第1章 水嶋裕之
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「ええええええええ?!!!」
昔ながらのコントのように、裕之の眼鏡が半分ずり落ちている。
「裕之君、ちょっとうるさいよ」
「あ、あ、すいません!!」
裕之はこういう所がある。本人は無自覚だが、サークル内ではムードメーカーだ。
「と、閉じ込められてるって…?」
「まだ可能性の話だけどね」
葵は、自分の推理と今分かっている状況について説明した。
「そんな…冗談じゃないですよ!」
ガン!ガン!
裕之はドアや壁を蹴破ろうと試みる。
しかし、よほど分厚いのかびくともしない。
「今はできるだけおとなしくしておいた方がいいかもしれない。裕之君、ケータイもってる?」
「ありますけど、圏外でした…」
「そっか…私はリュックに入れてたから、ここにはないみたい」
「荷物もこの部屋にはなさそうですね…」
「…裕之君はいつ目が覚めたの?」
「え?ほんの10分前くらいですかね、葵さんに気づく直前です」
「ふーん…」
「え、なんですか?!ひょっとして僕を疑ってます?!」
「いや、そんなことはないんだけど」
「あ、葵さんはいつから目覚めて?」
「裕之君よりもう少し前かな。私クシャミとかしてたけど、気づかなかったんでしょ?」
「そうですね…あ、でも僕もブツブツ呟いてましたけど、それには気づかなかったんですか?」
「うーん、全然。触れられるまで全く気づかなかった」
葵はこういう所がある。本人は無自覚だが、集中して物事を考えていると何も耳に入ってこなくなるのだ。
「はあ…葵さんって、しっかりしてそうで意外と…」
「意外と?」
「い、いやなんでも。それより他のみんなはどうなってるんでしょう」
「さあ…せめて運転してた綾香がいれば、何か手がかりが掴めるかもしれないけど」
この旅行の道中、運転していたのは葵の高校からの同級生、四条綾香だ。人当たりが良く、勉強も出来る優等生だが、恋愛事に関してはだらしがない。このサバイバル研究会に入ったのも、例のイケメン部長目当てだった。部長が卒業しても活動を辞めなかったのは、ずっと仲の良かった葵の存在による所が大きい。
「とにかく今はこのまま…」
「おーーーい!!誰かーーー!!!」
葵が喋り出した時、コテージの外から野太い声がした。




