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23 音楽家ヴィヴィ・ヴィターナ 1


「さて。新しい拠点の紹介もしましたし、次の予定に移りましょう」


 強制的な転居を執行されたロイドにアリッサはニコニコ笑顔でそう告げた。


 まだあるのか。そう言いたげにロイドの顔が嫌そうに歪む。


「あら。そんな顔をして良いのですか? 次は例の武器に関する事ですよ」


「例の武器?」


「ええ。マグナムですよ。オーソー侯爵家で使えなくて困ったんじゃないですか?」


 そう言われ、ロイドはあの時を思い出すかのように一瞬だけ黙る。


 確かにマグナムが撃てれば簡単に始末がついた場面は多い。玄関先での戦闘、廊下での銃撃戦。


 マグナムが使えてれば玄関脇の壁をぶち抜いて相手を無力化、もしくは驚かせて攻めの一手に出来たろう。


 廊下での銃撃戦に関しても同じだ。


 無ければ無いで対処はしたし、現に対処出来た。しかし、存在を知ってしまうとそれを求める心理は生まれてしまう。


 武器というのは、まるで麻薬のような存在だ。一度手に取って使えば魅了されてしまう。


 何かのトラブルが発生した時、こん棒で戦うより魔導銃を求めてしまう。勿論、魔導銃という存在を知らぬ者はこん棒で戦うだろう。


 だが、ロイドは違う。魔導銃の威力、便利さ、戦闘での有用さを知っている。


 魔導拳銃、魔導長銃、近年ではポピュラーな武器となった物よりも高威力で、容易に人を殺せる兵器。


 ロイドは既にジャンキーだ。戦場で知って、戦争が終わった後も帝都で出会ったマグナムという存在に惹かれてしまっている。


「まぁ、そうだな」


「でしょう?」


 知らずのうちに侵されて、侵食されて。それでも尚、使えと言うアリッサはもしかしたら悪魔なのかもしれない。


 といっても、本人達は無自覚だ。魔導銃を使用した戦闘行為、それが当たり前となった現代では関わる誰もが無自覚になってしまっているのだろう。


「ですので、製作者に会いに行きます。ロイドさんもいつか会いたいと言っていたじゃないですか」


 アリッサにマグナムを渡された時だったか。確かにロイドは製作者に会ってみたいと口にした。


 自分の手にジャストフィットする造りと重さ。何より、今となってはマグナムという新技術を生み出した者にも興味が沸いているのだろう。


「帝都の研究所かどこかに勤めているのか?」


 新技術の開発者なのだから、それはもう高名な技術者で本業の合間にアリッサの協力要請に応じているのだろうとロイドは思ったようだ。


 しかし、アリッサは首を振る。


「いいえ。私が出資して建てた小さな工房で活動しています。彼女は……。その……」


 そこまで言って、アリッサは悩むような仕草をしながら言葉に詰まった。


「なんだ? 何か問題があるヤツなのか?」


 アリッサは以前にちょっと変わっている人だと言っていたが。


「いえ、問題というワケでは。その、技術者というより……自称、音楽家?」



-----



 製作者のいる工房は新拠点である屋敷からすぐ近くに存在していた。


 なんと歩いて数分。屋敷から魔導具製作を行うエリアとして制定された西エリアに入ってすぐ。


 アリッサによると製作者を守る意味もあって屋敷を内周区南西、西エリアのすぐ近くに建築したそうだ。


 技術協力してくれる技術者を守るという意味では正しい。昨今の成長著しい魔導具業界では技術者のヘッドハンティングは国も個人商会も盛んに行われている。


 といっても、国に要請されたら断れないのが現実であるが。個人の商会が先に目をつけていても、国による強制力を含んだ『招集』には勝てない。


 断れば罪となり、最悪は死ぬまで監禁されて頭の中にある技術を国に吸い尽くされてしまうだろう。


 そういった意味でも、アリッサは『守る』と言っているような含みがあった。


「ここです」


 目的地、アリッサが金を出して製作者の為に作った工房はコンクリート製で出来た灰色の箱である。


 一応は建物に窓やら入り口のドアがあって、外にはポストが建てられている。


 箱の上に備わった煙突の先からは工房に設置される大型魔導機から排出される白い煙が見えた。


 小さな工房を運営する者は大型の魔導機を設置して魔導具製作と生活両方で使うのが定番だ。故に人が暮らす家としての機能は備わっているようだが、この建物はあまりにも殺風景な外観である。


 逆に目を引くのでは、と思えるくらいに。


 その辺りをロイドが問うとアリッサは「問題無い」と笑いながら返した。何かしらの手段は講じているのだろう。


 アリッサが工房の入り口にある金属製ドアを叩く。コンコン、とお上品にではなく拳を叩きつけて「ドンドン」と音を鳴らす方のやり方だ。


 ただ、中から反応が無い。ドア越しに生活音も聞こえない。


「またやってるわね」


 そう言って、アリッサはドアノブを掴んで回す。ギィ、と開いたドアの隙間から「ポロロ~ン」と弦楽器を鳴らす音が漏れる。


 中に入るアリッサとローラに続き、ロイドが建物の中に入ると中にいたのは女性であった。


 女性の耳は長い。所謂、エルフという種族だ。


 金髪の長い髪をポニーテールに纏め、顔には黒縁のメガネを掛けて。着衣は灰色のニットセーターと紺色のズボン、足にはサンダルを履いていた。


「アレが……?」


「アレがです」


 だが、ロイドは女性を見て「本当に技師なの?」と言わんばかりの反応をする。


 というのも――


「おお~! ファッキンメ~ン! 憐れ~な~子羊は~殺戮兵器を持って旅をする~」


 彼女は工房の中央で椅子に片足を乗せながらウクレレを弾いて歌を歌っていた。


 ポロロ~ン、ポロロ~ン、と弦を鳴らしながら聞いた事の無い歌詞を口にして。


「ひっでえ……」


「ええ、まぁ……」


 何より音痴だった。絶望的なまでに音痴だった。


「因みに、彼女はオリジナル曲しか歌いません」


 なんと口にしている歌詞はオリジナルだという。詩を書く才能も……残念なようだ。


「言ったでしょう? 彼女は自称音楽家。音楽家になりたい魔導技師なんですよ」


「ファッキンメ~ン! 俺のケツに~キスをしろ~! 俺のケツに~キスをしろ~!」


「いいから黙らせてくれ……。夢に出そうだぜ……」


 アリッサが屋敷で彼女の事を音楽家志望と言った理由がようやく分かった。といっても、誰もが彼女に才能は無いと言いそうだが。


 ロイドが苦しそうな顔をしながらアリッサに歌を止めるよう頼み込む。割と本気で。


 アリッサは歌う彼女に近づくと近くでパンパンと手を鳴らす。すると、歌っていたエルフの製作者はようやくアリッサ達の存在に気付いた。


「おや。アリッサじゃないか。来ていたのかい」


 歌を止めて、アリッサにニコリと微笑む彼女。ついでとばかりにウクレレをポロロン、と一度鳴らす。


「ええ。引っ越しも済んだからね。貴方は……相変わらずね。ヴィヴィ」


「ああ、勿論さ。ここは防音だから音楽活動が捗るよ。素晴らしい環境だ。今日は私の歌を聞きに来たのかい?」


 本当に魔導技師のいる工房に来たんだよな? と疑いたくなる言動である。


「いえ、違うの。例の銃に関して。ほら、使用者が見つかったって言ったでしょ?」


 そう言ったアリッサは体を横にズラしてロイドを手で指し示す。


「彼がそう。私がスカウトしたロイドさんです」


 アリッサがロイドの紹介をすると、エルフの魔導技師であるヴィヴィはニコリと笑いながらロイドに手を差し出した。


「やぁ。私の名前はヴィヴィ・ヴィターナ。音楽家だよ」


 マグナムを製作した魔導技師……のはずだが、彼女はあくまでも自分を音楽家と言い張る。


「ロイドだ。よろしく。ところで、技師と聞いていたが……音楽家なのか?」


 ロイドはヴィヴィと握手して自己紹介をしながら疑問を口にした。


「そうとも。魔導技師の方は仕方なくやっているんだ。食う為にね。私の夢は世界を魅了する音楽を作ること。だから、私は魔導技師ではない。音楽家だ」


 ロイドの疑問にヴィヴィはそう答えた。


 魔導技師は食べる為にやっていると。マグナムという新技術を開発しておきながら、それは本業である音楽活動の片手間に行った事であると。


 ロイドは「逆だろう」と思っているに違いない。   


「マグナムを作っておきながら? あれは魔導技術に詳しくない俺でも凄い物だと思うんだが」


 事実、ロイドは思っている事を口にしてヴィヴィに問うた。


 彼女が名声と富を得たいのであれば、近道は魔導技師の仕事に注力する事だろう。


 しかし、彼女は首を傾げる。


「そうかね? 寝起きにベッドの中でボーッとしている時に思いついた事を形にしただけだよ。組み立ても詩を書いている途中にやったからねぇ。凄い物を作ったという自覚は私に無いね」


 思いついた事を形にして完成させる。言うのは簡単だが、実際にやろうとするとなると途中で様々なトラブルや思い違いに直面する事は多い。


 だが、彼女はそれをやってのけた。しかも、オリジナルの歌を作る合間に。彼女が自ら告白している通り、新技術を搭載した現状最強の魔導拳銃を完成させたという自覚は無いのだろう。


 まさに天才と言うべき存在だ。勿論、魔導技師の天才である。


「そもそも、基礎となる魔力圧縮技術は私がイチから考案した物じゃない。私の父が残した理論を元に完成させただけさ」


 彼女の父も魔導技師であったようだ。


 ヴィヴィの話によると、現在の魔石カートリッジには致命的な欠陥がある。それは魔石という半透明な魔法石の内部にある魔力を抽出する技術だそうだ。


 現在の魔石カートリッジに搭載された抽出機構は、魔石内部にある魔力を抽出する際に魔石一個のうち20%は無駄にしてしまっているとのこと。


 そもそも、魔石とは魔力を含む鉱物でこの世界の自然界で誕生した自然資源である。この鉱物の中で結晶化した魔力の塊を抽出してエネルギー化させる装置が魔石カートリッジと名付けられている。


 抽出する際に魔石へ針状に加工した金属で穴を開け、内部にある結晶化した魔力の塊を溶かしてエネルギー化するのだが、この工程時に無駄が生じているのが現在の機構。


 原因としてはカートリッジ自体を小型化した弊害だと彼女は説明した。


「そこで、私の父はこの無駄を失くそうとしたわけだ」


 彼女の父はカートリッジの抽出機構に改良を加えて、魔力の塊を溶かす工程後に圧縮させる機構を追加した。


 これにより濃い魔力を生成する事で稼働させる魔導具の効率化を図る技術を思いついたようだ。


 魔力の濃度が上がれば、魔力を受け取る側である魔導具は従来の魔力よりも少ない量でパフォーマンスを発揮する、といった内容である。


 この技術を魔石カートリッジに搭載させればカートリッジと稼働させる魔導具の使用回数・使用時間の延長が望めるという。


 ヴィヴィは父の思いついた圧縮化技術を改良して、魔石カートリッジのコストパフォーマンスよりも魔導銃の威力が向上するようにした。


 それがマグナム誕生の経緯であると彼女は語る。


 ヴィヴィの父が完成させた圧縮化技術は、既に論文を書いて魔導技術学会に提出はしたようだが……。


 そのような技術は世に出ていない。魔石カートリッジにそのような技術が搭載されているという話も聞かない。


 何故? とロイドが疑問を口にするとヴィヴィはクスクスと笑って言った。


「儲からないからさ。魔石カートリッジを生産している商会――マギ・マテリアル商会が帝国の学会に圧力を掛けて父の論文を潰したんだよ」 


 マギ・マテリアル商会。それは帝国から西にある同盟国、マギフィリア王国にある国営商会である。


 同盟国マギフィリア王国の主な財源は領土内に埋蔵された魔石の発掘と加工、及び他国への原材料――魔石の輸出だ。


 加えて、帝国の生活と軍事面を支える魔導技術発祥の地でもある。


「遥か昔、魔法使いや錬金術師がこの世に生存していた頃。魔法使いと錬金術師は魔石を触媒として魔法を発現させていたのは知っているね?」


 その時代では魔法を使える者が上位に君臨しており、魔法を使えない者達は下賤な者として捉えられていた。


 そこで、魔法を使えぬ者達が上位の者達と同じように魔法を使おうと試行錯誤した結果に生まれたのが『魔導技術』及び『魔石の加工技術』である。


 マギフィリア王国の前身は魔法使い達が上位に君臨していた国であったが、魔法使いや錬金術師が絶滅した事で普通の人間が国を支配するようになった。


 彼等が暮らしていく上で、他の人間達よりも有利な状況を作り出す為に、今日まで発展したのが魔導技術である。


「そういうわけでね。魔導技術はマギフィリアの専売特許であり、国の大事な商売道具なのさ。そこには魔導技術の要である魔石カートリッジも含まれる」


 世界中で使われている魔石カートリッジの生産はマギフィリア王国が行っていて、各地に生産工場の建築、カートリッジ生産に用いられる秘匿されたコア技術を扱う専任技師の貸し出しを行っている。  


 帝国内で使われている魔石カートリッジもマギフィリア王国が帝国国内に建設した生産工場を使い、帝国は技術の使用権を購入して国内生産を行っているのが現状だ。


 この生産技術に手を加える事をマギフィリア王国は許していない。許可無く加工を加えれば、原料となる魔石の輸出停止を行うだろう。


 他にも過去に一部の組織が魔石カートリッジの改造を行った事があるが、その組織はマギフィリアの軍隊によって壊滅。組織が結成された国も無関係を主張したが制裁を受けたという事実もある。


 帝国内でも魔石が埋蔵されている場所はあるものの、埋蔵量や採掘技術に関して本場であるマギフィリアには到底敵わない。


 輸入に頼らなければ帝国は魔導技術を100%活かす事は不可能となろう。マギフィリア王国に喧嘩を売れば帝国ご自慢の魔導具は使えなくなってしまう。


 といっても、マギフィリア王国とローベルグ帝国の関係性はかなり濃い。


 元々、帝国が誕生した切っ掛けは当時のマギフィリア王国第二王子が国王から領土を賜って運営を開始。後に繁栄して帝国となったという経緯がある。 


 つまり、マギフィリア王国の王族とローベルグ帝国の皇族は親戚関係にあるのだ。


 マギフィリアが魔導技術発祥の地という事もあって、帝国が発展させている魔導技術の源流もマギフィリア式魔導技術が元となっている。


 勿論、帝都にある魔導学会もマギフィリア魔導学会から派生した組織である。帝国は国として独立してはいるものの、マギフィリアの支援を受けて建国・発展してきたといえよう。


 こういった関係性もあって両国は同盟国として結ばれているし、魔石の輸入条約が結ばれている。


 今更、帝国がマギフィリアとの関係性を切ろうなど到底無理な話だ。


 話を戻そう。


 ここでヴィヴィの父親が考案した理論を魔石カートリッジに搭載したとしよう。すると、魔石カートリッジは長持ちして使用者達はハッピーになる。


 しかし、魔石カートリッジ1本1本が従来品よりも長持ちしてしまう事で生産元の総合的な売上は減少するだろう。


 競合となる生産者がいないのに、一般人の為に努力する必要があるか否か。


 彼等が選択した答えは否である。


 それに、この時代ではまだ資源の節約、エコロジーといった概念は生まれていない。


 売上が落ちるにも拘らず、性能が向上した物を一般人に与えて何のメリットがあるのか。そう判断したのだ。


「と、いうワケで私の父親は論文を潰された。それだけではなく、マギフィリアに喧嘩を売った愚か者として技師の道も断たれたのさ」


 彼女の父は技師免許を剥奪されて職を失う。その結果、ヴィヴィの父親は首を吊って自殺した。


 母も幼き頃に病で失ったヴィヴィは天涯孤独の身となったが……。


「皮肉にも、私には魔導技師の才能があった。でも、くだらない権力争いや金稼ぎに塗れた魔導技師などやりたくなかったのだよ」


 事実、彼女は今でも『モグリ』であると明かした。


 彼女は学会が指定する専門の学び舎に通っておらず、技師免許すら持っていない。


 天才的な技術力、発想、実行力を持ちながら、彼女はモグリの魔導技師である。


「なのに、どうして今こうして技師を?」


 ロイドがそう問うと、ヴィヴィはチラリとアリッサの顔を見た。


「私も君と同じくスカウトされたクチでね。金を稼ぐ為に帝都の外周区で魔導具のちょっとした修理をしていたんだ。その時、彼女に見つかってスカウトされたのさ」


 外周区にはヴィヴィのようなモグリ技師は数多く存在する。大体は貧困層に紛れてコソコソと仕事をしているのだが、彼女も当時はそのような状態だったのだろう。


「懐かしいですね。私が外周区を散歩している際、彼女をたまたま見つけたんですよ」


「ああ。あの時は肝が冷えたね。ついに私も捕まるのかと思ったよ」


 どうやら当時のヴィヴィはアリッサに声を掛けられた際、モグリの件で逮捕されるのかと危惧したようだ。


「私は人を見る目がありますからね。すぐにスカウトしました。私に協力する対価として身柄と生活の保証をする事、他に何をしても良いという条件で」


 顔を見合わせて昔話を語る2人は笑い合う。だが、どこか彼女達が絡ませる視線には何か含みがあった。


「まぁ、そういった経緯があってね。私は魔導技師ではない。音楽家だ」


 そう言って、持っていたウクレレを鳴らす彼女。


「理由はわかったが……。どうして音楽家なんだ?」


「音楽は素晴らしいじゃないか。完成された音楽は人を魅了する。愚か共がどんな文句を言おうとも、人を魅了した音楽は止められない」


 小汚い魔導技術界隈のようにはならない。


 彼女の父は金と権力によって潰され、功績が残らなかった。人々の記憶から消え失せた。生きた軌跡すらも残っていない。


 だが、音楽は違う。


 完成された音楽は人々の中で生き続け、どれだけ圧力を掛けて消そうが一度聞いてしまえば記憶に残る。心に残る。誰かが口ずさむ。音と詩として人の中で残り続ける。


 だから、私は皆の記憶に残る音楽家になりたい。そう彼女は言って笑った。


「それにね。魔導具を作るのは簡単だ。才能があるからね。だが、私には音楽の才能が無い。難しくてやり甲斐があるよ。私は達成感を感じたいんだ」


 魔導具の開発。それは彼女にとって息を吸う事と同じくらい簡単な事なのだろう。


 だが、音楽は違う。才能が無く、センスも無い。人より何倍も努力を積まなければならないが、それが心地良い体験であると彼女は語る。


「なるほどね」


 彼女にも彼女なりの理由があって音楽家と名乗っている。その理由が分かったロイドは大きく頷いた。


「そういうわけだ。今後ともよろしく頼むよ。ロイド氏」


 クス、と笑ったヴィヴィはポロロンとウクレレを鳴らして息を大きく吸った。そして、ロイドとの出会いを歓迎するように歌い出す。


「ああ~俺のケツを舐めろ~! 死ぬならば~舐めてから死ね~」


 相変わらず彼女の歌は酷い。だが、こうして理由を知ってから聞くと……。


「……止めてくれ」


 ロイドはアリッサに彼女を止めるよう再び頼んだ。


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