表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘆狼ーナゲロウー  作者: 多田村 兼人
9/9

第2章 皇慶太


「…。あれ?何か引っかかってる...何これ…」

葵は一旦ファスナーを離す。

「少し進むごとにブチブチブチって変な音するんだけど…このバッグ壊れてるんじゃない?」

「普段から重たいもん入れてるからかな?ちょっと代わってみ」

慶太がファスナーを摘んだ腕を力一杯振り抜いた。


ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチッ


「うわっ!変な音しませんでした!?壊したんじゃないですか慶太先輩!」

「でも開いたっぽいね。慶太君ありがとう」

「…」

「乱暴に開けても良かったなら僕だって開けられましたよ…」

「じゃあ閉める時は裕之君にお願いするよ」

「頑張ります!」

「……」


会話が途切れた。裕之は葵の表情を伺い、葵は慶太の静止した背中を見詰め、慶太はボストンバッグの中身を凝視している。


「何が入ってるんですか?」

この異様な空気に耐え兼ねたのか、強めの音が裕之の口から溢れた。

「わからん」

すぐに色の無い声が返される。

「見てもいい?」

葵の不安な心境が筒抜けた声音だった。

「…………」


慶太はバッグの持ち手を摘むように持ち上げ、二人の前にそっと置いた。

恐る恐る覗き込んだ二人は硬直する。

そこにあったのは暗闇だった。

慶太が凝視していた意味が、尋ねても「わからない」の一言だった理由が、ようやく分かった。

コレは見えないのだ、暗がりの中では。


葵はバッグをひったくり、天窓の下の月明かりに照らして再度確認した。

中身の正体がようやく分かった。

ファスナーは壊れていたのではなく、噛んでいたのだ、無数のコレを。




二人に向き直った葵は、その間の虚空を見詰めながら話す。そこに、ある女の残像を見た気がして…目を離したら、もう二度と会うことができなくなる気がして、瞬きすら忘れていた。


「女性の髪の毛だよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ