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【エッセイ】私がパチスロを辞めたいくつかの出来事と理由

作者: 猫村多吉

 私は店内の明るくて、接客の好い、分煙のできたホールより、薄暗くて、接客の悪い、分煙の<ぶ>の字もないような、もっと言えば駅から遠い、それも大通りからも離れているような、しかも客付きの悪いパチンコ屋を好ましいと感じている。


 そして、あの、過剰な騒音と点滅する電飾が、私の心を掴んで放さない。常に抽選され続けている環境に身を置くことが至福であった。


 それも先日で終わりを迎えた。


 今日は私がパチスロを止めることとなった幾つかの出来事と理由を書き出していきたいと思う。


 先ずは台のことをいくつか。


 サミーの<ツインエンジェルブレイク>のART(アシストリプレイタイムの略。押し順ナビのこと。1Gあたり0、8枚の純増)中に起こったことである。


 ボーナス当選からARTが当選して、ちょっと出玉が増え、また百数枚飲まれてから、バケ(出玉の少ないボーナスのこと)からARTを引いて、もう少し回せる。合算確立(各ボーナスやARTなどのいずれかの大当たりが初当たりする確立)も特段悪くない。


 そう思って、さあ、ARTとレバーをとん、と拳でいった1セット目のわずが10G前後、あれ。と気が付いた。


 ベルがまったく当たらない。


 押し順ミスかと思ったが、それでもART中はあまりメダルは減らないから、まれにこのART全然メダルが増えないと思う時はあれど、今回は事情が違う。


 このARTが3連して、約90Gもの間メダルの減りが通常ゲームと同じ(50枚あたり32、3ゲームくらい)であった。


 マイナス150枚。これには閉口せざるを得なかった。


 この経験はこのツインエンジェルの台だけで2度もあった。




   * * *




 次の台はKPEの<マジカルハロウィン6>と次回作。


 これは前回5と同じ(ボーナスのこと)+ART機であるし、特に5はシリーズ中でも最も好きな台であったから現行の6も能く打ちに行った。


 6は引いた多量のキングカボチャンス(上位のART)がどっかに消えたりする(規制の影響で)賛否の否が多く、離れる客も多かっただろうが、それでも私はこの台を嫌いにはならなかった。


 本心は5をまた打ちたいが、もう再導入は無理であるし、もう私が休日に行ける範囲で設置されているホールはない。


 そして次回作。マジハロ2、3、5、6と来て、この7にはもう打たなくていい。動画サイトの試打動画では楽しそうに打っていて、マジハロらしさもあると言っているが、ついに、ああ、ついに、3DCGばかりとなってしまった。


 もう規制がどうとか、天井がうんたら、出球がかんたら、とか、私にとってはどうでもいいと思っていたのにあの、CG(厳密には過去作も3DCGが使われているが)のキャラを見てついにこの日が来たかと、そう思えた。


 畢竟するにかわいくない。


 いや、かわいくないという点では、2が、3が、4が――とファンはそれぞれ思うところがあると思われる。しかし、少なくとも、あまりパチスロ暦の長いとは言えないにわかの私には、このCGにはついていけなかった。


 無論、液晶演出なんて、所詮演出に過ぎない。しかし、もう液晶演出の無い台はもう打てない。ましてや島であるような20スロなんて。低貸しのバラこそ、私のフィールドである。


 7はもうすぐ、十一月ごろにホールデビューするという。




   * * *




 先述のマジハロ5はかれこれ20万Gは回した。このことから、私がどれだけ5を愛したか、ということが少しでもなろう読者に伝われば好いと思う。ここからはちょっとした事件というか出来事を綴っていく。


 2、3年前、朝一から5を打っていた私であったが、この日は飲まれては出て、飲まれては出てを繰り返して、四時間打ってもマイナス500枚前後負けていた。


 なんだか馬鹿くさくなって、そろそろ止めるかという段となって、赤7ビッグが当たった。じゃあ、この250枚を飲ませて終わろうとちょっと回して、100G以内にハサミ打ちをしていて、出目が青7でテンパイした。


 ここで中リールを止めると払い出しが無い。青7が当選していた。じゃあこの170枚ちょっとでもってまた回すか、とさっきと同じような考えとなって、席をたった。


 この時、下皿に100枚くらいあって、その上にタバコを入れていた。脇に飲みかけのジュースまで置いた。


 今でもよく覚えている。別に何かうまいものでも食べた訳でもないのに、腹を壊していて、打っていた台のすぐ後ろのトイレにかけこんだ。


 さて用も足し終えて、さてさて、もう少し頑張りましょうと、水を流そうと手をセンサーに触れるか否かのところで、


 いっちかく〜


 ぴぽぽぽぽ、という電子音と共にそう聞こえた。元気なアリスの声は堀江由衣であった。ついに幻聴を聞くようになったかと、トイレを出て手を洗って、さあ、と周りこむと、


 知らない男が5を打っていた。


 私の下皿のメダルは、同じくした皿のタバコは、飲みかけのジュースは。しばらく男の後ろで立ち尽くした。


「何」


 男はそう言って私をねめつけた。私は、


「いやあ、ごめん、ごめん」


 と繰り返し頭を下げ々々、タバコとジュースを救出した。台を取られたという経験は初めてであった。


 男は最後に「気をつけろよ」と言って、台に向かい合った。


 店員に言おうとも思った。しかし、2スロが私を引きとめた。確かにたかが2スロである。こんな低貸しの島の台を打っていて、台を取られたからといって、目を三角にして、店員にこれこれこうであったから、と告げ口してもよかった。


 争いは無用である。たかが二スロなぞで。私はさっさと店を後にした。


 しかし、低貸しは低貸しだが、低貸しとはいえ、金は金である。そして、窃盗は窃盗であると思う。




   * * *




 自分が好きだったものが、ある日突然嫌いになってしまうことは、理由は人それぞれ、いろんなタイミングで、いろんな事柄が入り乱れたり、素直にすう、と心に入ったり、または刺さったりして、もう、それはすっぱりと止めれたり、またぶり返したりする。


 私の場合、それがパチスロで、3DCGで、規制で、台を取られてたのが引き金となっただけの話である。


 こうやってパチスロのエッセイを書いていると、それにしても<麻雀物語3>は能く負けた。あれは出なかった台だ。と回顧することができる。


 まどマギ2は2000枚出て全飲まれから、一撃2000枚と取り返したり、何代目かのヱヴァで一撃8000枚出したり、同じくマジハロ5で32Gでフリーズ引いたり、撤去前のツインエンジェル3で2500枚出したりと、話は尽きないが、それ以上に負けているから、自分でも笑ってしまう。


 ギャンブルは総じて遣れば遣るほど負けるのは判っているのに、こうものめり込むのは、一種の病である。なんて言う人もいるが、私は限度さえ守れているならば、けして悪いものではないと思っている。


 今回のパチスロの件も、パチンコだって、競馬、競艇、競輪だってそうだ。


 止める止めないで言ったら、タバコだって今風当たりは強い。私もよく止めれたと思う。これは自身や周りの人にも害が及ぶから、仕方のないことなのだが。


 しかし、また打ってみたいものだ。2や3、5のようなマジハロを。


 頭の中で流れているBGMは、ツキノキオク、である。


 今、ハープ音が聞こえた気がした。



 


 

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