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第13章 魔を封じるもの1

「ほう、それはけっこうな『塩対応』だね」


「塩も、塩よ!

 あんなにこっちの意向を無碍むげにするなんて、王宮警護隊長はどんな教育をしているのかしら?

 ホント、腹が立つわ〜!」


 取り敢えず、幻戯城に戻った私たちは、公爵にことの次第を報告した。

 もっとも、「報告」というよりは、「愚痴」に近かったけれど。


「まぁまぁ、そんなに立腹しないで。

 彼が一筋縄ではいかないことは、私も忠告していたことじゃないか」


「そ、れ、は!

 わかっては、いたんだけど……」


「ローズの想像以上だったって訳だね?」


「そうねぇ……。

 頑固にもほどがあるというか、なんというか……。


 まぁ、それはおいとくとして──。

 問題は、パルラと面会出来なかったことね」


「それは、カッツァーニが意図的に、きみとの接触を阻んだと、考えられるのかな?」


「そうだと思う。

 パルラが私を拒絶したなんて――」


 信じたくない。


 たとえ短い期間で芽生えた友情だとしても、それはある意味では、長い時間で育まれたものよりも強固なものであると、私には思えるのだ。


 まったくなんの根拠も無い、自分勝手な思い込みに過ぎないものであるのかも知れないけれど、私はその思い込みを信じたい。


「まぁ、その件は様子見にしておこうじゃないか。

『ブルファリー』の捜索には、直接の関係は無さそうだから……」


「そうね。

 取り敢えず、パルラのことは放っておきましょう。


 ――と、なると……」


 ペラルチャが死亡したことで、この方面からの捜索は難しくなってしまった。

 死亡したとき、彼は特に魔力を秘めたものは所持していなかった。


 何者かが――恐らく、ペラルチャを殺害した何者かが、持ち去ったものと思われる。

 それがいったい誰なのかは、皆目見当もつかない。


「もう一回、ポテラさんのところに行った方がいいかしら?」


「いや、ポテラ氏からは更なる情報は訊けないのではないかな?

 ローズの報告を聞く限り、彼はあまり他人の詮索をしないタイプだろう。

 ペラルチャ氏が素材(﹅﹅)をくすねていったことに対しても、怒ってはいなかったのだから」


「そうねぇ……。

 あんなにお人好しな人も珍しい――。


 そうだ!」


「おおっと、どうしたんだい?

 急に叫んで?」


「公爵。

『ブルファリー』を収めていたケース――あれは、イガーノの殻からつくられたものなのね?」


 私は、ポテラから聞いていた話を思い出した。

 素材(﹅﹅)は、イガーノの殻に包まれていたという話を。


「ああ……。

 いきなり、何を言い出すのかと思ったら……。


 そうだよ、ローズ。

『ブルファリー』を収納していたケースは、イガーノの殻を元に、私の魔法でつくったものだ。


 イガーノの殻には、『魔封じ』の効果があるからね」


「ペラルチャ氏が持ち出したという素材(﹅﹅)は、イガーノの殻に包まれた状態で、ポテラ氏の店に持ち込まれたらしいの。


 公爵は、タビトにイガーノの殻を集めさせていたんでしょ?

『ブルファリー』のケースをつくる以外に、『魔封じ』用のアイテムとして、それらを使用したと思うのだけど……」


「なるほど。

 ローズの考えが読めてきたよ。

 私がつくった他のアイテムが、いま(﹅﹅)どこにあるのか、()が持っているのか、知りたい訳だね?」


「さすが公爵!

 話が早いわ!


 ポテラ氏はイガーノの()と言ったけど、多分、殻を加工(﹅﹅)したものだと思ったの。


 タビトに集めさせていたのだから、殻単体(﹅﹅﹅)だけでは、強力な魔力を封じるだけの力は得られず、多くの殻を使って加工しなければ、実際に『魔封じ』用のアイテムとしての機能は得られないんじゃないかと……。


 でね、公爵のことだから――。

 それらのアイテムを、ラーゴの人たちに分けてあげたんじゃないかと……」


「――素晴らしい推理だね。

 感服したよ、ローズ」


「えっ、ホント?

 公爵に褒められるなんて、嘘みたい」


「いや、これはちょっと驚いたよ。

 殻から、それらを集めて加工したアイテムへ発想を飛躍させることはなかなか出来るものじゃないし、更にラーゴの住民に配ったところまで考えを巡らせるのは――」


「そんなの簡単よ。

 公爵の性格と、いままでラーゴの人たちにやってきたことを考えればね!」


「やれやれ。

 私のやることは、すっかりローズに見透かされてしまうようになったんだね」


 公爵は両手を上げて、お手上げのポーズ。

 でも何故か嬉しそうだ。


「『魔封じ』用のアイテムを配ったのは、ラーゴが未だに魔法中心の生活をしているのが理由かしら?」


「概ね当たりだが、正確にはもう少し踏み込んだ答えが必要だね」


「どういうこと?

 ラーゴが手練の魔導師揃いだから、その流れ弾(﹅﹅﹅)から身を防ぐために利用するとか?」


 ちょろっと思い付きを口にしてみただけだけれど、公爵は本当にびっくりしたみたいに「ほう!」と、声には出さずに口を開く。


「参ったね、ローズ。

 きみの推察力――いや、直感力か……。

 それは、大いなる武器になるよ。

 今後も、それ(﹅﹅)を磨くことを怠らないことだね」


「褒められてるのか、お説教されてるのか、良くわからないわね。


 で――。

 答えは?」


「野良魔法」


「は?」


「ラーゴには、野良魔法がそこら中に溢れてる。

 それらから身を守るアイテムとして、〈アルマッツァ〉は、かなり有効なのさ」

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