陸の怪物
異世界に来て初めての苦戦に見舞われていた。
89式では歯が立たず、無反動ですら罅を入れるので精一杯であった。
今ある戦力で賢明な抵抗を続けるがジリ貧である。
その間にも男たちは徐々に近づいてくる。
唯一の救いはその進行速度が歩き程度であることだろう。
「リリア結界術師って言うのはどのような原理で発動してるんだ? 主に発動している場所だな」
俺はあれがなぜ遅いのか考える。
結界術師について結界の張り方で考えられるのは二つ。
一つ目は自分を中心に結界を張るという方法。
二つ目はその場所を指定して張るという方法だ。
俺は後者ではないかと思っている。自分を中心に貼っているのであれば走ることも可能ではないかと、後者なら張り替えが可能ならその歩みも理解できるからだ。
「結界術師は場所を指定して発動するスキルです。レベルによって発動できる距離も変わります」
やはりそうか。ならこれだけ遅いのも裏付けるってものだ。
後者であるなら時間は稼げる。
次々に放たれる銃弾の雨と無反動かなりの衝撃にも耐えて崩すことは叶わない。
「ふっ」
敵は余裕の表情を見せる。確かに俺たちがこれだけ攻撃しても、自信の結界を破れていないからな。
当然、自身に繋がる訳だ。
ぶぉーーんドドドドド
遠くからエンジンを吹かすとこが聞こえてくる。
「来たか」
俺は勝利を確信した。もしこれでも勝てないのであれば今の戦力では本当にどうしようもない。
徐々に大きくなるエンジン音。
「な、なんだ!」
音は敵にも届き動揺を露わにする。
そしてその化け物は姿を現した。
44口径120mm滑腔砲を装備し、44トンで時速70キロで走るその巨体は10式戦車だ。
10式戦車は4代目主力戦車で指揮・射撃統制装置、自動装填装置などが付いた国産最新戦車である。
その10式戦車が3両姿を表す。
やはりその巨体はこの世界では歪で異常、それを証拠に異世界人である敵の男たちはそれをみて固まっていた。
「そ、そんなものを呼んだところで俺の結界は破れまい!」
それはそうかもしれないし違うかもしれない。
確かに無反動で破ることが叶わなかった結界ではあるが、先ほどとは火力が違うからな。
「お前たちも安心しろ!」
なんか主人公ぽく言ってんじゃん。まぁただの悪党なんだけどさ。
しかしだ。今思ったのだが奴ら俺たちに近づいてどうやって攻撃するつもりなんだ?
結界内に俺たちを入れると防衛手段がなくなるし、魔法なんかで攻撃するなら結界が邪魔だし、たとえ結界内から攻撃出来るならもうやってるんじゃないの?
うーん、まぁ悩んでも仕方ないか。
見るからにアホそうだし、そこまで考えてなかったんでしょう。
確かに結界術師は強力だし、89式も無反動も効かなかったけどそれほど恐れなくても良さそうだな。
そろそろこの茶番も終わらせるつもりで命令を下す。
「部隊退避。戦車隊前へ」
「了解」
俺たちは後ろに下がり、それと入れ替わるように3両の10式戦車が奴らに近づく。
「撃て」
ぼんッ!
3両の10式戦車が火を吹いた。
それはかなりの衝撃、音で近くにいた俺たちも耳栓をしていても感じている。
何もしていない奴らはこれだけでもかなりダメージがあるんではなかろうか。
そして10式戦車の攻撃は結界に直撃する。
バリン
土煙で見えないが、そう聞こえる。
すぐに煙りは晴れて見えるようになる。
するとそこには結界はなく吹き飛ばされた男たちが転がっていた。
やはり10式戦車の火力には結界術だとしても耐えることが出来なかったか。
もしこれで耐えるならもっと高火力を持ってくるしかないがそれほど多くはないのでは無かろうか。
いや、しかし戦車はやはりすごいな。男のロマンなだけあるわ。
この機械感は溢れるそのボディーにこの火力、男の子なら嫌いなものはいないよな?
まぁ俺は機甲科じゃないんだけどな。
それはおいおい。
俺たちは完全に伸びてしまっている男たちのもとに向かう。
89式でツンツンとするが完全に気を失っている。
俺は部下に命令を下して、男たちを拘束してもらった。
気づくと辺りから聞こえてきていた銃声も聞こえてこなくなっている。
俺たちよりも早く終わっていたんだろうな。
他のところには結界術師みたいに89式を防ぐ敵は居なかったようだ。いたら連絡くると思うしね。
今回の戦闘でまた異世界の力についての収集ができたと思う。収穫は89式の火力では倒せない敵がいること。でも火力が有ればなんとかなりそうってことだな。
やはりこれからの方針としは他職種を作っていくことだな。
「作戦終了。帰投する」
俺は全体に向けて無線を入れた。
今回の最高火力になります。
戦車はやっぱりかっこいいです。けど私はヘリのほうが好きだったりします。
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