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嘆狼ーナゲロウー  作者: 多田村 兼人
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序章

面白い作品になると思います。

皆様の生活の一つの楽しみにして頂ければ幸いです。


仄暗い明かりの中、私は目が覚めた。

体を起こそうとするが体が言うことを聞いてくれない。何があったのか思い出そうとしても思い出せない。麻酔でも打たれたかのように頭がボーッとする。

とりあえず外に出てみようと思い、ほんのりと見えるドアへ近付こうとしたとき、私はやっと私の手足が縄のようなもので縛られていることに気がついた。

だんだんとぼやけていた脳内がはっきりとしてくる。そうだ、私は仲の良い友達数人と卒業旅行に来ていたはずだ。巷では新型ウイルスが流行り出したとかで何もかもが自粛に追いやられていた。私たちはそんなことお構いなしに車で目的地に向かっていて……。記憶はそこで途切れている。

小窓はガタガタと揺れ、どこからか隙間風が入ってくる音が聞こえる。

あたりを見回すと、どうやらここはコテージのようで、木製の机が1つとイスが2つあるだけ。天窓から覗く星空があたりを照らしている。

ここはどこだ。誰がこんなことをしたんだ。他のみんなは無事だろうか。私は帰れるのか。不安ばかりが頭の中をぐるぐると回っている。鼻呼吸が荒い口呼吸に切り替わる。と同時に、吐き気と涙が同時に込み上げてくる。嗚咽を漏らしかけた瞬間、気付く。口は…口だけは自由だ。助けを求めることができるというわずかな希望を得られただけで、幾分か冷静さを取り戻す。

「…やっぱりこの時期はまだ冷えるな…」

緊張感のかけらもない素っ頓狂な独り言が溢れ、鼻で笑う。私は極限の孤独を与えられると、こんなにもハッキリとした独り言を呟くようになるのか。

「友達には見せられないなぁ…あっ、聞かせられないか」

どうでもいいことを繰り返し呟いた。へし折れそうな心を包帯でぐるぐる巻いて補強する様に。何度も何度も。すると、ようやく完全に冷静さを取り戻したのだろう。埃っぽさが鼻の粘膜にくっついたのを感じ、くしゃみをした。いや、寒さのせいか。


ひとまず、改めて状況を整理してみることにする。

卒業旅行の目的地までには車で向かっていた。パーキングエリアには寄ったが、その後すぐに車に戻り、再出発をした…ところで次に目覚めたらこの状況なわけだった。やはりここに至るまでの経緯は思い出せないので、これからどうするのかを考えることにした。


みんなの名前を叫んでみる?でももし、これが誘拐されたのだとしたら?犯人が近くにいるかもしれない。だとしたらみんなは?……………………………………


私は推理小説が好きだ。


こういう状況も、フィクションの上ではよく目にしたことがある。

読者には義務も責任もない。ただ、そこに踊る登場人物を眺め、同情し、果てはスカッとする。自分の生活とは程遠い話だから、愉しむことができる。その余裕があるってことなんだろう。


でもそれも、所詮は他人事だ。


外は夜。朝早くに出発したから、だいぶ長いこと眠っていたみたいだ。

特に怪我をしているわけでもない。外傷による気絶、というわけでもないだろう。だとしたら、睡眠薬か何かか。

一緒に来た友達とは、大学の『サバイバル研究会』の仲間達だ。2年前に出来たのだが、驚くことにこのサークルには女子の割合の方が大きい。昨年引退したイケメン部長の功績だろうか。

この卒業旅行も、女子4人男子2人で来ていたのだが、なんだかんだで仲は良い。サークル活動は勿論、授業も一緒に取っていた程だ。


床に寝そべったまま、ぼんやり壁を見つめる。


無いのは、道中の車内の記憶から。

眠らされたのだとしたら、この中に犯人がーーー


ピトッ


「きゃっ?!」


「ええええええええええええええええ!!?!?」


3年生の水嶋裕之の声が鼓膜に響いた。

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