7/9
第2章 皇慶太
2
「ハァ…ハァ…やたら遠いな…本当にこんな所にコテージなんてあるのか…?」
体力自慢の慶太だが、小一時間足元の悪い中を歩いて息を切らしている。
「ハァ……ん?」
夜道の少し先に、小さな水溜りが見えた。
(今日、雨なんて降ったっけ?)
誰よりも楽しみにしていた卒業旅行だ。この一週間の天気予報は晴れ続き。何度もチェックしてきた。
慶太は水溜りの前に立って、巨体を少し折り曲げて覗き見た。
「…?!」
どこまでも深く続いていきそうな闇の色、透明感も光沢もない、けれど今にもうごめきだしそうな水溜り。
「血…か?」
季節を問わず日焼けしている慶太の顔がみるみる青くなる。重たいボストンバッグに密着する背中に、冷たく粘ついた汗を感じていた。
本当に血なのかどうかの確証はないが、慶太の胸はざわついている。
(手の込んだドッキリであってくれよ…!)
高校時代にラグビーで鍛えた岩のような身体に鞭を打ち、一目散に駆け出した。




