第1章 水嶋裕之
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広瀬葵の推理劇は、水嶋裕之の一声によって幕を下ろした。小柄で丸眼鏡をかけた、男らしさより可愛らしさの目立つ、葵の後輩だ。
「すみません大声出しちゃって…それにしてもご無事だったんですね!良かった…」
「ちょっと驚いただけだから大丈夫。心細かったところだったから、逆に元気出たよ。気遣いありがとう」
「あはは、どういたしまして…どうしたんですかその手足」
裕之の声が半トーン下がる。
「さっき目が覚めたんだけど、その時にはもう縛られてたの」
「すぐに解きます」
ようやく自由になった葵は、裕之に疑問を投げかけてみた。
「裕之君も縛られてたの?」
「いえ、僕はこのままで寝かされていました。…チビだったからですかね?」
確かに葵よりも背は低いが、納得できる程の材料ではなかった。が、その瞬間、直感が走った。
犯人はなんらかの目的があって葵や裕之を監禁したはずなのだが、葵の方縛らなかった。これでは、裕之が起きた時点で縄を解かれ、逃げられてしまう…ということは。
(嫌な予感がする...)
葵はすっくと立ち上がり壁際へ向かうと、這う様に一周し始め入り口を探した。するとすぐに見つかった。
(ノブの無いドア…)
ノブがあるはずの穴を覗き込むが何も見えない、
天窓から月明かりが降り注ぐ程度には、外は明るいはずだった、入り口のドアのみノックした時の音が全く違う、壁と同じ木製のドアなのに今は重たく暗い音しか響かない…。
予感は的中した。
「裕之君。私たち、このコテージに閉じ込められてるみたい」




