 立ち上がるまで、甘えるよ・・・・・・?」


「ドンと来な! 誰だって、後ろを向いた子をほっておきたくないよー。いままで、どれだけ後ろを向いて来たのよー。だから—―」


 自身の胸を叩いて結ちゃんは小指を明日葉に突き出す。


「まだ足りない!」


「じゃあ。手と肩と足を貸す! 立ち上がれますか?」


「まだまだ足りない!」


「うん! その調子! じゃあ、更に! 脳と使い古された心臓を貸す! 立ち上がれますか?」


「まだ足りない!」


「では! 過去と未来の後ろ向きをください! 全部! 前向きにして返す! 立ち上がれますか?」


「はいっ! 立ち上がれます!」


 結ちゃんの小指に明日葉の小指を絡ませて、日が沈む公園で笑顔になって約束を交わした。


 彼女は決して明日葉を裏切らなかった。


 いつも、どんなときも、結んだ約束は友情の証しとして温かく残っている。


 そんな結ちゃんは、明日葉にとって—―、ヒーローだった。

おはようございます! 現在、十一月まで訓練の日を待っている職無しのニートです。

誰かああぁ! 仕事をくれエエェ! と、心の叫びを声に出して家で発声練習の如く部屋で嘆いていました! 

夕食の時間に読んでくれる読者の方には、こんばんわ! 

寝る前に読んでくれる読者の方にも、こんばんわ! 

朝、読んでくれる読者の方にはおはようございます! 

昼に読んでくれる読者の方にもこんにちわ!

白桜有歩、と書いて、読み方は、はくおうゆうほ、と、読みます。

どうでしたでしょうか? 今回はミスはないと思うんですが、まあ、いつものようにミスをしていると思いますが、頑張って執筆しました! 

今回の話しは、結と明日葉の約束をした話となります!

こんなことを実際にやってみたいものですね! 作家さんも他の職業の方も学生さんもカッコよく決めてしまうのでしょう!

愛しているぜ! そんな皆様を!

そんな皆様を想像して執筆してみました。

皆様カッコよくきまっています!

かっこいい皆様なら苦しんでいる子に言ってしまうはず!!

信じているぜ?


いい夜を! 更にいい明日を!

では、これにて、次の作品で会いましょう! さよなら、さよなら、さよなら!


自分を信じて努力を続ける者の胸には強く輝く可能性があります。可能性は必ず歩むことで芽吹きます。可能性の花と言いましょうか? 人は誰だって自分を信じて努力を続ける事で可能性が高まり大きく! 強く! 多く! 色鮮やかに輝いて咲き誇ります!


自分を信じてみよう? いまは怖いかもしれないけど続けていくうちに失敗も楽しくなるからね?


失敗だって積み上げれば成功に届くから自分を信じて真っ直ぐに前を向いて失敗を恐れず歩んでみよう? 笑顔で過ごす未来は必ずあたなに訪れるからね? 笑顔を大切にして自分を信じて真っ直ぐに前を向き歩んでいこう! 今日の失敗は明日の成功に必要な知識だったんだよ?


失敗したからって明日終わるわけでもないし明日地球が滅ぶわけでもない。

明日があるのだから今日の失敗を糧にして力にしよう? 失敗は明日に繋ぐ知識となるのだから!


早く芽吹くことはないけど自分を信じてまっすぐに前を向いて歩んでね? 信じて進んだこの先にはあなたが望んだ景色が待っているから!!

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