第2章 皇慶太
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皇慶太が目覚めたのは、四条綾香の車中だった。横になっていた身体を起こし、そこに違和感を覚えた。
綾香の車種はミニバンだ。7人乗り用の車に6人が乗り込んでいたのに、スペースがあるはずはなかったのだ。
(みんながいない)
辺りを見回す。窓から見えるのは鬱蒼とした草木のみで、とてもではないが人の気配などは感じられなかった。
(あれは…)
目に留まったのはボンネットに置いてある、横に長い黒のボストンバッグだった。
サバイバルゲーム用の電動ガンが入っているものが、何故外に置かれているのか。
(あいつら俺を驚かそうとしてんのか?)
慶太は警戒しながらドアを開け、ボンネット前まで移動した。そしてボストンバッグを元の場所にに戻そうと持ち上げかけた時、
「…こんなところでふざけんなよ、あいつら…」
思わずため息が漏れた。メモ紙が貼り付けられていたのだ。
『この先のコテージまで持ってきて!中身はまだ見ちゃダメだよ!綾香』
(綾香の字、こんなに綺麗だったか?)
車の先には、1台がギリギリ通れそうな砂利道、両脇には空を覆うほどの木々。
この場で携帯から降参の意思を飛ばしてもよかったのだが、生憎圏外だった為、コテージまで向かうしか選択肢がなかった。
「コテージに着いたら逆に驚かしてやる…」
心なしかいつもより重たく感じるボストンバッグを肩に下げ、多少猫背で足早に、月明かりが心許ない道を歩いて行ったのだった。




